ケナガマンモス

更新世~完新世にかけて生息した長鼻目ゾウ科の動物 ウィキペディアから

ケナガマンモス

ケナガマンモス (学名Mammuthus primigenius) は哺乳綱長鼻目ゾウ科マンモス属の一種である。英名(Woolly mammoth)からウーリーマンモスとも。マンモス属を代表する種であり、日本でマンモスと言えば大半はこの種を指す。

概要 ケナガマンモス, 地質時代 ...
ケナガマンモス
生息年代: 0.40–0.0045 Ma
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ケナガマンモス M. primigenius 復元図
地質時代
新生代第四紀更新世 - 完新世
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
上目 : アフリカ獣上目 Afrotheria
: ゾウ目 Proboscidea
: ゾウ科 Elephantidae
亜科 : ゾウ亜科 Elephantinae
: アジアゾウ族 Elephantini
: マンモス属 Mammuthus
: ケナガマンモス M. primigenius
学名
Mammuthus primigenius (Blumenbach, 1799)
和名
ケナガマンモス
ウーリーマンモス
英名
Woolly mammoth
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マンモス属としては中型で、ユーラシア大陸の広範囲(東は中国中部から朝鮮半島を含むシベリアと西は北西ヨーロッパ)や北海道(中央部以東、以北)、北アメリカ大陸に生息していた。シベリアからは時折、軟体部が保存された標本が永久凍土から発掘されている。

発見と研究の歴史

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全身骨格
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人間と5種のマンモスの大きさ比較。
ケナガマンモスは赤色。

ケナガマンモスを含む絶滅した様々なゾウの化石は古くからヨーロッパ人に知られていたが、それらは聖書の記述に基づいて、巨獣や巨人のような伝説の生き物の遺体として解釈されていた。18世紀に入るとアイルランドの収集家ハンス・スローン[1][2]やフランスの博物学者ジョルジュ・キュヴィエ[3]らが「巨人の骨=ゾウの骨」という認識を示し、1799年にドイツの動物学者ヨハン・フリードリヒ・ブルーメンバッハが「最初のゾウ」を意味するElephas primigeniusの学名を与えた。1828年、イギリスの解剖者ジョシュア・ブルックスは、自身の所有していたケナガマンモスの化石にMammuthus borealisの学名を与え発表した[4]。"マンモス"という言葉は少なくとも17世紀初頭から使われていた[5]が、その由来はよく分かっていない。シベリアの少数民族マンシ人の言葉で「大地の角」を意味するmēmoŋtに由来するという説[6]や、アラビア語で巨大な獣を意味するmehemotに由来するという説、エストニア語で大地を意味するmaa、あるいはモグラを意味するmuttに由来するという説などが唱えられている。

2008年から、マンモスの染色体DNAの大部分がマッピングされている[7]。それ以降も、常態の良い毛の標本などから、保存状態の良い古代DNA(古代ゲノム)復元が出来ている[8]

絶滅

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分布図(明る緑色)

ほとんどのケナガマンモスの個体群は、他の氷河期の主要生物と並んで、更新統後期から完新世初期にかけて消滅した。この絶滅は、4万年前に始まり、14,000〜11,500年前にピークを迎えた第四紀の大量絶滅の一部を形成した。 科学者は、その生息地の収縮を引き起こした主要因が狩猟や気候変動であるのか、それとも2つの組み合わせによるものであったのかについて意見が分かれている。 原因が何であれ、大型哺乳類は、生息数が少なく再生率が低いことから、一般的に小規模哺乳類よりも脆弱とされている。ケナガマンモスの個体群は、一瞬でその全てが消滅したわけでは無いが、徐々にその数を減らしていった。ほとんどのケナガマンモスは1万4000年から1万年前に絶滅し、9,650年前にシベリアキテク半島に存在していた個体群を最後にシベリアからは姿を消した[9][10]。アラスカのセントポール島に残存していた北米最後の個体群も紀元前3600年頃に絶滅した[11][12][13]。そしてウランゲリ島に残っていた地球最後の個体群も紀元前2000年頃に絶滅し、地球上から完全に姿を消した[14][15][16][17]

生存説

ケナガマンモスの生存説は古くから主張されている。19世紀には、シベリアに暮らす少数民族によって「巨大な生物」の報告がロシア当局に何度か伝えられていたが、科学的な証拠はこれまでに浮上していなかった。1899年10月にはヘンリー・トゥケマンという人物がアラスカ州で射殺したマンモスの標本をスミソニアン協会へ寄付すると表明したが、博物館はその話を否定した[18]。フランスの臨時代理大使M.ギャロンは、ウラジオストク滞在中の1920年にロシアの毛皮業者から聞いた話として、タイガの奥深くに巨大な毛深いゾウが生息しているということを1946年に書き残している。シベリアはその広大さからくまなく調査することは不可能であるため、ケナガマンモスが生き延びたと完全に排除することはできないが、これまでの研究から最も新しい個体群でも数千年前に絶滅したことが分かっている。生存説の大半はケナガマンモスの死体を目撃した先住民によって誇張され伝わったものだと考えられている[19]

著名な標本

さらに見る 名前, 画像 ...
名前 画像 発見地 発見年 生存年代(BP 概要
アダムスマンモス Thumb シベリア、レナ川河口[20] 1799年[20][21] 35,800±1200[20][22] 最初に発見されたマンモスの全身骨格。骨の他、皮膚、体毛、生殖器などの軟体部が残っていた[21]
ベレゾフカマンモス Thumb シベリア、ベレゾフカ川[23] 1900年[23] 44,000±3,500[23] 頭部を除くほぼ全身の軟体部が残存。胃の内容物や固化した血液も回収された[23]
ディーマ[24] Thumb シベリア北東部、キルギルヤーク川付近[24] 1977年[24] 41,000±900[24] 最初に発見された幼年個体[24]
ユカギルマンモス Thumb シベリア、ユカギールの南東30km地点 2002年 18,560±50 鼻を除く頭部および左前足が完存。2005年日本国際博覧会のグローバル・ハウスで展示された。
リューバ[25][26] Thumb シベリア北東部、ヤマル半島のユリベイ川[25][26] 2007年[25] 41,700+700/-550[25] マンモスの子供としては最も保存状態が良い[25][26]。個別記事参照。
ユカ[27][28] Thumb シベリア、ユカギールの東30km地点[28] 2010年[28] 34,300+260/−240[28] 体組織の95%が残存[27][28]。2017年には特別展マンモスYUKAとして日本でも展示された。個別記事参照。
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文化面

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(上)ケナガマンモスの下顎臼歯。
(下)南方マンモスの下顎臼歯。
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アフリカゾウとマンモスの牙の断面。年輪から年齢を推測される。
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古代の人類と共存していたことを示す洞窟壁画やケナガマンモス像。

ヨーロッパにおいてはクロマニョン人、北アメリカではクローヴィス人が食料としていた。

また、石器時代からマンモスの象牙による加工が行われており、採掘されたマンモスの象牙は現代でも彫刻に用いられている。

知名度に秀でた絶滅動物のため、古今東西の多くの作品に登場している。

映像作品

脚注

関連項目

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