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揚げ菓子 ウィキペディアから
ドーナツ(ドーナッツ、英語: doughnut, donut)は、小麦粉が主成分の生地に水・砂糖・バター・卵などを加えたものであり[1]、一般的には、油脂で揚げる揚げ菓子の一種類である。内側はしっとりふんわりしたケーキのような食感のものや、モチモチした食感のものなどがあり、形状はリング状が多いが、ボール状や棒のような形のものなどもある[1]。
日本では下に記した専門店や、スーパーマーケット、コンビニエンスストアで販売されている。ホットケーキミックス、ドーナツ専用の「ドーナツミックス」などを用いると、家庭でも比較的簡単に作ることができる。日本では菓子の範疇であるが、アメリカ合衆国では朝食代わりにする人も多い。
サーターアンダーギーやベルリーナー・プファンクーヘンなど、今日ドーナツの範疇に含まれる菓子の多くは祭日や祝い事と関連性が深く、油脂や砂糖が貴重品だった頃は庶民が日常的に口にできるものではなかった。調理に油脂を多く用いることから、キリスト教(カトリック)圏では伝統的に四旬節の節制が始まる前に行われる謝肉祭、ユダヤ教圏では聖油の祭日ハヌカーとの関連が深い。
なお、ドーナツといえば、リングドーナツが代表的であるため、ドーナツ化現象やドーナツ盤のようにリング状のものを指してドーナツ(形)と言うことがある。
ドーナツの原型は、オランダの小麦粉・砂糖・卵で作った生地を酵母で発酵させ、ラードで揚げたボール状のオリーボーレンという菓子だとされており、オランダ人はこれを「オリークック(Olykoek)」と呼んでいた。
後にイギリスで迫害を受けた清教徒が1607年 - 1620年のオランダ滞在中にオリークックの作り方を覚え、ピルグリム・ファーザーズの植民と共にドーナツの原型がニューイングランドに伝わった。その後、オランダ移民によって再度ヨーロッパからアメリカに持ち込まれ、オランダ領ニューアムステルダムへも伝わったとされる。
リングドーナツの形に至った経緯は諸説あり、判然としないが、19世紀中頃あたりから見られるようになったという。
第一次世界大戦中、ヨーロッパでは救世軍・アメリカ赤十字・YMCAといった慈善団体が兵士の慰問業務活動の中で、ドーナツを無料配布したという。それが大戦後のドーナツの普及の一因となり、第二次世界大戦でも同様の貢献をしている。
アメリカのドーナッツ店は深夜営業の為、強盗の危険があった。そのため、アメリカのドーナッツチェーン店「ダンキンドーナツ」は、警官へのドーナツの無料提供または値引きをして、防犯対策に活用していた[2]。
現在でも米軍では正式なレーションのメニューとして採用されている。
一方、韓国においてはクァベギというもち米粉入りねじりドーナツが親しまれており、2019年にランディーズ・ドーナツやOLD FERRY DONUTといった店が進出したことで、韓国におけるドーナツ市場に影響を及ぼしただけでなく、伝統的なクァベギの再評価にもつながった[3]。一方、Record Koreaによると、韓国のインターネットコミュニティにおいては健康への影響を懸念する声や見た目の偏重を指摘するもあったという[4]。
1914年(大正3年)、上野公園で開催された東京大正博覧会でドーナツの実演販売が行われた[5]記録が残る。 日本軍においても1932年(昭和12年)刊行の軍隊調理法に加給品(間食)としてのドーナツの製法が記載されていた。一方、日本において、ドーナツは昭和後期まで中流家庭でよくつくられる菓子の一つであり、味付けも砂糖をかけただけ、もしくは何もかけない場合が多かった[6]。1970年にミスタードーナツ[注釈 1]とダンキンドーナツが本格的にチェーン展開を始めた。以来、多様なドーナツが日本国民に提供されていった。なお、ダンキンドーナツは1998年に日本市場から撤退している。
