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日本の法律 ウィキペディアから
不当景品類及び不当表示防止法(ふとうけいひんるいおよびふとうひょうじぼうしほう、昭和37年法律第134号)は、日本の法律である。「景品表示法」や「景表法」とも略して呼ばれる。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
公正取引委員会経済取引局取引企画課と、審査局管理企画課が所管していたが、2009年9月1日の消費者庁設置に伴い同庁表示対策課に全面移管された。公正取引委員会による以前の「排除命令」は、消費者庁による「措置命令」へと名称が変更された(内容は同じ)。
事業者(メーカー、販売・サービス業者)は売上・利益の増大のために、各種広告等における自らの商品・サービスの表示(商品名、キャッチコピー、説明文、写真・イラストなど)を消費者にとって魅力的なものにしようと考えている。また販売にあたって景品類(賞金や賞品など)をつけることもある。しかし、その表示が不当(虚偽・誇大)だったり、景品類が過大だったりすると、公正な競争が阻害され、消費者が商品・サービスの選択に悪影響を及ぼす。
景品表示法は、不当な表示や過大な景品類を規制し、公正な競争を確保することにより、消費者が適正に商品・サービスを選択できる環境を守ることを目的としている。
近年、景品表示法の制定の契機を、いわゆる「ニセ牛缶事件」[注釈 1]と捉える向きがあるが、これだけでは同法が表示規制のみならず景品規制をも法目的にしていることに説明が付かない。
制定当時、当局は次のように説明している[1]。
第40回国会で、行き過ぎた懸賞又は景品附販売や虚偽表示・誇大広告のような、顧客を不当に誘引する不公正な取引方法を適切効果的に取り締まるために独占禁止法の特例法として、不当景品類及び不当表示法が制定された。このような顧客の不当な誘因行為は、これまでも独占禁止法の不公正な取引方法の一類型として、一般的にか(一般指定)、特定業界ごとについて(特殊指定)禁止されてきた。それにもかかわらず、最近では、例えば懸賞販売では、チューインガムの売り込みのために、一等賞として一千万円という前代未聞の賞金がつけられたり、宅地分譲広告では、詐欺的ともいうべき誇大な広告が横行するなど、法規制という面では、殆ど野放し同然という有様であった。
これは一つには、技術革新と消費革命に伴って経済発展が構造的に変化してきたことと、最近では貿易自由化の影響も加わって、販売競争自体が非常に激烈になったことによるものであるが、反面独占禁止法の規制手続にも適切でない点があったことも見逃せない。
そのためこの法律では、
ことによって、このような不公正な取引方法の規制効果をあげ、業界の公正な競争秩序の確立とともに消費者の保護をはかったのである。 — 後藤英輔
- 違反行為類型を明確にし
- 違反処理手続の迅速化を図り(排除命令制度)
- 業界の自主規制体制を法的に確認する(公正競争規約制度)
なお、当該説明の前年、法律専門雑誌に当該筆者の「懸賞・景品付販売について」という職名(公取委事務局経済部取引課長(当時))入り署名記事が掲載されており[2]、景品規制にかかる立法措置の必要性について示唆している。
景品表示法では「表示」を次のように定義している。
具体的には下記を指定する。一般消費者が認知できるものが対象になる。
表示規制には、商品・サービスの内容(品質・規格など)に関する「優良誤認」と、取引条件(価格など)に関する「有利誤認」の2つがある。
不当な顧客の誘引を防止のため、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類、提供の方法やその他関連する事項を制限し、または景品類の提供を禁止することができる。
この法律に基づき、公正取引委員会告示で「くじその他偶然性を利用して定める方法」「特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法」による景品類の提供、また景品類の最高額を制限をしている。また「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供は、してはならない。」とし、これは一般にカード合わせの手法とも呼ばれ、告示で制限されている[3]。
商品・サービスの内容が、事実と相違して、
ことを規制する。
なお、食品においては、景品表示法の優良誤認とは別に、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)にもとづく生鮮食品品質表示基準並びに加工食品品質表示基準によって、「内容物誤認」が「表示禁止事項」として定められている。内容物誤認とは、産地を誤認させるような表示、その他内容物を誤認させるような文字、絵、写真その他の表示を指す。
一方、景品表示法の優良誤認は、食品に限らず、すべての商品・サービスが対象である。
商品・サービスの価格が、事実と相違して、
ことを規制する。
従来、表示が優良誤認にあたるかどうかは、消費者庁(2009年8月以前は公正取引委員会)が調査して実証しなければならず、判断がくだされるまでに時間がかかっていた。表示に対する消費者意識の高まりを受け、立証責任を事業者に課したのが、2003年11月23日に施行された不実証広告規制である。
