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この項目では、インドの国営鉄道事業者であるインド鉄道が国内各地に運行している長距離列車のヴァンデ・バーラト急行(Vande Bharat Express)に使用されている電車について解説する。営業最高速度160 km/hの高速車両で、2019年に営業運転を開始した。製造当初はトレイン18(Train 18)と呼ばれていた[2][3]。
ヴァンデ・バーラト | |
---|---|
基本情報 | |
運用者 | インド鉄道 |
製造所 | インテグラル・コーチ・ファクトリー |
製造年 | 2018年 - |
運用開始 | 2019年 |
主要諸元 | |
編成 |
8両編成(4M4T) 16両編成(8M8T) 20両編成 |
軌間 | 1,676 mm |
電気方式 |
交流25,000 V 50 Hz (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 160 km/h |
設計最高速度 | 180 km/h |
起動加速度 | 0.8 m/s2 |
減速度(常用) | 0.8 m/s2 |
編成定員 |
8両編成 530人 16両編成 1,128人 20両編成 1,440人 |
車両定員 |
先頭車 44人(エコノミークラス) 中間車 78人(エコノミークラス) 52人(エグゼクティブクラス) |
編成重量 |
1次車(16両編成) 430 t 2次車(16両編成) 392 t |
全長 | 24,000 mm |
車体幅 | 4,140 mm |
車体高 | 3,240 mm |
車体 | 軽量ステンレス鋼 |
台車中心間距離 | 14,900 mm |
主電動機 |
TSA TME 49-30-4 (1,184 V、120 A、120 Hz、3,574 min-1) |
主電動機出力 | 210 kw |
歯車比 | 5.16 |
出力 | 840 kw |
編成出力 | 6,720 kw(16両編成) |
制動装置 | 回生ブレーキ、空気ブレーキ(電空協調制御) |
備考 | 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7][8][9]に基づく。 |
2018年、インド鉄道は、国内各地を結ぶ長距離急行列車のシャターブディー急行(Shatabdi Express)に代わる高速列車として、インド国産の長距離電車を製造するプロジェクトを発表した。これに基づき、チェンナイに工場を有するインテグラル・コーチ・ファクトリーによって同年に最初の車両が完成し、2019年2月15日に出発式が行われた。この営業運転開始に備えてインド各地で試運転が実施されたが、そのうち2018年10月に実施された試運転において、最高速度180 km/hというインドの電車における当時の歴代最高速度を記録した[2][10][11][3][12]。
ただし、1次車については製造時の契約に関して一部の企業が優遇されているという不正疑惑が浮上し入札がキャンセルされた影響から2編成しか製造されず、本格的な増備は入札システムを改めた上で発注が行われ2022年に製造が開始された2次車以降となっている。また、2022年8月に実施された試運転で、前述した記録を上回る最高速度183 km/hを達成している[1][13][14]。
ヴァンデ・バーラト急行に用いられる電車は、流線形の前面形状を持つ先頭車両を有する動力分散方式を採用した編成で、従来のシャターブディー急行を始めとした機関車牽引の列車(動力集中方式)と比較して加速度が向上している。後述のように需要に応じて編成の増減が自由に可能な構造になっており、初期から製造されていた16両編成に加えて2023年以降は営業距離150 km未満の短距離区間や利用客が少ない系統用として8両編成の列車の製造も実施されている他、2024年9月からは一部の列車に定員数の増加を目的として20両編成の導入が行われている[2][10][11][3][6][15][16]。
車体設計はインド鉄道の標準型客車であるLHB客車が基になっており、落書きや汚れの付着を防止するため車体表面にはビニール加工が施されている。乗降扉は自動ドアで、下部には車両とプラットホームを隙間を解消するための収納式ステップが設置されている。塗装については第27編成まで白色を基調に青色の帯が各所に塗られているものが用いられていたが、各部に改良を実施した第28編成以降はインドの国旗を基にしたサフランオレンジ、灰色、白色を基調としたデザインが採用された他、第50編成以降は前面付近の塗装が再度変更されている[1][2][10][17][18][19]。
車内は全車とも冷房が完備されており、3人+2人掛けのクロスシートが並ぶエコノミークラス(AC Chair Car、CC)と2人+2人掛けの座席を有する高級なエグゼブティブクラス(Executive Class、EC)の2種類の等級が存在する。快適性を重視した最先端の技術が多数導入されており、wi-fi通信にも対応している。トイレはドイツの企業が開発したバリアフリー対応吸引式バイオトイレが採用されている。既存のインド鉄道の電車と異なり電気機器は全て床下に設置されているため、車内には広い空間が確保されている。これらの機器は最大40 cmの浸水に耐える事が出来る防水構造が施されている[1][2][10][4][5][3]。
