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家庭用の映画鑑賞システム ウィキペディアから
ホームシアター(米: home theater、英: home cinema)は、家庭 (home) に大画面テレビやマルチチャンネルスピーカーなどを設置し、まるで小型の映画館 (theater) であるかのように設備を組むことである。なお、日本では富士通ゼネラルが1963年(昭和38年)[1]から「ホームシアター」を商標登録していたが、1999年(平成11年)に無償開放した。
個人が所有することで、好きなコンテンツをいつでも視聴可能になるというメリットはあるものの、ホームシアターは予算に厳しい制約があるため、多額の予算を投入できる映画館と比較して様々な仕様を縮小した形式で設けられることになる。主に、遮音性の低い普通の住宅に設けられ大きな音が出せなかったり、利用出来る映像・音声のデータ品質が劣っていたり(Blu-ray Discなどの非可逆圧縮データが限界)、スピーカーも簡易的である(手のひらに乗るサイズのスピーカーが一般的)と言った事から、迫力で劣ることになる。そういったハードウェアの性能差から、映像規格やサラウンド音声規格が業務用と家庭用で区別されている。
設置の手間や騒音の影響を考えると、大画面テレビにヘッドホンやサウンドバー等のバーチャルサラウンド機器を組み合わせる構成が手軽である。
ホームシアターを普及させるべく様々な製品開発が進められているものの、大画面やサラウンドの需要はさほど多くなく、経済的に余裕のある趣味層が主体となって導入する傾向は変わっていない。自宅に
かつてはホームシアターのための大画面を実現できる装置はプロジェクターや発売当初低輝度だったリアプロジェクションテレビに限られていた。映像機器ではレーザーディスクが登場し、音響機器ではドルビーサラウンドやドルビープロロジックの登場により、ステレオ再生からリアスピーカーが後ろ側に配置されたマルチチャンネルの再生が可能となった。しかし、スピーカー設置のハードルが高く、そのほかにも高価で大掛かりな設備が必要だったため、一般人には手の届かない娯楽であった。ハイエンドのレーザーディスクだけでなく、普及品のVHSにも通常のステレオ音声に重畳する方法(マトリックス方式)でサラウンド音声が収録されていたが、その存在すらも知らない消費者が殆どであった。
1990年代後半に入るとDVDが登場する。DVDは家庭用VTRにはないデジタル記録による劣化の少ない映像、ドルビーデジタルによる、フロント左右、リア左右、センター、サブウーハーの5.1chのサウンド再生が可能であった。ドルビーデジタルより高音質のDTSというフォーマットもある。ドルビーより後発の規格であるため、初期の機器には未対応機種も存在する。そのため現状ではDVD・BDに両規格の音声が収録されることも多い。1990年代後半において、DVDは高級品としての扱いを受けた。
2000年にDVD再生機能を搭載したプレイステーション2が発売されると状況が一変する。ほぼ同時期に5.1chサラウンドシステムのセット商品が各オーディオメーカーから発売されるようになり、そこに大画面のプラズマテレビが開発され、液晶テレビの大型化と価格低下もあって、大画面・高画質の映像と臨場感のあふれるサウンドで、映画がより楽しめる環境を一般人でもぎりぎり手の届くコストで構築することが可能になってきたのである。また、映画制作のデジタル化が進み、サラウンド音声を効果的に使用した映画が多数現れたことで、サラウンド音声の価値が一般にも理解され始めてきていた。プレイステーション2の発売以降は映像再生のみVHSからDVDへの置き換えが急速に進んだ(映像録画のデジタル化についてはより後の時代を待つことになる)。
テレビのデジタル化と共にHDMIが登場し、BDが登場する。BDでは高精細映像が実現され、音声規格もハイレゾにも対応出来るように拡張された。それに伴って、サラウンドスピーカーの数も増加。設置の手間も掛かるため、次善策としてテレビに組み込まれたバーチャルサラウンド機能を利用したり、サウンドバーを追加する場合は多い。この頃から徐々に一般にも浸透してきたが、日常生活で特に必要と言う訳ではないため、本格的な導入は作品鑑賞に高い関心がある一部の家庭に留まっている。
なお、これらの設備には様々な映像・音響機器が組み込まれ、付属する複数のリモコン取り扱いだけで、利用者を辟易させる。そのため、学習リモコンと呼ばれる機器で、一元的に操作できるように工夫する消費者もいる。これは機器によっては空調、照明といったリモコン操作を受け付ける設備すべてをコントロールすることができる物もある。ただ、多くの機器を操作できるようにするための設定に、結局専門業者の手を借りなくてはいけない場合がある。
特に業務用のシステムでは、一つのボタンで「遮光カーテンの開閉」「照明の調節」「音響・映像機器類の立ち上げ」「照明の上映状態への移行」「上映スタンバイ状態から映像ソースの再生開始」に加え、他のボタンで「上映終了後の照明やカーテンの制御」「機器の電源断」といった一連の動作を順を追って自動制御できるものがあり、全ての機器と室内環境の制御に、専用に設計された制御ボックスを利用する。これは電子工作の範疇で製作された一品物の制御ボックスがシステム内に組み込まれたものである。この業務用システムに倣い、家庭用システムでも制御ボックスを自作・あるいは発注して利用するケースも見られる。
近年では、スマホやタブレット端末にアプリをインストールして、システム導入の手間を省いたり、音声認識機能を導入して、操作の簡易化、一元化を図っている。
2010年代に映画館でIMAXやドルビーシネマなどのプレミアム上映規格が矢継ぎ早に登場して普及すると、高品位な映像規格やサラウンド音声規格は一般消費者においても更に理解が進むことになった。
スマートフォンやタブレットで映像作品を個人視聴する方法が普及してからは、イヤホンやヘッドフォンを利用するバーチャルサラウンドが広く利用されるようになった[2]。
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