ハドヴィッガー・フィンスラー不等式(ハドヴィッガー・フィンスラーふとうしき、英: Hadwiger–Finsler inequality)または単にハドヴィッガーの不等式は、平面幾何学における三角形の幾何不等式である[1]。具体的には、三角形の3辺の長さをそれぞれa,b,c、面積をTとして次の不等式が成立する。
- ヴァイツェンベックの不等式(英語版)(Weitzenböck's inequality)はハドヴィッガー・フィンスラー不等式の系である。
逆にハドヴィッガー・フィンスラー不等式は、ヴァイツェンベックの不等式をcircummidarc triangleに適応すれば得ることができる[2]。
ヴァイツェンベックの不等式はヘロンの公式を用いて証明できる。ヘロンの公式を用いた証明では、等号成立条件は元の三角形が正三角形であること、つまりa = b = cであることが分かる。
- ハドヴィッガー・フィンスラー不等式は凸な四角形に拡張することができる。4辺の長さをそれぞれa,b,c,d、面積をTとして次の不等式が成立する[3][4]。
- ただし
- 等号成立条件は四角形が正方形である、つまりa = b = c = d であるとき。
余弦定理より
ただしαはb,cの夾角。これを変形して、
A = bcsin(α)/2と置けば、
半角の公式または倍角の公式より、
が成立するので、
を得る。この式をすべての辺に適応して辺々足せば、
を得る。ただしβ.γはそれぞれ三角形の他の内角。正接関数は0 < θ < π/2の範囲で下に凸であるので、イェンセンの不等式より
したがって
である。ところでA = bcsin(α)/2は三角形の面積を表すから、題意の不等式を得る。
ハドヴィッガー・フィンスラー不等式はポール・フィンスラーとヒューゴ・ハドヴィッガー(英語版)の名を冠している。彼らは共同論文内でこの不等式をフィンスラー・ハドヴィッガーの定理とともに発表した。
- Finsler, Paul; Hadwiger, Hugo (1937). “Einige Relationen im Dreieck”. Commentarii Mathematici Helvetici 10 (1): 316–326. doi:10.1007/BF01214300.
- Claudi Alsina, Roger B. Nelsen: When Less is More: Visualizing Basic Inequalities. MAA, 2009, ISBN 9780883853429, pp. 84-86