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トーキョーN◎VA(トーキョーノヴァ)は、鈴吹太郎とファーイースト・アミューズメント・リサーチ(F.E.A.R.)が製作した近未来SF物のテーブルトークRPG(TRPG)のシリーズ名。現在、ルールの第5版にあたる『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』がエンターブレインより書籍版にて発売されている。
トーキョーN◎VAという言葉は、ゲームタイトルでもあると同時に、このゲームの主要な舞台となる都市「東京都新星市」の通称も示している。本稿では混同を避けるために、ゲーム名としてのトーキョーN◎VAを表す時は『』で括る形とする。
災厄(ハザード)と呼ばれる天変地異――地軸の移動、致死率の高いウイルスの蔓延、氷期の再来など――が起こり傷ついた近未来の地球。そんな世界の中で、干上がった東京湾に作られ“災厄と歓喜の街”として繁栄している近未来都市・東京都新星市=通称“トーキョーN◎VA”を主な舞台とした「サイバーアクションRPG」。
ゲームにサイコロを一切使わずに代わりにトランプを使うというルールが特色でTRPGとしては異彩を放っている。
1993年に初版がツクダホビーよりボックスセットとして発売された。ツクダホビーがTRPGから撤退した後は『ログアウトテーブルトークRPGシリーズ』の一つとしてアスペクトから、アスペクトがTRPG事業をエンターブレインに譲渡してからは『ログインテーブルトークRPGシリーズ』の一つとして、いずれも書籍版として発売されている。初版の発売から長年に渡りルールの大改訂を重ねている。版ごとの出版年代の詳細については#作品一覧を参照。なお、サプリメントについては、F.E.A.R.の子会社であるゲーム・フィールドからも発売されている。
いわゆるサイバーパンクに近しい雰囲気を持つゲームではあるが、退廃的/暴力的な要素や人体や意識の機械化といったサイバーパンクの主題はこのゲームではあくまで味付けの一つにすぎず、「近未来風の都市を舞台にしたヒーローアクション」を強く志向している。そのため、F.E.A.R.はこのゲームのジャンルについてサイバーパンクという言葉は使わずに「アーバンアクション」もしくは「サイバーアクション」という言葉を使用している。
既存の多くの近未来SFもののTRPGでは、さまざまな職業のプレイヤーキャラクター(以下、PCと略す)たちを同じチーム(パーティー)として行動させるために「すべてのPCはトラブルシューターの仕事を行っている」などといったPC全員に統一される社会的立場を設定することが多い。これはファンタジーRPGの定番である冒険者の概念の模倣だが、この『トーキョーN◎VA』ではPCの社会的立場を統一することをあえて行っていない。ルールブックでは初版から「自分のスタイルを貫くことがこのゲームのキャラクターの目的である」と繰り返し述べられており、個々のPCごとにゲームシナリオでの立場は異なる。シナリオにおいてのキャラクターごとの目的が異なる以上PC同士チームを組むような必然性もなく、各PCは自分にとっての利害のみを持ってほかのPCと接することになる[1]。このようにPC同士の目的や立場を統一させないという部分は『トーキョーN◎VA』の大きな特色として現在でも高いユニーク性を保っている。PC同士が連携をとらずに好き勝手に動いて良いという空気があるこのゲームは、かつてはゲームマスターに難解なマスタリングを強いるゲームとして知られていたが、バージョンが進むたびにPCの個別行動に上手く対応するためのルールが整備されていった。特にシーン制は『トーキョーN◎VA』によって大きく進化したルールシステム概念である。
ゲームルールは版によって違いもあるが、2016年時点の現行ルールである第5版『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』を基本に記述する。
キャラクターの作成は、クラス制に属する。『トーキョーN◎VA』のキャラクタークラスにあたるものは「スタイル」と呼ばれており、これを3つ選ぶことでキャラクターの能力値や特技などが決定される(この時に同じスタイルを選んでも良い)。スタイルに関する詳細は#スタイル一覧の項目を参照。
