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大葉植物(だいようしょくぶつ、Euphyllophytina[1][2][5][4] または Euphyllophyta[2][6][7], megaphyllous plants, macrophyllous plants[8])は、維管束植物のうち、姉妹群である大葉シダ植物と木質植物(前裸子植物 + 種子植物)をまとめた単系統群である[9]。真葉植物(しんようしょくぶつ)と呼ばれることもある[5][4]。大葉植物の名は維管束植物のもう一つの群である小葉植物と対比して用いられる[9]。
大葉植物 | ||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Euphyllophytina Kenrick & Crane (1997)[1][2][3] | ||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||
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下位分類群 | ||||||||||||||||||
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Kenrick とCrane (1997)は、トクサ類やシダ類、木質植物に加え、Eophyllophyton や Psilophytonなどのプレシオンを含む群として、subdivision Euphyllophytinaを置いた[1]。
本群は時折、大葉植物亜門または真葉植物亜門と亜門の階級に置かれ[5][4][1]、大葉類 Macrophyllinaeや大葉植物類 Euphyllophytaとも呼ばれる[7]。まれに門の階級に置かれることもある[6]。単系統群ではあるものの、共有派生形質が不明である[9]こともあり、Ruggiero ら (2015)のように、大葉植物より下位の大葉シダ植物および種子植物が、Subphylum Polypodiophytina および Subphylum Spermatophytinaとして亜門の階級に置かれることもある[10]。
なお、Cantino ら (2007)では、本群のうち現生植物からなるクラウングループ (crown clade)をEuphyllophyta P.D. Cantino & M.J. Donoghueと名付け、Kenrick とCrane (1997)におけるEuphyllophytinaとほぼ同じ範囲である、Psilophytonなどを含むパングループ (total clade)にPan-Euphyllophyta P.D. Cantino & M.J. Donoghueと名付けた(=Euphyllophytina)[2]。そして、化石植物のトリメロフィトン類("trimerophytes"; 学名は階級により様々に呼ばれる: Trimerophytophyta sensu Bold et al. (1980), Trimerophytina Banks (1968), Trimerophytopsida Foster & Gifford (1974))を大葉植物のステムグループとみなした[2]。
緑色植物の系統について、Wickettら (2014)やPuttickら (2018)による分子系統解析から、次のような系統樹が得られている[11]。
シダ植物は伝統的にマツバラン類、ヒカゲノカズラ類、トクサ類、シダ類の4群に分けられるが[12]、O. Lignier (1903)はこのうちのシダ類(真正シダ類)のみを大葉類 Macrophyllinaeと呼んだ[7](下図中橙色の範囲)。現在ではシダ植物は解体され、ヒカゲノカズラ類のみが小葉植物として独立したクレードをなし、残りの3群および種子植物がクレード「大葉植物」をなす。
隔膜形成体植物 |
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大葉植物の持つ葉は、大葉(だいよう、macrophyll, megaphyll)または大成葉(だいせいよう)と呼ばれる[7]。これは葉を系統器官学的に分けたうちの一つで、小葉 microphyllに対して、一般的に大型で、複雑な維管束系を持ち、茎の維管束に葉隙を生じる[7]。真葉(しんよう、euphyll)という表現も用いられる[8]。
大葉と小葉の区別はエドワード・ジェフレー (1903)の "シダと裸子植物の茎の構造と発生" に端を発するとされる[8]。この論文では当時の流れに沿って、植物の解剖学を系統解析に利用した[8]。ジェフレーは維管束植物を葉隙のない小葉的な (mirophyllous) 葉をつける小葉類 Lycopsidaと、葉隙を作る大葉的な (megaphyllous) 葉を作る大葉類 Pteropsidaに分けた[8]。この小葉類にはトクサ類も含まれ、葉隙の有無がその判断基準とされた[8]。しかし、大葉類の中にも原生中心柱を持ち葉隙ができないものがあることや、葉隙は環状中心柱や網状中心柱のシダ類では明瞭であるが、トクサ類や種子植物の真正中心柱では普通葉柄に入る葉跡は多数あり、それぞれが茎の維管束から仮軸分枝によって供給されるため、実際には葉隙がない[8]。被子植物では葉隙と同様の空間を空隙 lacunaと呼ぶが、被子植物では葉跡が葉原基から求基的に伸長するのに対し、大葉シダ植物では小葉植物と同様に茎から葉原基に向かって求頂的に伸長するため、別のものであると考えられる[13]。また、メシダ科シダ類の化石の研究から、シダ類でも網状中心柱が小型化すると葉跡が仮軸分枝するようになり、見かけ上は葉跡がなくなる[8]。このように大葉類における葉隙の有無は系統を反映しない[8]。
大葉の起源はヴァルター・ツィンマーマン (1930)の「テローム説 telome theory, Telomtheorie」が引用されてきた[14]。この仮説は二又分枝(叉状分枝)する裸の軸を形而上学的な形態の一単位として「テローム」と名付け、その変形の組み合わせで植物の形態進化を説明しようとしたものである[14]。テローム説には「退化縮小 reduction, Reduktion」「反転 recurvation, Einkrümmung」「主軸形成 overtopping, Übergipfelung」「扁平化 planation, Planation」「癒合 fusion, Verwachsung」の5つの段階が想定され、そのうち小葉の起源として「退化縮小」、トクサ類の胞子嚢托の起源として「反転」が、残りの3つは大葉の進化過程を説明した[14]。シルル紀から後期デボン紀にかけての多胞子嚢植物(リニア植物)からトリメロフィトン類を介し大葉が系統発生していく過程を予言している[14]。トリメロフィトン類はリニア植物に比べ、太い軸が二又分枝ではなく単軸分枝する主軸となって無限成長するようになり、側軸との分化が生じたうえ、側軸が平面に展開する傾向にある[15]。また、トリメロフィトン類の中には不等二又分枝(擬単軸分枝)するものがあり、これは二又分枝からの移行であると考えられる[15]。この不等二又分枝および単軸分枝への変化がテローム説における「主軸形成」の過程であると説明される[14]。また、側軸が平面に展開するという特徴が「扁平化」の過程であると説明される[14]。よってこのトリメロフィトン類の「主軸形成」と「扁平化」は茎から横に展開する大葉の形成過程と考えられている[15]。大葉の重要な形質である広い葉面形成は扁平化したテローム群の「癒合」の結果であると説明される[14]。癒合はトリメロフィトン類ではあまり進んでおらず、化石記録からトリメロフィトン類から派生した複数の系統群で葉面形成が独立に起きたことが示唆されており、いずれの解析でも大葉は複数回進化していると考えられる[14]。Tomescu (2009)によれば、大葉は最大11回別個に進化しており、大葉という用語は使用すべきでないという意見すら出している[14]。
上記のように、大葉シダ植物と種子植物の両者の葉は起源も性質も異なるので、ひとまとめに大葉と呼ぶことは妥当ではない[9][7][14]。しかし、大葉シダ植物と裸子植物の共有派生形質は見つかっておらず、大葉シダ植物と木質植物をまとめて呼ぶ他の良い名前が見つからないので、歴史的に用いられてきた大葉植物という用語がいまだに用いられる[9]。
以下に現生緑色植物の大分類を示す。フラグモプラスト植物の分類は主に、長谷部 (2020)に基づく[11]。
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