不実証広告規制のもとでは、表示が優良誤認にあたらないことを事業者が立証しなければならない。具体的には、消費者庁は事業者に対し、表示の「合理的な根拠」となる資料の提出を求めることができる。事業者は資料を15日以内に提出しなければならない。15日以内に提出しない場合、または提出された資料に合理的な根拠がないとされた場合は、不当表示と見なされる。
公正取引委員会は運用の透明性と事業者の予見可能性を確保するため、「不当景品類及び不当表示防止法第7条第2項の運用指針」(不実証広告ガイドライン)を公表(2003年11月23日)した。それによると、「合理的な根拠」の判断基準は次の2点となっている。
商品・サービスの表示において、強調表示(文字を大きく目立たせた表示)の例外を示したものを打ち消し表示という。打ち消し表示は、注意書きとして、強調表示よりも目立たないように表示されることが多い。
打ち消し表示は消費者に見やすく、わかりやすくなければならない。公正取引委員会は2008年6月13日に、次のとおり、打ち消し表示の考え方を示した。
景品表示法は、事業者による商品・サービスの比較そのものは禁止していない。公正取引委員会は「比較広告に関する景品表示法上の考え方」(比較広告ガイドライン)を公表(1987年4月21日)している。それによると、「適正な比較広告の要件」として、次の3点を満たすこととしている。
ただし、日本では商慣習として、比較広告は消費者の理解を得られにくいとされ、見かけることは少ない(例外が、1992年の「ペプシチャレンジ」、1990年前後の当時設立されて間もない後発電話会社(いわゆる新電電)の広告で、ある地域にかける電話料金について、NTTの料金と比較した優位性をアピールするものや、2006年頃にAppleが行ったMacとWindowsとの「Get a Mac」比較広告)。
内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は、当該違反行為が既になくなつている場合においてもすることができる。
措置命令を行う権限は、景品表示法第33条第1項の規定により消費者庁長官に委任されている。
景品表示法では、不当な表示と過大な景品類を防止するため、商品・サービスの業界ごとに自主ルールを定めることができるとしている。この業界自主規制のルールが公正競争規約であり、2009年9月現在、表示67件、景品類41件が定められている(公正競争規約一覧は外部リンクを参照)。
表示規約では、どのような表示が不当(虚偽・誇大)な表示にあたるのか、業界ごとに判断基準が定められている。
食品表示ではJAS法でも同様に、「品質表示基準」がカテゴリーごとに定められていたが、2015年に「食品表示基準」(食品衛生法、JAS法及び健康増進法の下に定められていた表示基準を統合[8])によって廃止された[9](品質表示基準一覧は外部リンクを参照)。
消費者庁は、消費者からの申告などを受けて、不当な表示や過大な景品類のおそれのあるときは、調査をする。事業者には、弁明、資料提出などの機会が与えられる。
違反がある場合は「措置命令」(2009年8月以前は「排除命令」)、違反のおそれがある場合は「指導」の措置がとられる。
例えば、薬事法と食品表示・食品広告の規制は、都道府県の薬事規制担当部署と警察が行う。大部分の規制は都道府県による行政指導で行われ、公開されたり、商品回収・出荷停止になることは少ない。表示改訂には数カ月の猶予期間が与えられることが多い。一方、悪質な医薬品医療機器等法違反は警察による捜査や逮捕があり、その事実が報道発表される。
景品表示法の指導は公開されない。一方、措置命令(2009年8月以前は「排除命令」)は報道発表され、消費者庁のHPで公開される。措置命令を受けた商品・サービスのうち、措置命令時点でも不当表示が行われていると認められるものについては、不当表示を直ちにとりやめなければならない。調査の入った段階で、事業者が表示を改訂するケースも少なくない[要出典]。
年度別の措置命令(2009年8月以前は「排除命令」)の件数は、下記のように推移している。[10]
年度 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
措置命令件数 | 27件 | 21件 | 28件 | 32件 | 56件 | 52件 | 12件 | 20件 | 28件 | 37件 | 45件 | 30件 | 13件 | 27件 | 50件 | 46件 | 40件 | 33件 |
事案数 | - | - | 9件 | 20件 | 16件 | 24件 | 11件 | 17件 | - | - | - | - | - | - | - | ー | ー | ー |
※事案数: 類似の商品・サービスにおける類似の表示について、同日に処理したものを1事案としてまとめた件数(消費者庁が2005年分から2010年分まで公表していた)
全国的にメニュー偽装問題が相次いだことを受け、第187回国会(2014年9月29日 - 11月30日)にて改正景品表示法が成立した。2016年4月1日に施行され、課徴金制度の運用が実際に開始された。課徴金の対象となるのは、景品表示法の優良誤認表示と有利誤認表示の2つ。
課徴金の対象期間は最大3年で、原則として誤認表示をしていた期間が対象期間となるが、誤認表示をやめた後に商品や役務の取引があった場合、誤認表示をやめた日から6か月後、または誤認表示を撤回することを新聞に掲載するなど誤認のおそれを解消するための措置を採った日のいずれか早い日までが対象期間となる。
課徴金制度が開始されてから大手企業などでも課徴金が相次ぎ、1億円を超える事例も出ている[11]。
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