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『ザ・グレイト・ラグタイムショー』(The Great Ragtime Show)は1992年にデータイーストから発売されたアーケードゲーム。横スクロールのシューティングゲームで奇抜なアクション性が盛り込まれている。二人同時プレイ可能。
第一次世界大戦前後と思われる時代を舞台に、複葉機や車や動物その他意味不明な乗り物を駆使して常軌を逸したメカを駆使する科学者と戦う。
8方向レバーと2ボタン(ショット、フック)で複葉機を操作。最大の特徴である複葉機の尾部に取り付けられた鉤爪状のフックはレバー操作で慣性に基づいて振り回される。これに接触した敵機やステージ構造物は複葉機に牽引され振り回される。牽引されているものは他のものへの接触でダメージを発し、フックボタンを押すことで投擲される。耐久力の限界を超えるか投擲することでオブジェクトは破壊される。
ショットボタンは連射することでパワーゲージが上昇し、画面の大半を多い尽くす電撃を放射するようになる。連射しすぎるとオーバーヒートを起こし、一定時間電撃が出なくなるデメリットを引き起こすので、適度な連射速度を維持することが必要となる。連射装置対策と思われる。
これらの独特の操作を実行するとボタンをバチバチ連射しながらレバーをグルグル回すという無類の滑稽さとなり、『ハイパーオリンピック』以来の馬鹿馬鹿しい操作感を提供する。この種の特殊なギミックを盛り込んだゲームはとかく専用のテクニックを高度に磨くことを奨励し、それ抜きではクリア不可能なものが多いが、本作はそうした向上心を必要としない(後述)。
全編非常に緻密なドット絵による画像はヨーロッパ風の町並みやパリ万博風の異国情緒を表現し、それらに組み込まれた膨大なギミックと前述のフックシステムが絡み合い未曾有の遊園地ゲームを形作っている。また、ゲームのタイトル名通りに音楽はラグタイムで統一されている。
シューティングゲームの体裁を取ってはいるが、操作することそのものの面白さに焦点が当てられた奇妙なゲームであり、2000年以降の『塊魂』等の動かしているだけで面白いインタラクションゲームのルーツの一つとも言える斬新なゲーム感覚を提供した。
セガサターンで発売予定があったがキャンセルされた。
基本的に主人公の乗り物は複葉機だが、これが破壊されると拳銃を携えたパイロット単身を操作することとなり、ステージに設置されている様々な乗り物に乗ることができる。以下に搭乗可能な乗り物の一部を挙げる。
従来のゲームのような、ノーミスクリアやハイスコア等の「まっとうな」ゲーム攻略においては連射だけで全方位攻撃の行なえる複葉機以上に有利な乗り物は無いが、やられても楽しみ方が増えるから悔しくないという不思議なゲーム感覚がある。例えば複葉機のフックに標準搭載の爆弾は取っておきの面制圧武器のはずなのだが、フックには1つの物しか引っ掛けられないゆえ、引っ掛けたい物の為に仕方無く投げざるを得ない、地上に象やホッピングが出てきたら複葉機を捨ててでも乗ってみたいという事である。
同社がこの前年に発売した『ウルフファング』では主人公が搭乗したロボットが破壊された後にロボットの部品を集めて再搭乗するシステムがあったが、それを発展させたものといえる。
最終ボスにたどり着くと会話が始まり、幾つかの選択が要求される。選択しだいではボスと共に飛び去って行ったり、ボスを操作できるといったことがあったり、最終ボス撃破後にはエンディングを見ますか?と聞かれて「いいえ」を選択できてしまう等々、通常のゲームでは有り得ない展開が用意されている(エンディングをスキップできるゲームは数多くあるが、エンディング自体を省略できるゲームはほとんどない)。エンディング画面で紹介される各種オブジェクトも、フックで投げ飛ばしてハイスコアを競えるという、データイーストならではの徹底したナンセンスぶり。
斬新なゲームを語る際に頻繁に引用されるが、一切移植が行なわれておらず非常にマニアックである。しかしデータイーストの持つ「ナンセンス」、「コミカル」、「渋さ」、「斬新な操作」が非常に高いクオリティで仕立てられており、老若男女を問わず笑いながら楽しめる傑作である。
不幸にも、アーケードは前年発表された『ストリートファイターII』のヒットで対戦格闘の時代へと向かっていた。語られる所では、本作は対戦格闘ブームに対する切り札として社運を懸けて開発されていたという。だが本作は驚くほどの斬新さ、完成度を持つにも関わらずほとんどヒットする事なく姿を消した。これ以降データイーストの独自性が発露される場は徐々に失われていき、やがてアーケード事業からの撤退を迎える事になるのである。
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