このゲームにおいて、キャラクターの能力は理性(Reazon)、感情(Passion)、生命(Life)、外界(Mundane)の4つで表現される。このゲームの能力値が他のTRPGと比較して特徴的であるのは、能力と技能の関係が固定的では無いという点にある。たとえば“走る”という行為は生命だけでなく、理性でも感情でも行える。生命で行えば肉体能力を駆使して走り、理性で行えばフォームなどを念入りにチェックするなどして走る、といった具合である。
行為判定は他の一般的なTRPGと異なり、ダイスではなくトランプを判定に使用する。
ゲーム開始時にゲームマスターはプレイヤーに4枚の手札を配る。行為判定のさいにはこの手札から一枚を場に出してそのカードで行為判定を行う。判定方法自体は特殊なものではなく、【能力値+数字】で算出される達成値が目標値に届いたかどうかで判断される。種別としては上方判定に属する。
数字の読み方は数札は数字のまま、絵札(J、Q、K)は10、Aは11とみなすブラックジャックに似た形式が採用されている。 ただし、Aは達成値が21に満たない場合、21とみなすという特殊ルールが適用される。
手札ではなく、山札から引いたカードで判定を行うこともできるが、そこで絵札を引いた場合は致命的失敗(ファンブル)となり判定は自動的に失敗となる。
行為判定が終了すれば場に出された手札は棄て札となり、プレイヤーは山札から手札が4枚になるように補充する。手札は常に4枚に維持されるため、行為判定においてある程度成功・不成功のコントロールが出来るところも特徴的である。また、弱いカードを手札から棄てて新しい手札を補充するために、重要でない行為判定にわざと失敗するという戦術が取れるのも他のTRPGにないプレイ感覚を作り出している。
また、行為判定程の頻度はないが、達成値が自身の制御値を下回ることで成功する制御判定も存在し、単純に数字の大きいカードが有利とは限らない。
『トーキョーN◎VA』におけるヒーローポイントであり、各キャラクターが使用できる必殺技でもある。ルール第2版『トーキョーN◎VA The 2nd Edition』で設けられた。
神業は各スタイル毎に個別に設定されていて、使用回数は有限だが、判定の必要なく発動し、何らかの行為一つが確実に成功する。カブトワリ(≒狙撃手)であれば対象を必ず射殺し、レッガー(≒ギャング)であればどんな罪や情報をもみ消すことができる、といった具合である。ただし、神業は神業によって防がれる場合もある。基本的に神業で受けたダメージは、神業以外で防いだり治したりする事が出来ない。
スタイルごとの神業についての詳細は#スタイル一覧の項目を参照。
FEAR社とも関係の深いイラストレーター・田中としひさは、麻雀のルールにこの神業の概念を取り入れ(カゲムシャでフリコミを他人に押し付ける、等)、いわゆる超常(イカサマ)麻雀マンガを再現できる「トーキョーN◎VA麻雀ルール」を作成し、本ゲームデザイナーの鈴吹太郎を含む数名と実際に麻雀を打ったこともある[2]。
『トーキョーN◎VA』の世界は、サプリメントやリプレイによって少しずつ歴史がすすんでいくという特徴がある。重要NPCは少しずつ年齢を重ねていき、世界情勢も更新されていく。ここで記述する設定は『アウターエッジ』(2012年発売)で更新された時間軸の世界を基本にしている。
ゲーム世界の時間の経過は『トーキョーN◎VA the Revolution REVISED』(第3.5版)までは現実の時間経過と同じ速度ですすんでいたが、『トーキョーN◎VA the Detonation』(第4版)では必ずしも現実の時間経過と同期がせず、時計の針が止められて同じ時間軸の世界でリプレイやサプリメントが出されるようになった。しかし、2012年に発売されたサプリメント『アウターエッジ』で突如5年後が舞台となり、2013年発売予定の第5版『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』では「『Detonation』開始の世界から10年後」となっている。2013年は『Detonation』発売から10年目にあたるため、ゲーム世界の時計の針を現実の時間経過とあわせる方向性自体は長期的な視点では健在である。
『トーキョーN◎VA』の舞台となっているのは「災厄(ハザード)」といわれる天変地異によって荒廃した近未来の地球である。
「災厄」とはポールシフトをきっかけに起こった未曾有の天変地異のことで、七日間に渡って大地震と大津波が世界規模で起こり、人類がそれまで築いてきた文明と文化の多くを瓦解させた。さらにこの「災厄」の直後に謎のウイルスが世界中に蔓延した「小災厄(マイクロハザード)」が発生したため、人類はその人口を大きく減らすことになってしまった。