2022年以降生産が実施されている2次車(VB2)は、以下の点をはじめ各種の改良が施されている[1][3][20][21] 。
また、2023年に製造された第28編成以降は、前述した塗装の変更に加え、座席のクッションやリクライニング機構の更なる改良、フットレストの形状変更、照明を始めとしたトイレの改良、防火対策の向上といった設計変更が実施されている。これらの改良は、ヴァンデ・バーラト急行用電車の使用実績に基づいたものになっている[22]。
一方、それ以外にも走行区間に合わせた設計変更が実施されており、アジュメールとデリーを結ぶヴァンデ・バーラト急行(アジュメール-チャンディーガル・ヴァンデ・バーラト急行)に使用される編成は、複層貨物鉄道輸送を実施する電化区間を経由する事から、高い位置に設置された架線に対応したパンタグラフが搭載されている[23]。
ヴァンデ・バーラト急行用電車の編成には以下の車種が存在しており、付随車2両と電動車2両、もしくは制御車1両・付随車1両・電動車2両の合計4両を1つのユニットとし、それらを組み合わせる形で最短8両から編成が組まれている[1][3][4][5][24]。
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
車種 | 制御車 (DTC) |
電動車 (MC) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC2) |
付随車 (NDTC) |
電動車 (MC1) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC2) |
付随車 (NDTC) |
電動車 (MC1) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC2) |
電動車 (MC3) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC) |
制御車 (DTC) | |
ユニット | ユニット1 | ユニット2 | ユニット3 | ユニット4 | |||||||||||||
等級 | エコノミークラス | エグゼクティブクラス | エコノミークラス | ||||||||||||||
座席数 | EC | 52 | 52 | ||||||||||||||
CC | 44 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 44 | |||
備考・参考 | [1][3][4][5] |
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | |
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車種 | 制御車 (DTC) |
電動車 (MC) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC2) |
付随車 (NDTC) |
電動車 (MC1) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC2) |
付随車 (NDTC) |
電動車 (MC1) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC2) |
電動車 (MC3) |
付随車 (TC) |
電動車 (MC) |
制御車 (DTC) | |
ユニット | ユニット1 | ユニット2 | ユニット3 | ユニット4 | |||||||||||||
等級 | エコノミークラス | エグゼクティブクラス | エコノミークラス | ||||||||||||||
座席数 | EC | 52 | 52 | ||||||||||||||
CC | 44 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 78 | 44 | |||
備考・参考 | [1][3][4][5] |
2022年、インド鉄道は列車の高速化事業の一環として、全席が寝台座席となっている夜行列車用の長距離電車を製造する計画を発表した。編成は全車冷房が搭載されており、最新技術を導入する事により従来の客車を用いた寝台列車から速度や快適性の向上が図られる。最初の車両は2024年3月中に完成し、同年4月から試運転が実施される事になっている[25][26]。
インド鉄道では2024年以降、営業距離300 km未満の都市間列車向けに、ヴァンデ・バーラト急行用電車を基にした「ナモ・バーラト・ラピッド・レール」(Namo Bharat Rapid Rail)の導入を進めている。これらは従来の都市間電車(MEMU)の置き換え用として導入が検討されており、最高速度は130 km/hを計画している。車内には全車ともに冷房が搭載されている一方、レイアウトは立席を考慮したものになっており、各車の定員は280人(着席100人)となる[27][28][29][30]。
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