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NHK総合のテレビドラマ ウィキペディアから
『恋せぬふたり』(こいせぬふたり)は、2022年1月10日から3月21日までNHK総合「よるドラ」にて放送されたテレビドラマ[1][2]。主演は岸井ゆきのと高橋一生[3]。
他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」の男女が始めた同居生活が周囲に波紋を広げていく様を「ラブではないコメディ」として描く[1]。
脚本の吉田恵里香は本作により第40回向田邦子賞を受賞した[4]。
2022年4月改編に伴い、「よるドラ」枠の最終作品となった。
若手のスタッフを中心に若者向けにオリジナル制作されるドラマ枠「よるドラ」の第13弾として制作された[5]。セクシュアルマイノリティの一つである「アロマンティック・アセクシュアル」のふたりを登場人物としており、制作にあたっては無性愛の当事者や当事者団体による考証やそれらに対する取材をもとにした[6][7][8]。
脚本家の吉田は「恋愛は幸せの選択のひとつにしか過ぎないこと。誰かの生き方に他人がとやかく言うものではないこと、等々……恋愛至上主義の世界では忘れられがちな事柄たちです。本作では、それらに真正面から向き合いました。」と語り、「恋愛ありきの世界だけでなく、周りが決めた『当たり前』に振りまわされて疲れているあなたに届く作品になっていること」を心より願うとコメントしている[9][10]。
会社員兒玉咲子は、愛嬌のある人間性の持ち主だが、多くの人々と違い恋愛にもセックスにも興味を持たない性質を持ち、家族や社会の中で疎外感を抱いている。咲子は会社の後輩が企画した「恋する〇〇」キャンペーン商品を見にスーパーへ訪れた時、店員・高橋羽から「恋しない人間もいる」と言われる。
咲子は親友・門脇千鶴とのルームシェアの約束を、元彼とよりが戻ったという理由で反故にされ、自分の性格に改めて向き合う。その中で「アロマンティック・アセクシュアル」(以下アロマアセク[注 1]という)という性的指向が存在することを知り、当事者が書くブログの内容に共感し自分もそれに当てはまると自覚する。その後、スーパーで高橋と再会した咲子は、高橋がそのブログの運営者であることを知り、彼におなじ性的指向の者同士で「家族」になることを提案する。高橋は本格的に家族になる前の「お試し」としてこれに同意し、ふたりはこの関係を「家族(仮)」(かぞくかっこかり)と称して、高橋の家で同居を始める。
やがて同居が咲子の母・兒玉さくらに発覚し、ふたりは恋人同士を装い、兒玉家を訪れ咲子の家族たちに高橋を紹介する。しかし、恋愛に縁のなかった咲子が恋人を連れてきて「普通」の「幸せ」を得たと盛り上がる家族たちの姿に咲子はいら立ち、自分たちふたりが「アロマアセク」であることを告白する。理解できない家族たちは戸惑い、咲子と高橋は家を後にする。
咲子は以前交際していた同僚・松岡一に自分の性的指向のことを知られ、理解できない彼に否定されたうえ、今もふたりの関係が続いていると一方的に主張される。咲子と高橋は揃って自宅に帰ったところを松岡に恋人同士だと誤解される。嫉妬した松岡と高橋が門の階段で言い争ううち、高橋は松岡をかばって転落し大怪我をする。
反省した松岡は彼の回復まで世話をすると称して、高橋の家でふたりとともに生活し始め、同時に咲子たちのことを理解したいという。ふたりの何気ないやりとりをいちいち恋愛的に解釈し、高橋が嫌悪する性的な話題など、不躾な問いをぶつける松岡に咲子たちは辟易するが、高橋にたしなめられた松岡は、少しずつふたりとの生活になじんでゆく。
高橋の怪我がある程度癒えた頃、松岡は咲子に対し、彼女がアロマアセクであることを尊重し、恋愛も性的関係も求めないなら、家族になるのは自分でもよいのではないかと問いかけ、高橋も「悪くない話」と同調する。迷った咲子は、千鶴に相談しようとするが、千鶴はルームシェア騒動のあと、勤め先の美容室を小田原の支店へ異動し、黙って住所も電話番号も変えていたと分かる。松岡は千鶴と直接会って話し合うべきだと言い、高橋は会うことでわざわざ傷つくことはないと意見、話し合ううち3人は観光がてら小田原に行くことになる。
