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『北陸代理戦争』(ほくりくだいりせんそう、Proxy War in Hokuriku )は、1977年の日本映画。98分。製作:東映。
深作欣二監督による実録映画最終作。福井市・三国町・敦賀市・輪島市・金沢市を舞台に、関西・名古屋を巻き込んだ地元ヤクザの抗争を描く。ラストには「俗に北陸三県の気質を称して越中強盗、加賀乞食、越前詐欺師と言うが、この三者に共通しているのは生きるためにはなりふり構わず、手段を選ばぬ特有のしぶとさである」のナレーションが流れる。
映画公開一ヵ月半後の昭和52年(1977年)4月13日午後1時5分、本作品の主人公のモデルとなった川内組の組長・川内弘が映画同様、地元の喫茶店で射殺された(三国事件)[1]。映画が原因で実際に殺人事件を起こしてしまう危なさで、このため本作は実録ヤクザ映画の"極北"とも評される[2]。福井市郊外にあるこの喫茶店は川内が好んで通った店で[3]、店の内部はセットであるが[3]、外観は実際の建物である[3]。深作が実録路線から撤退したのはこの三国事件のためともいわれる[4][5]。深作は撮影後に川内から手紙を受け取っている。
予告編のBGMには、「狂った野獣」、「実録外伝 大阪電撃作戦」、「暴動島根刑務所」、「暴走パニック 大激突」の一部が使われており、「仁義なき戦い 頂上作戦」の映像が使われている[要出典]。
福井市にある暴力団富安組の若頭・川田登は、組長の安浦が競艇場利権を譲渡する約束を破ったため、安浦をリンチ。おびえた安浦が弟分・万谷を介して大阪浅田組・金井に相談したため、金井は手打ちの仲介名目で北陸進出にのり出すことになる。
企画、及びタイトル命名は、岡田茂東映社長[6]。当時岡田が漢字の題名を先に考え、出来たタイトルで映画を作れと現場に指示していた[6]。『資金源強奪』『強盗放火殺人囚』等も同じで[6]、本作も岡田が先にタイトルを作り、高田宏治に脚本を発注した[6]。
当初は『新仁義なき戦い』シリーズの一編として制作が予定されていたが、同シリーズを主演していた菅原文太が、「実録としての"仁義なき戦い"はもう終わったと思う」などと発言し[7]、実録映画出演拒否の姿勢を打ち出していたことから[1][7][8]、別作品として制作・公開された。深作は「彼(菅原)も飽き飽きしていたんじゃないですか[9]」と回顧している。
竹井役は渡瀬恒彦が演じていたが、撮影中に雪中での自動車事故に遭い重傷を負ったため、急きょ伊吹吾郎に交代した[1]。映画館で上映されていた予告編では渡瀬の出演するシーンがある。
本作は現在進行中の抗争を映画化し、映画の製作が原因でモデルとなったやくざを刺激した[1][4][10]。飛び交う雑音を無視して岡田東映社長が「こういう生々しいのはええ」と製作を推し進めさせたといわれる[11]。『仁義なき戦い』を始め、深作欣二×笠原和夫の実録映画はライブ中に取材した作品はなく[12]、脚本の高田宏治は、笠原を越えたいという思いから抗争渦中の現地に飛び込み取材を敢行した[12]。しかし福井県警の干渉を受けたり、大雪で撮影が難航したり、前述の主役、準主役の交替など撮影時から多くのトラブルにも見舞われ、「仁義なき戦い」というネームバリューを外されたこと、興行力のある菅原が降板したこと、客層が変化したことなどの理由で配収が2億円に届かない記録的な不入りとなり、実録路線終幕の切っ掛けになったとされる[10][1]。
しかし監督の深作、及び脚本の高田宏治は、その後大作を製作し、さらなる名声を得た[13]。深作は「実録路線」を切り上げ、様々なジャンルの大作を手掛けた。高田は『鬼龍院花子の生涯』や『極道の妻たちシリーズ』などの「東映女やくざ路線」に繋げた[4][13]。本作はその分岐点といえる作品であった[14]。
迫に乗せられ、深作と高田は次の"花道"に出たが[12]、親分を失くして"奈落"に落とされた極道には次の"舞台"はなく、親分が命を落とす一因になった本作を川内組の子分たちは未だに許していないという[12]。事件を取材し2014年に『映画の奈落 北陸代理戦争事件』を刊行した伊藤彰彦は、それが一番辛かったと話している[12]。
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