『想い出のロックン・ローラー』(おもいでのロックン・ローラー、原題: ex fan des sixties[* 1])は、ジェーン・バーキンのスタジオ・アルバムである。ソロ・アルバムとして3枚目になるこのアルバムは1978年にリリースされた。アルバムのすべての歌がバーキンの内夫セルジュ・ゲンスブールによる作である。1960年代のロック・スターを歌った表題曲の他、ニューオーリンズ風のビート、エレガントなポップなど多様なサウンドアプローチがある斬新なアルバムであり、この内夫ゲンスブールの才能が存分に発揮されている[1]。この作品によりバーキンの歌手としての地位が確立した[2][3]。
概要 『想い出のロックン・ローラー』, ジェーン・バーキン の スタジオ・アルバム ...
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このレコードは幾度かにわたりCD化され(フランス: 1998年・2001年、日本: 1999年・2011年など)[4]、2001年フランス盤は[* 2]、ボーナストラックが3曲付いている(「ジョニー・ジェーンのバラード Ballade De Johnny-Jane」、「Raccrochez C'Est Une Horreur」[* 3]、「哀しみの影 Yesterday Yes A Day」[* 4])。
2011年日本盤は[* 5]、ゲンスブール没後20年/ゲンスブール・フォーエヴァー&映画公開記念である。ゲンスブール没後20年ということでゲンスブール関連のCDとDVD計18作品が5月11日に同時リリースになり、その中の1枚が『想い出のロックン・ローラー』である[5]。公開映画とは2010年のフランス映画で2011年5月21日に日本で公開となった『ゲンスブールと女たち』である[5]。バーキンはこの前月の2011年4月6日に日本で震災復興支援コンサート「Together for Japan」を開催した[6]。
- 想い出のロックン・ローラー Ex-fan des sixties (3:00)
—— アルバムの表題曲。ザ・ビートルズのメンバー等、1960年代の著名なロックン・ローラーへのオマージュ。フランスで大ヒット[2]。バーキンにとっては歌うのが難しい曲で、リズムがよくわからなかったのだがゲンスブールはそのようなバーキンの状態を理解していなかったとバーキン本人が言っている[7]。この表題曲は日本の女優安田成美が「思い出のロックンロール」という題名の日本語カバー[8]を1988年に発表した[* 6]。音楽グループピチカート・ファイヴ最後のボーカリスト野宮真貴は、2015年11月13日から始まったビルボードライブ公演において「想い出のロックンローラー」をカバーした[9][10]。
- リップスティック黙示録 Apocalypstick (2:35)[11]
- Zによる問題集 Exercice en forme de Z (2:30)
—— 歌の中の「ザジ」とはレーモン・クノーの小説『地下鉄のザジ』(1959年)のヒロインの少女。
- 禁じられたメロディ Mélodie interdite (3:10)
- 無造作紳士 L'aquoiboniste (2:18)
—— 「aquoiboniste」(「"何にもならない"屋さん」)は、ゲンスブールの友人で何も気にしない男であるジャック・デュトロン(歌手、ギタリスト、俳優)がモデルになっていて[12]、この曲はデュトロンへのオマージュである[13]。ゲンスブールによる造語「aquoiboniste」は、「à quoi bon」(何にもならない)に「-iste」(-主義者)を付けたもの[14]。ロック・ジャーナリストたちは、憂鬱でシニカルなミュージシャンを評する際に「aquoiboniste」という言葉を使用するようになった[12]。フランスの歌手フランソワーズ・アルディがこの曲を拒否した[12]。フランソワーズ・アルディは1981年にジャック・デュトロンと結婚した。
カジノ・ド・パリで行われたバーキンによる1992年のゲンスブール追悼ライブ第1曲を飾った[15]。
日本のTVドラマ『美しい人』(1999年10月15日-12月17日)の主題歌に起用。ドラマ放映期間中の1999年11月1日、日本限定企画ベストアルバム『ベスト』(レーベル: マーキュリー・ミュージックエンタテインメント、カタログ番号: PHCA-1065)がリリースされ、その先行シングル「無造作紳士」(カタログ番号: PHDR-955)が10月27日に日本でリリース。このドラマを放映したTBSの公式サイトにマーキュリー・ミュージックエンタテインメントによる日本語の対訳(田中まこ・訳)が掲載された[16]。
