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バラ科の落葉性のつる性低木 ウィキペディアから
ノイバラ(野茨[4]、学名: Rosa multiflora)は、バラ科の落葉性のつる性低木。ノバラ(野薔薇)ともいう[5]。日本のノバラの代表的な種。沖縄以外の日本各地の山野に多く自生し、枝に鋭いトゲがある。赤い果実は、利尿や便秘の治療に薬用される。
和名の由来は、とげが多い木であることから、元々有棘の低木類のバラを茨(いばら)と呼んでいて[6]、野生であることから「野」がついてノイバラとなったものである[5]。別名ノバラ(野バラ)とも呼び親しまれ、日本のバラの代表的な原種である[7]。身近に見られるいわゆる「野バラ」は、大半が本種である[8]。古名はウバラあるいはウマラで、転じてノバラになったとされる[4]。イバラは棘がある小低木のバラ類の総称であったが、次第に特定植物の名称になった[4]。
日本の北海道から九州まで[7]、国外では朝鮮半島に分布する[9]。
山地の林縁[6]、原野、野原、草原、道端、河岸に自生し[5]、日当たりのよい山野のヤブや河川敷など[9]、攪乱(かくらん)の多い場所によく生え、刈り込まれてもよく萌芽する、雑草的な性格が強い。
つる性落葉の低木[10]。日本を代表する野生のバラで、高さは1 - 3メートル (m) ぐらいになる[6]。茎は半つる性で、細く長く伸び、直立または半直立でよく枝分かれして、茂みとなって繁茂する[11][8]。ふつう枝には鋭いとげがあって、時にとげのないものもある[10][7]。高さ2 mほどに伸びて斜めに立ち上がるようになると、茎はしなだれるようになり、他の木にとげを引っかけて持たれるようにして伸びていく[7]。とげは表皮が変形したもので、葉腋の下に1対つき、赤褐色で下向きに歪曲している[7]。樹皮は灰褐色や黒紫色、若い枝は緑色か紅紫色[12]。成木になると樹皮は縦に裂けて薄片となって剥がれてトゲはなく、若い幹にはトゲが残る[12]。
葉はバラ科に特徴的な奇数羽状複葉で互生し[10]、小葉が2 - 4対、5 - 9枚つき[5]、全体の長さは10センチメートル (cm) ほどになる。小葉は、長さ2 - 5 cmほどの楕円形・長楕円卵形・卵形で、頂小葉は側小葉よりもやや大きい[11][13]。葉縁には細かい鋸歯があり[5]、葉身は薄くて軟らかくしわがあり、表面は光沢がなく無毛、裏面は軟毛が密生する[13]。小葉がついている葉軸には、軟毛と小さなとげがある[13]。葉柄の基部には櫛形の托葉がつき、葉柄に合着していて縁に細かい切れ込みがある[11][13]。
花期は初夏(4 - 6月)[5][10]。円錐花序で、枝の端に白色の花を房状に多数つける[13]。個々の花は径25 - 30ミリメートル (mm) 程度[11]、白色の若干乱れた形の5弁花で野趣があり、花びらは先端が浅いハート形の凹んだ丸形で、やさしい芳香がある[5][9][13]。雄しべは黄色く多数つき、雌しべは合着して1本になった花柱が花の中央に立つ[13]。
果期は秋(9 - 10月)で[4]、球形で固い果実(正確には偽果)が結実し、赤く熟して目立つ[5][10]。偽実は萼筒が肥大したもので、直径6 - 10 mmの球形で、先端には萼片が残る[11][13]。果皮は薄くて堅くつやがあり、その中に5 - 12個の痩果が入っている[13]。落葉後も冬まで果実は残っているが、やがて黒く変色する[13]。
冬芽は短枝の先端につく仮頂芽や、側芽が互生してつき、形は小さな円錐形やイボ状で、4 - 6枚の芽鱗に覆われる[12]。落葉後の葉痕は細長い三日月状か横線形をしていて、維管束痕は3個あるが不明瞭[12]。
道端にも多く出現し、棘が多いので雑草としては嫌われる。刈り取っても根本から萌芽し、根絶は難しい。除草剤がよく効くほか、小さいものは根ごと掘り返して対策する。
春の発芽前に、昨年生の切り取った枝を挿し木で繁殖させる[10]。小枝が多く出てやぶになるので、混雑したら剪定して短く仕立て上げる[10]。
各種バラの品種改良に使われ、園芸品種に房咲き性をもたらした基本原種である[11][7]。園芸用バラ類の接ぎ木の台木に使われ、台木として重要である[8][4][7]。挿し木したものよりも、実生のほうがよい台木になるといわれている[4]。
花は芳香があり蒸留して香水の原料にするほか[9][4]、 花材としても使われ[4]、実もリースなどに使われる[9]。赤く完熟した果実は甘味があって食べることができ[8][12]、また薬用にもなる[11]。
果実(偽果)には、マルチフロリン、クエルセチン、ラムノグルコシドなどのフラボノイド(フラボン配糖体)と、リコピンを含んでいる[5]。 マルチフロチンは少量摂取しても緩下作用があるといわれている[5]。また、利尿作用もあるといわれている[5]。
果実は営実(えいじつ)と称し、瀉下薬、利尿薬になり[10]、日本薬局方にも記載され、漢方薬として用いる[4]。営実とは、赤い星(火星)の意に由来する[4]。果実は落葉し始める10月ごろに採取した、青味が多少残り完全に紅熟しない半熟のものが良品とされ、天日干しで乾燥して仕上げる[5][10]。
民間療法では、便秘に営実1日量2 - 10グラムを水400 - 600 ㏄で煎じて、3回に分けて服用する用法が知られている[5][10]。ただし、腹痛や激しい下痢を引き起こすこともあり、用量には注意が必要となるので、はじめは少量から始め、効果を見ながら増量する[10]。腎臓や脚気の浮腫には、1日量3 - 5グラムを水300 ccで煎じて、2 - 3回に分けて分服する用法が知られる[10]。
エイジツエキスは、おでき、にきび、腫れ物に効果があるといわれていて、化粧品成分に利用されている。皮膚の保護作用、収れん作用、抗酸化性、美白性、保湿性、皮膚細胞の活性効果を持つ。民間療法では消炎作用を利用して、にきび、腫れ物に前記の煎液を冷ましてから使い、患部を洗ったり、ガーゼなどの布に含ませて冷湿布するのがよいとされる[5]。
道の辺の うまらの末(うれ)に 這(は)ほ豆の からまる君を はなれか行かむ — 丈部鳥(はせつかべのとり)、『万葉集』巻二十 4352
「うまらの先に這いつく豆のように、私に絡みつくお前を、ふりほどいてまで行かねばならないのか」の意味である[4]。
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