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デービー灯(デービーとう、英: Davy lamp)は、可燃性の大気の中で使用される安全灯であり、1815年にイギリスの化学者・発明家であるハンフリー・デービーが発明した[1]。ランプの火を鉄製の細かい網で覆う作りとなっている。メタンや可燃性ガスによる爆発の危険性を減らし、炭鉱の中で使うために開発された。「防火灯(英: firedamp)」, 「炭鉱灯(英: minedamp)」とも呼ばれている。
1815年11月3日、デービー灯がニューカッスル・アポン・タインにある王立協会の会議で発表された。そして、6日後の11月9日には論文が公開された[2]。デービー灯発明の功績により、翌1816年にデービーはランフォード・メダルを受賞した(デービー燈よりも前にウィリアム・レイド・クラニー〈アイルランドの医師〉が1813年5月に同様に王立協会で防火灯の発明を発表していたが扱いにくいものだった。防火灯の試験はハリントン・ミルにて成功し、1816-1817年にランフォード・メダルを受賞した。後年、デービー灯を改良したクラニー灯を発明。)[3]。デービー灯の最初のテストはワイヤーの篩をつけて、1816年1月9日にへバーン炭鉱で行われた[4]。
デービー灯はランプの芯に、炎を閉じ込めるための鉄製の細かい金網が付いた構造になっている。金網は火炎防止器の役目を果たす。すなわち、 空気(あるいは炎を起こす要素のある物)は金網を通過して燃焼を継続させる。しかし、金網の穴は炎が伝播し外気を点火するには細かすぎる大きさとなっていた。燃料には基本的に植物油を使用する。
デービー灯はガスの有無を確認する試験にも用いられる。可燃性のあるガスが混ざっていると、デービー灯の炎はより高く、青色を帯びて燃焼する。デービー灯には炎の高さを計測できるように鉄製のゲージが備え付けられていた。炭鉱労働者は二酸化炭素のようなガスを検知しやすいよう、地面近くに安全灯を置いた。それは、ガスが空気より重く、炭鉱内に沈んだガスを集めることが容易だったからである。炭鉱内の空気中に含まれる酸素が少ない場合、デービー灯の炎はあっという間に消えてしまう。メタンを含む空気中では、酸素濃度が17 %を下回ると(生命維持は可能な濃度だが)炎が消えるため、ランプは不健康な大気の早期検知と、窒息死する前に脱出することが可能となる。
デービー灯の発明は、同時に炭鉱事故の増加にも繋がった。ランプのため、以前は安全性の理由により閉鎖されていた一部の炭鉱の再開が促進されたためである[5]。労働者は、メタンガスの発生する危険な場所で働くことを余儀なくされた。換気扇によって、坑内のメタンを減少させることは出来ていたが、炭鉱の所有者(経営者)が費用を惜しんだため、坑内に換気装置が備え付けられていなかった事も多かった。炭鉱内の空気の基準を定める法規ができて、やっと換気装置が取り入れられるようになった。伝統的に炭鉱労働者は自分の装備を会社の店から購入したように、デービー灯もまた経営者負担ではなく、労働者自身で用意しなければならなかった。
炭鉱事故が増加した他の要因として、デービー灯自身の信頼性の欠如もある。剥き出しの金網は傷みやすく、ただ一本のワイヤーが切れたり錆びて壊れたりすると、途端にデービー灯は安全な物でなくなる。新しくて綺麗な物であったとしても、安全灯の火は弱いものであった。後に金網部分の交換を簡便にしたり、本体下部をガラス製にして光量を向上させる等の工夫はなされたものの、[要出典]19世紀末に電灯が普及するまでは、デービー灯が抱える問題点は完全には解決できずじまいだった。
デービー灯を最新型に改良した物がオリンピック聖火のトーチである。このトーチは、2000年以降のオリンピック[6] の聖火リレーで使用された[7]。
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