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蛇頭蛇尾で人間に害をもたらしたとされる、フランス北部に伝わる怪物 ウィキペディアから
ペルーダ(スペイン語: la Peluda)、ヴリュ(フランス語: la velue、「毛むくじゃら」の意)は[注 1]、フランス北部サルト県に伝わる怪物。中世盛期~後期頃、ユイヌ川沿いに住みラ・フェルテ=ベルナール市など一帯を荒らしたと伝わる。
蛇頭蛇尾で、丸い胴体に緑色の長い体毛が生え、なかには有毒の刺がいくつもまぎれていた。洪水をおこし(または口から火焔を吹くことで)作物を枯らして飢饉を及ぼし、家畜や人間を食らい、獣も人も尾で打ち殺した。ついに、アニェル(「子羊」)と呼ばれる淑徳の乙女を餌食にしようとしたところ、その婚約者の剣で急所の尾を裂かれ退治された。
「ラ・フェルテ=ベルナールの毛むくじゃら獣」などとも紹介されるが[4][5][注 1]、ユイヌ河岸に棲み、ラ・フェルテ=ベルナールの市街にまで出現した;これは中世盛期[6]あるいは中世後期15世紀のことと伝えられる[3]。
フランスではヴリュ「毛むくじゃら」と民衆によって命名されたが[8][注 2]、ホルヘ・ルイス・ボルヘス著『幻獣辞典』(1957年)では「ペルーダ」とスペイン語訳した名で記載されている[5]。ボルヘス著書の英訳では「シャギー・ビースト」[5]、または「ヘアリー・ビースト」と意訳されている[10]。
古くはサルト県で発行された「ヴリュ」 のパンフレット(1889年)に、説明文が残されている[3][注 3]。
ボルヘス『幻獣辞典』の記述は、作家クロード・ロワが文章を寄せた写真集(1952年)[11]の記載に詳細まで酷似する。先例のパンフレットとも、おおまかにおいて合致する内容である。ロワより後に執筆された地元の学究コルドニエ=デトリーの論文(1954年)もあるが[6]、これも逸脱した内容ではない。
フランスの資料によれば、蛇(あるいは竜)のような頭と尾を持ち、牡牛ほどの大きさで、体形は卵型、緑色の長い毛で覆われ、その合間から、刺されば致死性の(猛毒の)鋭い棘が突出」し[3][12][注 4][注 5]、亀のような横幅のある足をしていた[7]。
同族の仲間として タラスクというタラスコン市やボーケール市に名高い幻獣が挙げられると、コルドニエ=デトリーは意見している[7]。他にも、これらをひっくるめて「ドラゴン」の一種に指定する解説が見られる[15][16]。
民間伝承によれば、ヴリュはノアの箱舟には乗船させられなかったものの、大洪水を生き残ったのだという[7][5]。
後世になると、中世フランスのユイヌ川の岸辺に住み、近辺の村落を荒らし、ラ・フェルテ=ベルナール市街までにも襲来して、同市の防壁など役にたたなかったという。竜蛇のような尻尾を振り回せば、人間も動物も打ち殺せた。(羊用の)囲い、すなわち牧柵内を襲っては、中の家畜(羊[11])をことごとく食らってしまう[注 6][7][5]。
追い立てられると、ヴリュはユイヌ川に入り、これを氾濫させて洪水をおこし、作物に甚大な被害がもたらされて飢饉がおきた[19]。ボルヘスは、怪物が火焔を発して作物を枯死させたとしているが[5]、これは「火焔放射の口で作物に火をつける」というロワの描写と一致する[11]。
人間も襲い食い殺し、特に児童や若い女性を狙うのだった。だが、町きっての淑女(その名も「子羊」を意味するアニェル)を捕え食おうとしたところ、娘の婚約者がやってきて剣で尾を切り裂き、そこが弱点だったことからヴリュは即死した[20][5]。怪物が倒された場所はイヴレ=レヴェックの橋だと伝わっている[20]。この勝利は、のち長らくラ・フェルテ=ベルナールやコネレの町で祝され[21]、 民衆は怪物をはく製にしたか[21]、エンバーミング(防腐処理保存)したと伝えられている[5][22]。
ヴリュの描画が、前述の1889年発行の救済パンフレットの表紙にあしらえられている[3]。邦書では例えば『幻想世界 幻獣事典』(インプレス、2016年)のペルーダ(画・前田隆)を掲載[23]。
テラコッタ製の塑像(推定17~18世紀の作)が「ヴリュ」像としてテュフェ市の修道院に安置されている。ラ・シャペル=サン=レミ市へつづく道路わきの溝で発見されたものという[24][25]。テュフェの広場にはヴリュ噴水が2007年に設置されている[注 7][25][26]。
"Baldik"は、ヴリュがふたたびペルシュ・エメロード特区に出現という設定のゲーム・アプリで、ラ・フェルテ=ベルナール観光局が配布したと報道されている[27]。
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