日本の漫画作品 ウィキペディアから
『桃源暗鬼』(とうげんあんき)は、漆原侑来による日本の漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、2020年28号から連載中[2]。桃太郎を題材としており、現代を舞台に鬼の子孫と桃太郎の子孫の戦いを鬼側の視点で描いたストーリー[3][4]。2024年5月の時点で、累計発行部数が300万部を突破している[5]。
作者の漆原が『週刊少年チャンピオン』編集部に本作の持ち込みを行った[6]。その時点で3話分の話が描かれていた[6]。クオリティの高さに驚き、「ネームの時点から異才を放っていた」と感じた担当編集者は、漆原と喫茶店で話をしていたところ、仕事の話をするために飲みに誘ったという[6]。その持ち込みがきっかけとなり[6]、2020年6月11日発売の『週刊少年チャンピオン』28号にて連載を開始[2]。
2022年2月、日本国外の展開として、フランスの出版社のカナより本作の単行本の刊行を開始[7]。同年3月、単行本第9巻の発売を記念し、全国5か所で「桃源暗鬼 PremiumShop」を開催[8]。同年9月、イタリアのPaniniのPanini Comicsより本作の単行本の刊行を開始[9]。
2023年6月、本作のプロジェクトが始動される[10]。プロジェクトの始動を記念して、作者の漆原が敬愛する中村明日美子が無陀野無人と花魁坂京夜を描きおろした応援イラストを寄せている[10]。6月8日には「プロジェクト解禁PV」が公開され[10]、本作の公式TikTokも開始されている[11]。同年8月、プロジェクトの第1弾として舞台化を発表[12]。2024年5月7日、同プロジェクトの第2弾としてテレビアニメ化が発表される[5]。
声の項はテレビアニメの声優。
フリーライターの青木圭介によると、クール教信者の『ピーチボーイリバーサイド』や成瀬乙彦の『桃太郎殺し太郎』などの桃太郎漫画と異なり、「『桃太郎』自体が伝承されている」現代の日本が舞台となっており、そこで「あの話は本当だった」という体で話が展開されている[1]。本作は「バトル漫画らしくそれぞれに異能があり、主人公が鬼側として葛藤するのも今の時代にぴったりとマッチ」するよう描かれている[1]。TSUTAYAのコンシェルジュの栗俣力也によると、本作は「漫画のコマが狭いと感じるほどの迫力を感じる圧倒的な表現力」があり、アクションシーンが印象に残る作品となっている[220]。
「最近難しい漫画が多い」と感じていた漆原は、「漫画の専門用語が入れても止まらずにさらっと読めてしまう漫画」に憧れていた[6]。しかし漆原の「専門用語の説明を入れたくなってしまう」という性格から、「自分には難しい漫画を描く才能がない」と気づき、「漫画初心者の方にも分かる漫画を作ろう」と考えたことがきっかけとなり、本作の制作を決意[6]。誰もが知るような物語の流れや設定もシンプルな「桃太郎の世界を舞台にした漫画」に決められた[6]。
はじめは桃太郎を主人公にしてネームが制作された[6]。しかし、漆原の大好きな『最遊記』と同じようなことをしているだけだと考え、少しひねりを入れることにした[6]。「鬼の方がピンチになりやすいので、描きやすいところもある」と漆原が考えたことから、鬼が主人公の作品になった[6]。
ヤンキー漫画が好きな漆原は、「ヤンキー漫画を描きたかった」ことにより、主人公の四季に「ヤンキー気質を入れたい」と考えた[6]。しかし周囲の空気を読む漆原の性格とは正反対である四季は、「いちばん動かしにくいキャラクター」であるという[6]。ズバッと正論を言う四季に対し、漆原は「ちょっとした憧れもある」というが、四季のセリフが正しいかどうか悩みながら制作されている[6]。過去に漆原が冨樫義博の本を読んだ際、『HUNTER×HUNTER』の「ゴンが動かしにくい」と書いてあったことから、「動かしにくくても主人公で良いんだなと腑に落ちた」と話している[6]。
漆原と性格が似ているキャラクターは「不安症でネガティブ」な手術岾ロクロで、「いちばんノリノリで描ける」という[6]。しかしロクロが主人公というのは難しいと、漆原は考えている[6]。
無陀野無人は漆原によると、2025年1月時点で「一番人気のあるキャラクター」である[221]。漆原は「最初の段階からそうしたい」と考え、すると「ビジュアル面は崩せない」と思い、「邪魔にならない程度に顔に少しタトゥーを入れて、傘を持たせてみた」という[221]。しかしそれのみではインパクトに欠け、効率的な性格の男性らしいようローラースケートを履かせてみたところ、想像以上に読者から反響を得ている[221]。
