6.15南北共同宣言(6.15なんぼくきょうどうせんげん)は、2000年6月13日から15日にかけて平壌で行われた第1回南北首脳会談の結果、会談最終日の6月15日に合意文章として大韓民国(韓国)大統領の金大中と、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)国防委員長の金正日との間で締結された合意文章である。
概要
本宣言は、1972年7月4日に発表された南北共同声明(7・4声明)、1991年12月13日に締結された南北基本合意書と並び、朝鮮半島の南北対話に関する基本的合意文章である。
本宣言や南北基本合意書で合意した「自主、平和、民族大団結」といった祖国平和統一の原則[注釈 1]を改めて確認し、統一案として韓国側の主張する「連合制」案と北朝鮮が主張する「緩やかな/低い段階の連邦制」案[注釈 2]に共通点があるとし、その方向で統一を目指すこととした。
本宣言後、南北間の大きな懸案である離散家族再開の実現、経済協力や社会・文化など様々な分野での交流を促進するなどといった内容についても合意がなされ、実際、2000年8月には離散家族再会が実現し、金剛山観光や開城工業団地事業など、南北の経済協力事業が進められた。
末尾文で書かれた金正日の韓国首都ソウルへの訪問は、2011年12月17日の金正日死去に至るまで、ついに実現することはなかった。
さらに、金正恩統治下の北朝鮮で行われた、2016年2月のミサイル発射実験を端緒に、開城工業団地は操業を停止し韓国人も撤収した。2007年を最後に離散家族再会事業は中断され、2016年と2019年に、金剛山における再会事業のための韓国側施設も撤収された。
訳文の比較
韓国
以下は在日韓国人団体による日本語訳である。
南北共同宣言(全文)祖国の平和的統一を念願する全同胞の崇高な意思により、大韓民国の金大中大統領と朝鮮民主主義人民共和国の金正日国防委員長は、2000年6月13日から15日までピョンヤンで歴史的に対面し、首脳会談を行った。
南北首脳は分断の歴史上初めて開かれた今回の対面と会談が、互いの理解を増進させて南北間関係を発展させ、平和統一を実現するのに重大な意義を持つと評価し、次のように宣言する。
- 南と北は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士で互いに力を合わせ、自主的に解決していくことにした。
- 南と北は国の統一のため、南側の連合制案と北側のゆるやかな段階での連邦制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向していくことにした。
- 南と北は今年の8・15に際して、離散家族、親せきの訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど、人道的問題を早急に解決していくことにした。
- 南と北は経済協力を通じて、民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保健、環境など諸般の分野での協力と交流を活性化させ、互いの信頼を固めていくことにした。
- 南と北は、以上のような合意事項を早急に実践に移すため、早い時期に当局間の対話を開催することにした。
金大中大統領は金正日国防委員長がソウルを訪問するよう丁重に招請し、金正日国防委員長は今後、適切な時期にソウルを訪問することにした。
— 在日韓国民主統一連合(韓統連)HP[1]
2000年6月15日
大韓民国大統領 朝鮮民主主義人民共和国国防委員長
金大中 金正日
南北共同宣言(全文)祖国の平和的統一を熱望する全民族同胞の崇高な意思によって金大中大統領と金正日国防委員長は2000年6月13日から6月15日まで平壌で歴史的な出会いをし、首脳会談を行った。
南北首脳は分断の歴史上初めて開かれた今回の出会いと会談が、互いの理解を深め、南北関係を発展させ、平和統一を実現する重要な意義を持っていると評価し、次のように宣言する。
- 南と北は国の統一問題をその主人であるわが民族のみで、お互いに力を合わせ自主的に解決していくこととした。
- 南と北は国の統一のために、南側の連合制案と北側の緩やかな連邦制案に共通性があると認定し、今後この方向で統一を志向していくこととした。
- 南と北は今年8月15日に合わせ、離れ離れになった家族と親せきの訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど人道的問題を解決していくこととした。
- 南と北は経済協力を通じ民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、体育、保健、環境など、さまざまな分野の協力と交流を活性化させ、互いの信頼を確かめることにした。
- 南と北は以上のような合意事項を速やかに実行に移すため早期に当局者間の対話を開催する。
金大中大統領は金正日国防委員長がソウルを訪問するよう丁重に招請し、金国防委員長は今後、適切な時期にソウルを訪問することとした。
— 2002年6月16日付『民団新聞』[2]
2000年6月15日
大韓民国大統領 朝鮮民主主義人民共和国国防委員長
金大中 金正日
北朝鮮
北朝鮮の国営出版社である外国文総合出版社による訳文は次のとおり。
6・15北南共同宣言(全文)祖国の平和的統一を願う全民族の崇高な意思にしたがい、朝鮮民主主義人民共和国の金正日国防委員長と大韓民国の金大中大統領は、2000年6月13日から6月15日にかけて平壌で歴史的な対面を果たし、最高位級会談をおこなった。 北南両首脳は、分断史上初めて開かれた今回の対面と会談が、相互の理解を深め、北南関係を発展させ平和統一を実現するうえで、画期的な意義を有すると評価し、次のように宣言する。
- 北と南は、国の統一問題を、その主人であるわが民族同士が、互いに力を合わせて自主的に解決することにした。
- 北と南は、国の統一のための、北側の低い段階の連邦制案と、南側の連合制案が、互いに共通性があると認め、今後、この方向で統一を志向することにした。
- 北と南は、今年の8・15に際して、離散家族・親戚訪問団を交換し、非転向長期囚問題を解決するなど、人道的問題を早急に解決することにした。
- 北と南は、経済協力によって民族経済を均衡的に発展させ、社会、文化、スポーツ、保健、環境など各分野の協力と交流を活性化し、相互間の信頼を構築していくことにした。
- 北と南は、以上の合意事項を早急に実践に移すため、早い日時内に当局間の対話を開催することにした。
金大中大統領は金正日国防委員長にソウルを訪問されるよう丁重に招請し、金正日国防委員長は、今後、適当な時期にソウルを訪問することにした。
— 外国文出版社 Nenara-朝鮮民主主義人民共和国[3]
2000年6月15日
朝鮮民主主義人民共和国国防委員長 大韓民国大統領
金正日 金大中
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参考文献
- 南北共同宣言
- “「南北共同宣言」(全文)”. 在日韓国民主統一連合(韓統連). 在日韓国民主統一連合. 2002年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月28日閲覧。
- “「南北共同宣言」(全文)”. 民団新聞. 民団新聞 (2000年6月16日). 2023年2月28日閲覧。
- 6・15北南共同宣言[注釈 3]
- “6・15北南共同宣言”. Nenara-朝鮮民主主義人民共和国. 朝鮮民主主義人民共和国外国文出版社. 2011年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月28日閲覧。
脚注
関連項目
外部リンク
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