日本の認可法人 ウィキペディアから
原子力損害賠償・廃炉等支援機構(げんしりょくそんがいばいしょう・はいろとうしえんきこう、英語: Nuclear Damage Compensation and Decommissioning Facilitation Corporation)は、2011年3月の福島第一原子力発電所事故に伴って官民共同出資で設立された、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(平成23年法律第94号、旧:原子力損害賠償支援機構法)に基づく日本の認可法人。略称は、原賠機構。
本部が入居する赤坂インターシティ | |
団体種類 | 認可法人 |
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設立 | 2011年9月12日 |
所在地 |
本部:東京都港区赤坂一丁目11番44号 赤坂インターシティ11階 福島事務所:福島県郡山市駅前一丁目15番6号 明治安田生命郡山ビル1階 福島第一原子力発電所現地事務所:福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字美シ森八丁目57番地 |
法人番号 | 3010405009863 |
起源 | 原子力損害賠償支援機構 |
主要人物 | 理事長:山名元 |
基本財産 | 資本金:140億円(政府出資:70億円、原子力事業者等12社:70億円) |
従業員数 | 101名(2019年4月30日現在) |
子団体 | 東京電力ホールディングス(54.69%) |
ウェブサイト | ndf.go.jp |
所管は内閣府原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当室[1]。現在は内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官の渡邊昇治が室長を併任している。
原子力損害の賠償に関する法律が定める賠償措置額(1200億円)を超える原子力損害が生じた場合において「原子力事業者が損害を賠償するために必要な資金の交付その他の業務を行うことにより、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を確保するとともに電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図り、もって国民生活の安定向上および国民経済の健全な発展に資することを目的」(設立根拠法第1条)に、2011年9月に原子力損害賠償機構(英語: Nuclear Damage Liability Facilitation Fund)として設立された。官民共同出資(資本金: 日本国政府70億円、原子力事業者等12社70億円、計140億円)で設立されているが、設立根拠法により、理事長と監事の任命権は日本国政府が有しており、運営委員、廃炉等技術委員、副理事長および理事の任命や業務計画、予算、資金計画などには、日本国政府の認可が必要である。また、機構の業務に関して日本国政府は、監督上必要な命令をすることができるとされている。人的関係においても、当機構の副理事長は警察庁OB、3名の常勤理事のうち2名は財務省と経済産業省からの出向者、1名は国立研究開発法人(旧動燃、現原子力機構)の元役職員となっている。
国の責務として「国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていること」に鑑み、機構が前述の「目的を達することができるよう、万全の措置を講ずるものとする」(設立根拠法第2条)とされており、さしあたり当機構は、東京電力ホールディングスが福島第一原発事故の被害者に損害賠償する資金を、日本国政府が肩代わりする仕組みとして機能している。2011年(平成23年)11月以来、当機構は東京電力への資金交付を続けている。当初、原資は日本国政府の交付に頼っていた。巨額ゆえ交付国債の償還は済し崩しであった。原子力事業者からも一般負担金が当機構へ納付されたが十分ではなかった。資金不足となり、2012年(平成24年)6月からは、日本国政府から保証を受けて、民間より借り入れている。個別金融機関の入札結果は伏せられている。また、2013年(平成25年)11月からは政府保証債を発行している。基本的に国内のメガバンクに引受けられているが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は特筆に値する[5]。
2012年(平成24年)7月には、東京電力(現東京電力ホールディングス)が発行した優先株式を引き受ける形で、同社に対して1兆円を出資[6]。議決権ベースで過半数強を有する筆頭株主(支配株主)となっている。これにより、東京電力ホールディングスは当機構を介して実質国有化され、国の管理下にある。当機構の連絡調整室長(経済産業省からの出向者、同省課長級)が東京電力ホールディングスの取締役・執行役会長補佐兼社長補佐兼経営企画担当(共同)に就いている。
2014年(平成26年)2月、日本国政府は東電福島第一原発の廃炉 [7]や汚染水対策[8]への国の関与拡大を決定。設立根拠法の改正により、原子力事業者が設置した発電用原子炉施設又は実用再処理施設が特定原子力施設として指定された場合において「原子力事業者が廃炉等を実施するために必要な技術に関する研究及び開発、助言、指導及び勧告その他の業務を行うことにより、廃炉等の適正かつ着実な実施の確保」を図ることが機構の目的に加えられた。同年8月18日、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に改組、廃炉等技術委員会が新設された[4]。
2022年度末現在、東京電力ホールディングスへの資金援助の総額は11兆円強(資金の交付:10兆5382億円、株式の引受け:1兆円)である。大部分は、国から交付を受けた交付国債(累計13兆5000億円)の償還、市中からの政府保証付きの借り入れ、政府保証債券の発行により調達されている。株式の引受け以外の資金援助(特別資金援助)は無利子の融資であり、仮に将来的に負担金として全額が返済されたとしても、国は1千億~2千億円の利払いを負担することになる[9][10]。東京電力ホールディングスは、機構からの交付資金を特別利益として会計処理しており、バランスシートに負債として計上していない。東京電力ホールディングスは、機構からの資金援助を収益と認識する会計方針について「(資金交付金の)申請にあたっては、資金援助の内容や額について、原子力損害賠償支援機構と調整していることや、機構法の趣旨などを勘案すれば、申請を行った時点で、原子力損害賠償支援機構資金交付金を受け取る起因が発生しており、実質的に収益が実現している」と説明している[11]。
内閣府原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会は、2015年(平成27年)5月から賠償制度を見直している[12]。賠償制度の再検討はプライス・アンダーソン法や国際条約による諸外国の制度を参考に行われている[13]。2016年(平成28年)1月20日に開かれた6回目の専門部会では、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の又吉由香が有限責任化を主張した[14]。又吉は2010年(平成22年)12月から、原子力政策大綱の新たな策定審議に参加していた[15]。福島第一原子力発電所事故で審議は中断し、2011年(平成23年)9月に再開されたのも束の間、委員会が核燃料サイクル政策を巡り、原子力推進側だけを集めた勉強会で、政策選択肢の原案を事前に配布していたことが発覚してしまい、2012年(平成24年)5月を最後に再び審議中断、そのまま10月正式に中止となった[16]。
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