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『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(しっぱいのほんしつ にほんぐんのそしきろんてきけんきゅう)とは、社会科学研究を用いた旧日本軍の戦史研究。
研究者6名(戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎)での共著である。
失敗の本質 日本軍の組織論的研究 | ||
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著者 |
戸部良一 寺本義也 鎌田伸一 杉之尾孝生 村井友秀 野中郁次郎 | |
発行日 | 1984年(昭和59年)5月 | |
発行元 | ダイヤモンド社 | |
ジャンル | 軍事 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 290ページ | |
コード |
ISBN 978-4478370131 ISBN 978-4122018334(中公文庫) | |
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初版は1984年(昭和59年)5月にダイヤモンド社(ISBN 978-4478370131)で刊行。
1991年(平成3年)8月に中公文庫(ISBN 978-4122018334)で再刊。2024年(令和6年)12月に改訂版(ISBN 978-4122075931、新版あとがき追加)を刊行。
分析対象はノモンハン事件と、太平洋戦争におけるミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦。第二次世界大戦前後の「大日本帝国の主要な失敗策」を通じ、日本軍が敗戦した原因を追究すると同時に、歴史研究(軍事史)と組織論を組み合わせた学際的研究書である。
大前提として「大東亜戦争は客観的に見て、最初から勝てない戦争」であったとする。それでも各作戦においてはもっと良い勝ち方、負け方があるのではないか、というのが著者たちの考え方である。各作戦は失敗の連続であったが、それは日本軍の組織特性によるのではないかと考えた。「戦い方」の失敗を研究することを通して、「組織としての日本軍の遺産を批判的に継承もしくは拒絶」することが出版の主目的であった(「本書のねらい」)。
戦史研究(事例研究)を中心とする防衛大学校研究者と、野中郁次郎などの組織論研究者(帰納法の思考に重点を置く)との、両者の共同研究によって生まれた。
結論で、日本軍は環境に過度に適応し、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(かつて学んだ知識を捨てた上での学び直し)を通して、自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかったとした。
著者の一人である野中郁次郎によれば、原稿を持ち込んだダイヤモンド社も「タイトルが暗い」などと消極的だったが、野中と社長との個人的な縁もあり何とか出版にこぎ着けた。出版当初は全く反応がなかったが、『週刊文春』に外務省官僚の岡崎久彦による「非常に好意的な書評」が掲載されたことが、広く読まれるようになるきっかけのひとつとなったという[1][2]。
2010年(平成22年)には勝間和代[3]、2012年(平成24年)には新浪剛史(現・サントリー社長)が本書を推薦している[4]。また東京都知事の小池百合子は2016年に本書を「座右の書」として称賛(9月23日記者会見)、文庫版の帯に小池の写真と推薦コピーがあしらわれたこともある。
2017年(平成29年)時点で、中公文庫版では70万部に達している。
一方で、その内容の一部については批判もある。例えば森本忠夫は、物質的・技術的格差を重視する立場を取っており、本書でのレイテ海戦への評価について、組織論に重きを置きすぎ、日本側に勝機があったかのような記述や、戸部の栗田健男に対する評価(「戦略不適応」で「作戦全体の戦略的目的と自分に課せられた任務とを十分に理解していたとはいえなかった」)に対して「全く的を得ていないと筆者は思う。栗田提督は作戦の目的や任務を理解していなかったのではなくて、作戦と任務そのものに反対していたのだ」と「主観主義的な観点から栗田の"退却"を無批判に非難する所論」の一つとして、批判を行っている[5]。
防衛大学校校長だった猪木正道の承認と激励で、野中郁次郎は防衛大学校に異動し、資料の自由利用が保障された[10]。
野中はその後も組織論の観点から軍事史の研究を続け、1995年に『アメリカ海兵隊 非営利型組織の自己革新』(中公新書)を単著で、2014年に『史上最大の決断 「ノルマンディー上陸作戦」を成功に導いた賢慮のリーダーシップ』(ダイヤモンド社)を共著で刊行した[11]。
『組織は人なり』(ナカニシヤ出版、2009年)(野中郁次郎監修・東京電力技術開発研究所ヒューマンファクターグループ編著)の第4章(咲川孝・成田康修著)では、『失敗の本質』に関する解説がなされている[12]。
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