しかし、この未曾有の大災害にも人類は完全には滅びず、荒廃した地球に適応する形で社会を復興をしはじめた。そうして迎えた人類の新時代を「ニューロエイジ(Neuro Age)」と呼ぶ。なお、ニューロエイジは具体的に西暦何年というような設定はされておらず、漠然と「近未来」となっているが、2006年12月に刊行されたサプリメント『トーキョーN◎VA the Detonation クロニクル』では、歴史記述の都合上「現実の西暦の下二桁」を年号として採用している。すなわち、物語としての『トーキョーN◎VA』は「93年」から始まることになる。
ニューロエイジはいわゆるサイバーパンクをモチーフにした時代設定になっており、地球環境が荒廃している一方で、サイバーウェアとコンピュータネットワーク技術が奇形児的に発達している世界である。人類のほとんどは人工的な環境が整備された巨大都市(メガプレックス)に住んでおり、都市の外はミュータントや自然の脅威があふれている。ポールシフトにより氷河期が訪れたため、大地の多くは氷に閉ざされ人類の生活圏はかつてよりも限られてしまっている。国家の多くは一部の主要国(日本、中国、アメリカなど)を除いて求心力を減退させ、代わりに国際企業が政治的な影響力を強く持つようになった。
また、近代以後の科学技術の発展とともに闇に追いやられていた魔法や魔物、精霊や悪魔などが「災厄」の混乱に乗じて復活した。これらの神秘勢力は「災厄」後の混乱の中で人間社会にたくみに紛れ込んだ。その結果、ニューロエイジでは霊的な事件が「災厄」前よりもはるかに起こりやすくなっている。ニューロエイジの多くの国では魔法や霊の存在を公的には認めていないが、霊能力者や魔法使いを自称する者たちは、霊的事件を解決するゴーストバスターとして、都市社会に対して需要を持っている。
ニューロエイジでは宇宙開発も行われており、スペースコロニーが数基作られている。スペースコロニーに住めるのは選ばれた地位と財産をもつほんの一部の者だけで、彼らが形成する社会は「軌道」と呼ばれ、地上のような混乱からは縁遠い楽園として多くの庶民のあこがれの的になっている。軌道上に住む者たちは自らを「ハイランダー(天上人)」と称し、地上の人間を見下している。
日本はニューロエイジでは非常に重要な位置にある国家である。「災厄」による地殻変動の結果、日本列島が赤道直下に移動したことにより、氷河期のこの世界では最も住みやすい国になっている。他の国に比べると比較にならないほど莫大な資源を有していると言われている。
しかしこの国は「災厄」直後から鎖国を宣言し、諸外国への救援要請などを無視して国交を絶ってしまった。「災厄」後の世界の混乱にかかわらず、また関わらせずに、閉ざされた国土で国民たちは暮らしているといわれる。
日本国は鎖国宣言に際して諸外国にいた日本人も完全に切り捨て一切の国土への侵入を禁じたため、彼らは日本人であっても日本国籍を持たない日系人といわれる人種になった。日系人によって経営される日系企業はこのニューロエイジの世界では国際的な大企業が多い。その中には日本国の要請を受けて世界経済を日本国の国益にあうように操作しているところもある。そのため、「外の世界に関わらないし関わらせない」という鎖国宣言とは裏腹に、日系企業を通じて世界各国から資本を搾取し日本国に流入させているというのは公然の秘密であり、多くの国はこの日本の態度に不満をもっている。そのため日本崩壊を目的に活動する国際テロ組織も存在している。
日本国は世界でも屈指の軍事力をもっており、諸外国が干渉しないようにトーキョーN◎VAを含む日本周辺地域の防衛をしている。日本軍は自衛のための軍隊でありこちらから攻撃することは原則的にはないとしているが、実際には所属を隠蔽した覆面部隊が世界各地で日本の国益のために暗躍している。日本軍は『トーキョーN◎VA』というゲームにおいては代表的な敵役の一つでもある。
ニューロエイジでもっとも注目される都市がトーキョーN◎VAである。行政上の正式名称は「東京都新星市」であるが、ほとんどの人間はこの街を「トーキョーN◎VA」という通称で呼んでいる。この街は『トーキョーN◎VA』というゲームの主要な舞台である。
「災厄」から27日後、日本政府の要請を受けた技術者が、干上がった東京湾で高さ3000メートルの巨大なビルを発見した。長く「税関ビル」と呼ばれ、のちに「イワヤトビル」と命名されることになるこの謎めいたビルを中心に、超巨大都市トーキョーN◎VAは建設された。その面積は東京都と千葉県を合わせたものに等しいとされる。
