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日本の唱歌 ウィキペディアから
作詞者・作曲者ともに不詳。初出は1912年(大正元年)12月「尋常小学唱歌(四)」。歌詞が当初のものから時代により書き換えられながら、長く全国の小学校で愛唱されてきた。
だが昭和30年代頃から農林業が機械化するにつれ野道具の需要が激減し、野鍛冶は成り立たなくなって次第に各地の農村から消えていく。鍛冶屋が作業場で槌音を立てて働く光景が、児童には想像が難しくなった昭和52年には文部省の小学校学習指導要領の共通教材から削除された。以後、教科書出版社の音楽教科書から消えはじめ、昭和60年にはすべての教科書から完全に消滅した。
道具屋で販売する刃物を製造する工場はあり、町の鍛冶屋は非常に少なくなっているが日本各地に残っており、地元の農家も支えている。
以下がオリジナルの歌詞である。
一、
飛び散る火の花 はしる湯玉
ふゐごの風さへ息をもつがず
仕事に精出す村の鍛冶屋
二、
あるじは名高きいつこく
早起き早寝の
勝りて堅きは彼が心
三、
刀はうたねど大鎌小鎌
馬鍬に
平和の打ち物休まずうちて
日毎に戰ふ
四、
稼ぐにおひつく貧乏なくて
名物鍛冶屋は日日に繁昌
あたりに
槌うつ響にまして高し
大正2年6月9日発行の教師用の説明書である吉丸一昌閲『歌詞評釈』に以下の説明がある。
「これは讀本巻八の第十に『かぢや』といふ題で、昔刀鍛冶であつた鍛冶屋の爺さんの話がある。これから來た趣向である。」
「讀本」とは、1903(明治36) 年4月、小学校令の改正により定められた小学校用の国定教科書である「尋常小学讀本」を指す。「かぢや」とは、以下の記事である。
第十 かぢ屋僕の近所に年よりのかぢ屋があつた。せが高く、目がするどくて、ちよつと見ると、おそろしいが、いたつて氣だてのやさしい老人であつた。
「トンテンカン、トンテンカン。」と、毎朝早くから弟子を相手につちを打つ音が聞える。一日も休んだ事がない。僕は時々其の仕事場の前に立つて見てゐた。ある時は釘をこしらへてゐた。ある時は鎌をきたへてゐた。又車のわを打ってゐた事もあつた。僕の家で一度つるべの金たががこはれた時、つくろひを頼んだ事があつたが、翌日すぐにこしらへてくれた。夏のどんな暑い日でも、あせを流しながら、暮方まで働いてゐた。仕事をしながら、僕に色々な話をした事もある。ある時の話に、 「自分は今こそこんな小刀や釘などを造ってゐるが、元は少しは人に知られた刀かぢで、若い時から何十本となく大太刀・小太刀をきたへた。刀は武士のたましひといはれたものだから、きたへる時は身を清めて、一心不亂に打つたものだ。」といつた。
何時も丈夫さうな老人であつたが、去年の暮に死んでしまった。其の時分までよそへ奉公に行つて居つた若いむすこが、今では其の後をついで、朝から晩まで相かはらず、「トンテンカン、トンテンカン。」と働いてゐる。
農具など野道具や山道具を製作する職人を「野鍛冶」と呼ぶ。この歌の主人公である老職人も、歴史に名が残るような刀鍛冶ではなく、地域の農民とともに生きる無名の野鍛冶である。しかし彼は武勇のための兵器ではなく、民衆が平和時に生産に励むための農器具を鍛える自己の職業をかえって大いに誇りとし、勤勉に日々の労働に没頭している光景が初出時におけるこの唱歌の描く情景であった。
だが1942年(昭和17年)3月刊の「初等科音楽(二)」に収録の際には、平和を歌う三番以降の歌詞の後半が戦時下の国策に不適当として教科書から削除され、戦後も復活することがなかった。また、一番の「しばしもやまずに」が「休まず」へ、「飛び散る火の花」が「飛び散る火花よ」へ、二番の「あるじは名高きいつこく老爺」が「あるじは名高いいっこく者よ」などと変更された(「いっこくもの:一刻者」は「一徹者」と同義。頑固おやじの意)。
そして戦後の昭和22年には文語調が子供には難しい[1]との理由から、題名が「村のかじや」と平仮名表記にされるとともに、「刃物」が「鋤鍬(すきくわ)」と変更されるなどさらに手が加えられ、最終的な歌詞は以下のようになった。用語を平易なものに書き換え、特に歌の後半部分が切り落とされたことで、本来の歌の核心であった平和賛歌・労働賛歌としての性格が失われた改変過程には異論もある。
一、
二、
一、
二、
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