単行本の第1巻、第2巻が発売されたころ[222]、TikTokで本作が紹介されたことがきっかけとなり、SNSで広まっていった[6]。TikTokクリエイターのぬん、もつもつ、はななども本作を紹介[223]。中でもぬんは売上の向上など「業界に貢献できたと最初に感じた」作品として、本作を挙げている[223]。漆原が見たのは「女性が好きなイケメンを紹介」する内容だったため、「今の絵柄でイケメンを描いてたおかげ」だと考えている[6]。担当編集者によるとファンレターを送る読者はほとんど女性であり、従来の『チャンピオン』読者以外の層に「間口が広がっている」という[6]。
2021年6月には「次にくるマンガ大賞2021」にノミネートされた[224]。TSUTAYAのコンシェルジュの栗俣力也によると、2021年の上半期に漫画読みや書店員などの間で話題となった[225]。
執筆業の飯田一史によると、単行本第4巻が発売された2021年夏ごろに、秋田書店と書店と複数のTikTokクリエイターによるキャンペーンが開催され[222]、それにより各巻が数万部単位で売れたという[222]。同年9月に放送された『アメトーーク!』の「マンガ大好き芸人」第二弾特集では、かまいたちの山内健司のおすすめの1作として選ばれた[226]。
2021年12月に発表されたアニメ!アニメ!によるランキング「アニメ化してほしいマンガは?(2021年下半期)」では、16位を獲得している[227]。
「『桃源暗鬼』プロジェクト」第1弾として、2023年8月に舞台化が決定[12]。主演は阿部顕嵐[12]。東京都の銀河劇場にて2024年2月17日から25日まで、大阪府の梅田芸術劇場にて同年2月29日から3月3日まで開催[253]。2025年1月4日から19日まで、東京都の銀河劇場にて続編となる「舞台『桃源暗鬼』-練馬編-」の公演が予定されている[254]。練馬編では演出を松崎史也、脚本を畑雅文、脚本協力を竹村晋太朗、音楽を谷ナオキが担当する[254]。
演出の松崎史也によると、松田賢二から子役である岡田六花や岩本佳子まで混在した世代の役者がおり、北村諒のような2.5次元俳優や「これから舞台を踏む機会が増えそうな役者」など、「多様な役者のいる立ち位置そのものが、鬼ヶ島にいる彼らと重なるような気」がする舞台である[255]。原作の漫画で「つまらないシーンを描かないという気概があるところ」が松崎は好きな部分のひとつであり、演劇でも「緩急の急の量が多いところ」を表現したいと考えていたと話している[255]。原作ファンに演劇で「物語を届ける」ことはリスクがあり、「どうすれば素晴らしいものとして届けられるか」を考え、常に試行錯誤している[256]。松崎は練馬編をとても好んでおり、「早く舞台化したい」と考えていた[256]。練馬編については原作を第一に大切に思いながら、「生身の人間ならではの迫力を出し切りたい」と述べている[256]。
「血蝕解放」の演出は、アクション監督の竹村晋太朗と松崎で行われた[221]。身体的表現の特徴を竹村の劇団では「人間CG」と呼ぶが、本作の舞台においても「そういう表現ができたら面白いだろう」と松崎は考え、表現されている[221]。
一ノ瀬四季役を演じた阿部顕嵐は、「原作のテンポのよさを舞台でも活かしたい」と考え、「バトンリレーのような感覚で、流れを止めないこと」を意識して演じている[255]。練馬出身の阿部は、子どものころに行っていた場所が作中に登場することもあり、熱を入れて演じている[256]。
無陀野無人役を演じた立花裕大は「ローラースケートと傘を使った舞台はそう多くないと思う」ため、「しっかり演劇として成立させて世に出したら、ものすごく面白くなるだろう」と考え、その部分にこだわりを持って練習した[256]。原作者である漆原侑来は立花のローラースケートでのアクションを見た際、「この舞台、勝ったな」と思うほど「素晴らしいもの」だと感じた[256]。漆原によると原作のファンからも反響があり、「原作ファンが舞台ファンになったのを実感」したと話している[256]。
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「『桃源暗鬼』プロジェクト」第2弾として、2025年7月より放送予定[5][107]。
2021年10月21日発売の『週刊少年チャンピオン』47号ではグラビアタレントの伊織もえとコラボレート[257]。伊織がコスプレをし、本作とのコラボグラビアが掲載された[258]。
2022年7月7日、水曜日のカンパネラとコラボレートし、「桃太郎」の楽曲を使用したPVを公開[259]。PVは曲に合わせて登場人物やストーリーを紹介する内容となっている[259]。2023年10月、サンリオとコラボレートを展開[260]。
2024年9月22日から10月21日まで、お笑いコンビの春とヒコーキとコラボレートし、秋田書店の公式YouTubeチャンネルでCMを公開[261]。
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