トーキョーN◎VAは鎖国した日本国と接触がもてる唯一の街であり、いわば出島と言える。日本に入れない日系人のために作られた街という側面もあり、日本的な風景や文化も多い。ニューロエイジ最大の規模を持つ都市であるため、世界中のあらゆる物がここで手に入り、あらゆる事件がここで起こりうる街である。それゆえに「災厄と歓喜の街」と言われている。
行政は住民を押さえ付けはしても福利厚生はほとんど行わない。行政サービスに代わるものとして企業がさまざまな福利厚生を有償で行っている。金がないと最低限の生命維持も行えない格差社会である。
ニューロエイジにはトーキョーN◎VA以外にもさまざまな巨大都市がある。『トーキョーN◎VA』ではサプリメントで様々な都市が紹介されていて、トーキョーN◎VA以外の舞台でもゲームを楽しむことができる。
『トーキョーN◎VA』において他のゲームでの職業(クラス)に相当するのが「スタイル」である。それぞれのスタイルは、特殊技能と前述の「神業」によって特徴付けられる。職業や社会的位置付け、習得している技術や能力、信念や生き方など多くのものを表す。これを反映し「生き様」とルビを打って表記されることもある。
スタイルはタロットカードの大アルカナを模したカードである「ニューロデッキ」で表現されている。当初は大アルカナに対応した22種に加え特殊なスタイルとして示されていたカゲムシャの23種だったが、『トーキョーN◎VA The 2nd Edition』サプリメント『オーサカM○●N』で 「マイナスナンバー」と呼ばれる特殊なスタイルが2種追加され(同時にカゲムシャもマイナスナンバーに分類された)、『トーキョーN◎VA The Revolution』サプリメント『グランド×クロス』と『トーキョーN◎VA THE AXLERATION』サプリメント『ジ・アザーサイド』でマイナスナンバーが1種ずつ、『オルタナティヴサイト』で4種が追加され、現在は31種類となっている。キャラクター作成には、その中から重複を許される3つを選ぶ。またそのうちから「外観」であるペルソナ(◎であらわされる)、「内面」であるキー(●であらわされる)、「“自身からも”完全に隠れた面」シャドウ(マークは存在しない)を選ぶ。このとき、ペルソナとキーで同じスタイルを選んでも良い。これらの組み合わせにより、人格・能力・物語上の立ち位置など多様なキャラクターメイキングを可能としている。
なお、スタイルのカード構成や英語読みはトート・タロットを基にしている。
大アルカナで相当するものは無い。ただし、それぞれ正の数のスタイルに対応するものとなっている。
『トーキョーN◎VA』は他のTRPGにはない高いユニーク性を持つゲームだとファンの多くに認識されているが、それと同時にその後の日本のテーブルトークRPGのモデルとなった部分もある。
これらの要素は特にF.E.A.R.が製作しているゲームに多く見られる共通点だが、その祖にあたるのが『トーキョーN◎VA』である。
『トーキョーN◎VA』では、ゲーム上使用される用語が他のゲームと差別化されており、映画(でなければ演劇)を想起させるようになっている。
等。このうち「ゲスト」「エキストラ」は同じF.E.A.R.制作の『ナイトウィザード』『アリアンロッドRPG』にも採用されている。
ルール第1版にあたる。基本ルールブックは1993年にツクダホビーからボックス版で発売された。
ルール第2版にあたる。基本ルールブックは1995年にアスペクトから書籍版で発売された。
ルール第3版にあたる。基本ルールブックは1998年にアスペクトから書籍版で発売された。
シナリオ2本と追加データなどを収録した小冊子。一冊ごとにスタイルひとつをテーマとしている。
『トーキョーN◎VA The Revolution』に対応したvol.1〜vol.10、『トーキョーN◎VA The Revolution REVISED』に対応したvol.11〜vol.17の計17冊が発行された。
ルール第4版にあたる。基本ルールブックは2003年にエンターブレイン(アスペクトのゲーム・ホビー部門を2000年に営業譲受)から書籍版で発売された。
シナリオ2本と追加データなどを収録した小冊子。
一冊ごとにスタイルひとつをテーマとしている。vol.1〜vol.5及び、特別編vol.1〜vol.4の計9冊が発行された。
ルール第5版にあたる。基本ルールブックは2013年にエンターブレインから書籍版で発売された。
定期的に発行される小冊子。一冊ごとにスタイル3つをテーマとしている。シナリオ3本と追加データを収録。
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