2000年代にはアメリカのドーナツ大手の一つクリスピー・クリーム・ドーナツが日本に進出したほか、無添加を売りとした「フロレスタ」や、豆乳やおからを主原料とした「はらドーナツ」も登場し、このありかたは第一次ドーナツブームと呼ばれることもあった[注釈 2]。
2014年11月には日本のコンビニチェーンの一つセブンイレブンが、コンビニコーヒーで成功した経験から相乗効果を狙って「セブンカフェドーナツ」を投入し、他社もそれに追随した[10]。コンビニの定番商品であるおでんは、日々の保守整備や具材の廃棄が加盟店の負担となっていたのに対し、ドーナツは什器の負担のみで済むほか、手間や光熱費もおでんほどではなかったため、加盟店からも期待されていた[11]。
これは日本における第二次ドーナツブームやドーナツ戦争と呼ばれることもあり[12]、クリスピー・クリーム・ドーナツをはじめとする第一次ドーナツブームの関係者に打撃を与えたといわれている[8]。とはいえ、コンビニが期待していたほどの成功は収められなかった[11][10]。その理由について経済評論家の加谷珪一は、コンビニが潜在市場規模を見誤ったことを挙げており、ドーナツ市場を独占していたミスタードーナツの業績が悪化したところに、コンビニが参戦してパイの奪い合いになってしまったことを指摘している[13]。このほかの失敗の要因としては「各社のドーナツの風味がミスタードーナツと似たり寄ったりになってしまった」(森山真二)[11]、「糖質制限ブーム」(吉岡秀子)[14]などが挙げられている。
2020年代の新型コロナウイルスの流行によって店内飲食よりもテイクアウトが好まれるようになったことは、ミスタードーナツやクリスピー・クリーム・ドーナツにとって追い風となった[6][15]。それに加え、「アイムドーナツ」や「ラシーヌ」といった第三世代と呼ばれる新興ドーナツも登場し、このありかたは第三次ドーナツブームと呼ばれた[16][17]。うちラシーヌは、コロナウイルスの流行初期の休業要請によって外食店で加工用の果物が大量に余ったことを知った運営会社のグリップセカンドがドーナツ用グレーズ (調理法)の原料として買い取ったことでドーナツ事業を始めるきっかけになった[18]。
揚げる際に熱の通りを良くするために円形の生地の真ん中を丸く抜いて輪(トーラス)にしたリングドーナツ、棒状に伸ばした生地をねじったツイストドーナツ、穴を開けない球形あるいは扁平球形のものや棒状のものなどがある。後述のとおりリングドーナツは代表的な形であるがドーナツの十分条件にすぎない。
リングドーナツの成形には、硬めの生地をドーナツ型でリング状に型抜きする方法、手で棒状に伸ばし両端をつなぐ方法、柔らかめの生地をドーナツメーカーを使ってリング状にして鍋の中に入れていく方法、ドーナツスプーンと呼ばれるリング状の器具で生地をすくって鍋の中に入れて熱した油に浸しながら揚げる方法などがある。リングドーナツの発明者はニューイングランドのハンソン・グレゴリーとされる。
揚げてから中にジャムやクリームを注入するジェリードーナツ(ベルリーナー・プファンクーヘン、クラップフェンなど)や揚げる前に餡を詰めたあんドーナツは穴を開けない。穴が開いてない棒状のロング・ジョンというドーナツもある。「ドーナツホールズ」(donut holes)と呼ばれる小型の球形ドーナツは、ミスタードーナツでは「D-ポップ」、ダンキンドーナツでは「マンチキンズ」、ティムホートンズでは「ティムビッツ」と呼ばれている。リングドーナツのくりぬいた真ん中の生地を揚げたものといわれることがあるが、市販のリングドーナツはほとんどの場合、生地を特殊なノズルで直接リング状に生成するため生地の穴抜きをすることはない。
種類は大きく
に分けられる。
揚げてからアイシングや溶かしたチョコレートをかけたり、粉砂糖やグラニュー糖をまぶすことも多い。
アメリカ合衆国のR&B歌手、ルーサー・ヴァンドロスは糖衣をかけたドーナツを2つに切ってバンズの代わりに用いたベーコンチーズバーガー、「ルーサー・バーガー」を考案したとされる。
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