小田原で千鶴に会った咲子は、千鶴がルームシェアを断り連絡を絶った理由が、咲子への思いが友情ではなく恋愛感情だと突然気付き、その感情のない咲子と一緒に暮らすことに耐えられなかったからだと告白される。千鶴は咲子への思いを忘れようと努力しており、友人に戻ることもできないと告げられた咲子は、松岡の元へ戻り、彼に幸せになってほしいからこそ、自分のために恋愛の喜びを我慢させる関係にはなれないと伝える。松岡はその思いを受け入れる。家に戻った咲子は高橋の用意した食事を泣きながら食べ、高橋はその姿を黙って見守る。
咲子と高橋が同居して初めての新年を迎えたある日、咲子の妹・石川みのりが娘の摩耶を連れて高橋家に押しかける。夫の大輔が、みのりが第2子を妊娠中に浮気をし、離婚を考えているという彼女は姉に八つ当たりをし、その最中に産気づく。咲子はみのりに対し、彼女がどんな道を選択しても味方でいると告げ、みのりは無事出産、駆け付けた兒玉家の人々は大輔を丁寧に拒絶する。
騒動を経て、咲子は高橋との家族としての将来を考えて話し合いをしたいと考えるが、うまく話を切り出せない。また高橋は勤務先のスーパーで店長代理に昇進、自分の好きな野菜との関わりが減ってしまうことに悩む。彼のもともとの夢である野菜関連の仕事へ転職を勧める咲子に、高橋は年齢的問題、何よりも祖母の残した家を守るために、家に近いこの職場から離れる気はないと語る。一方、咲子は仕事の中で出会った野菜栽培会社「イノファーム」の社長・猪塚遥と親しくなり、彼女がかつて高橋と結婚を考えており、高橋の祖母も結婚を強く勧めていたが、彼自身はそれを受け入れられず、破談になっていたと知る。遥は咲子を通じて再会した高橋に、祖母に縛られることなく自分の人生を歩んではと問いかけ、自社で扱っている、地方に移住して農業を始められる「農家デビュー」を薦める。
高橋は提案を断り、咲子はその姿に納得できないでいたが、松岡の励ましや母・さくらからの、アロマアセクとしての幸せをつかんでほしいという言葉に励まされ、高橋と話し合う。「家族(仮)」を解消してまたひとりに戻るのは嫌だという彼に、咲子は自分がこの祖母の家に住み続けて守り、高橋は農家として好きな野菜を育てる生活をすればいいと提案する。同居にこだわることなく、ふたりの関係も「仮」のまま決めつけずに進もうという咲子の提案を、高橋は涙して受け入れる。後の日、高橋は農家として地方に住み、咲子はそのまま高橋家に住みながら連絡を取り合う生活をしている。咲子はこの現状を「大満足な毎日」としながらも、また他者から文句を付けられたりすることもあるだろうと予想するが、それでも自分の幸せや生き方は自分自身で決める、という決意のモノローグで物語は終了する。
アロマアセクの交流イベント参加者(登場・発言順、咲子も「花咲おそば」と名乗り参加している)。
同じ「よるドラ」枠で2019年に放送されたテレビドラマ『だから私は推しました』に登場する架空の地下アイドル「サニーサイドアップ」(略称:サニサイ)が咲子とカズの共通の推しだったアイドルとして登場し、「サニサイ」がツイッターでトレンド入りするなど話題を呼んだ[30]。
第3話の放送では冒頭に「ドラマの中で性的接触の描写があります あらかじめご留意ください」と性嫌悪を持つ人へ配慮をするテロップが入った[31]。これに関して脚本の吉田は「事前にそれを入れることをお知らせいただいたのですが、本当に素晴らしいことだと思いました。もっとこういう注釈増えて欲しいな」とTwitterで想いを明かした[31]。
各話 | 放送日 | 演出 |
---|---|---|
第1話 | 1月10日 | 押田友太 |
第2話 | 1月17日 | 野口雄大 |
第3話 | 1月24日 | 土井祥平 |
第4話 | 1月31日 | 押田友太 |
第5話 | 2月21日 | 野口雄大 |
第6話 | 2月28日 | 土井祥平 |
第7話 | 3月14日 | 押田友太 |
第8話 | 3月21日 | 野口雄大 |
ドラマの脚本を手がける作家・吉田恵里香による完全書き下ろしで、ノベライズが刊行された[35]。
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