1999年12月8日、日本の音楽家岡崎律子が歌う日本語カバーシングル「アクアボニスト[* 7]」(日本語詞: かの香織、編曲: 門倉聡)がリリース。
モーニング娘。の2代目リーダー飯田圭織は、ゲンスブールのフランス語歌詞でカバーした(2003年の飯田ソロデビュー・アルバム『オサヴリオ〜愛は待ってくれない〜』[17]、シャ乱Qライブビデオ『シャ乱Q ライブツアー 2006 秋の乱 ズルい「Live Live Live」』収録)。
日本の歌手岩崎良美もまた「無造作紳士」をよく歌い[18]、フランス語歌詞で歌うことができる[19]。DVD『岩崎宏美・岩崎良美 Precious Night』(2008年)にフランス語歌詞によるカバーを収録(編曲: 藤野浩一)。
2012年、日本のアパレルメーカー・ナノ・ユニバース(nano・universe)はプライベートブランド「AQUOIBONISTE」(アクアボニスト)を開始した。このブランドは作詞作曲したセルジュ・ゲンスブール本人をイメージモデルとしている[20]。
2014年度、MBSラジオ『松井愛のすこ〜し愛して★』のコーナー「スナック愛」のオープニングテーマ曲に起用。
- 愛の受難 Vie et résurrection d'un amour passion (3:07)
- ニコチン Nicotine (2:30)
- 瞑想のロッキング・チェア Rocking chair (2:12)
—— 歌詞はフランス語[* 8]。この曲はマリティとジルベール・カルパンティエのテレビショウのためにゲンズブールが作り、1974年にそれを歌ったのはイザベル・アジャーニである[21]。
- 気力減退 Dépressive (3:40)
—— この第9曲(B面第3曲)は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの初期代表作ソナタ第8番作品13『大ソナタ悲愴』にインスパイアされた。
- 柔かい感触 Le velour des vierges (2:59)
—— フランスの歌手エロディ・フレージュがカバーした(フレージュの2枚目のアルバム『Le Jeu des 7 erreurs』に収録)。
- X型クラセックス Classée X (2:07)
- メロ・メロ・メロディ Mélo mélo (2:45)
—— シングルカット盤「想い出のロックン・ローラー」B面に「メロ・メロ・メロディー」(日本盤シングルでは長音が付く)として収録。
作詞・作曲: セルジュ・ゲンスブール
ボーカル | ジェーン・バーキン |
ベース | ブライアン・オッジャーズ |
ドラムス | ドギー・ライト |
パーカッション | ジム・ローレス |
エンジニア | ピーター J. オリフ |
作詞・作曲 | セルジュ・ゲンスブール |
編曲 | アラン・ホークショウ |
写真 | アンドレ・ベルグ[22] |
プロデュース | フィリップ・ルリショム |
注釈
「1960年代のかつてのファン」という意味。「ex」はフランス語・英語ともに「元」、「旧」、「かつての」などの接頭辞。「fan」(英語)は「ファン」、「des」(フランス語)は前置詞と冠詞の縮約(de + les)で「の」、「sixties」(英語)は「1960年代」。
Universal Records, Mercury France Cat# 586 649-2
1977年の映画『マダム・クロード』使用曲。日本のTVドラマ『美しい人』(1999年)の挿入歌に起用(主題歌は「無造作紳士 L'aquoiboniste」)。
1988年3月25日にリリースされた安田成美の2枚目のアルバム『ginger』(ジィンジャー)に収録。その後1988年9月25日にアルバム『ginger』からのシングルカットCD「思い出のロックンロール」(DIAMIND COLLECTION CD MINI ALBUM)がリリースされた。日本語詞は大貫妙子(原曲の歌詞をアレンジしている)。編曲は大村憲司。
「アクアボニスト」とは、定冠詞「Le」を除いた「aquoiboniste」のカタカナ表記。より原音に近づけるならば「アクヮボニスト」。
フランス語において揺り椅子(ロッキングチェア)を英語由来の「Rocking chair」で表現する場合がある。
出典注
“第11回 ─ 飯田圭織”. TOWER RECORDS ONLINE (2003年5月20日). 2015年12月7日閲覧。 “それぞれ発音の特徴もあるし、すごく難しかった。(中略) 私の負けず嫌いパワーで乗り切りました (飯田圭織・談)”