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グループRally (Group Rally) は、国際自動車連盟 (FIA) が定める、ラリーに使用する競技車両のカテゴリーの総称である。2019年までの名称は『グループR』で、現在も一部には用いられている。
FIAが発行する国際モータースポーツ競技規則 付則J項(国際競技車両規則)の部門Ⅰ(量産車両)に属し、「ツーリングカーまたは大規模量産プロダクションカー」と定義される。市販車を改造するという点ではグループAやグループNと同じだが、改造範囲により大きく複数のレギュレーションに分かれている点が異なる。その点ではグループGT3/GT4に近い性質を持つ。
グループRallyは大別すると四輪駆動ターボのRally2・Rally2キットカー・Rally3、二輪駆動のRally4・Rally5に分けられる。グループAの公認も取得することが前提条件であるため、ベース車両はシリーズ全体で25,000台、直接のモデルは連続する12ヶ月間で2,500台が生産されている4座席の量産車でなければならない。またそれに加えて「VR」[注釈 1]と呼ばれる、改造についてのグループR独自の公認の取得も求められる。各VR公認を得ている部品は、ベース車両に無いものや他社ブランドのものでも使用が可能である[1]。
ちなみに同じRがつくラリーカーのグループR-GTが存在するが、これは部門II(レーシングカー)のGTプロダクションカーを規定したものであり、グループRとは全く異なる規定である。また世界ラリー選手権(WRC)最高クラスのワールドラリーカー(WRカー)のベース車両と改造(WRCキット変型)は部門Ⅰだが、グループRallyではなくグループAの特例として公認を受けていた。2022年からWRカーに代わったグループRally1は部門Ⅱへと移動している。
WRCの下位クラスやFIA管轄の地域選手権ではたちまちメイン規定となり、マニュファクチャラーやプライベーターからグループGT3やTCRに匹敵するほどの人気を集めている。
日本では導入が遅れていたが、2015年に全日本ラリー選手権(JRC)にR1 - R3(現R3 - Rally5)車両が「RR車両」の名でJN5クラス(現JN2クラス)に正式に導入され、加えて2019年にはR5(現Rally2)のJN1クラス参戦も認可された。一般的に海外の車両は、ジュネーヴ条約加盟国で登録された車両に限り自動車カルネを用いて一時輸入すれば「締約国登録自動車」として登録国のナンバーのまま日本の公道を走行できる[2][注釈 2]し、またプジョー・208 R2やシトロエン・DS3 R3のように日本の道路運送法に基づく登録番号票(="本ナンバー")を取得した上でJRCに参戦するエントラントも多かったが、2019年にオサムファクトリーが輸入したシュコダ・ファビアR5はカルネ・本ナンバーいずれも認められず、日本自動車連盟(JAF)の選手権であるJRCを諦めるという一幕があった[3]。その後2021年にJRCの規約が改訂され、ラリーを目的に仮ナンバーを取得することでファビアR5の参戦も可能となった。
他の日本のラリーイベントでは、日本スーパーラリーシリーズは初年度から仮ナンバー含め全てのグループRally車両の参戦が可能で、またWRCの日本ラウンドであるラリージャパン、およびこれのリハーサルイベント『セントラルラリー』もまた仮ナンバーでの参戦が可能であった。これについて当初は海外からのエントラントのナンバーの処遇はどうするのかという問題や、仮ナンバーの車両が溢れることが公道規則適合車を用いるというラリーの精神に則っているものなのか、という点に関して疑問の声も上がっていた。
2000年頃からFIAはグループA/グループNに代わるカテゴリを模索しており、その中でR規定(RはRallyの頭文字。この頃は「グループ」はつけずに単に「R○」と呼んでいた)が誕生した。従来と異なり排気量で改造範囲が変わるこの規定は、1.4LまでのR1は入門レベル[注釈 3]、1.4 - 1.6LまでのR2は国内レベル[注釈 4]、1.6 - 2.0LまでのR3は国際レベル[注釈 5]、そしてR4に相当するのはトップカテゴリのスーパー2000という枠組みで当初は策定され、2000年代後半から順次採用されていくことになる。なおこの頃はいずれも自然吸気エンジンのみを想定していた[4]。
2006年からのジュニア世界ラリー選手権(JWRC)で、開発競争が激化してコストの高騰したスーパー1600に対し、グループNに近い改造範囲で低コストで参戦できる規定としてR1 - R3が認可された。
2011年には、2005年頃はすでに構想されていた、グループN4の発展であるグループR4が発足[5]。同年にJWRCがワンメイクしたため、戦場を失ったR1 - R3車両はPWRCへの参戦が認められた。
2013年にスーパー2000の後継カテゴリとしてターボエンジンの『R4T』が起草され、最終的にはこれを改名したグループR5が誕生し、現在のピラミッド構想の原型が出来上がった[6]。
2015年にR4はFIA主催の欧州イベントから外されるなど段階的に廃止される一方、その代替として翌2016年にFIAワールドモータースポーツカウンシル (WMSC) にて共通コンポーネントを用いるR4キットカーが承認され、2018年からコンポーネントが発売されるようになった。
その後数字が若い方が戦闘力が低いのは車両クラス名・カテゴリ名と矛盾してわかりづらいということから、2020年にWRカーを頂点とし、R5を『RALLY2』、R4キットカーを『RALLY2キットカー』、R2を『RALLY4』、R1を『RALLY5』というピラミッド構造の下に改名された(この時R3だけは改名されなかった)[7]。 なおグループR時代に作成されたマシンについては、固有の名称は旧称のままになっているが、新型の開発により改名するケースもある。その例としては、ファビアR5はエボリューションモデルで『ファビア Rally2 EVO』と改名されているが、旧型についてはそのままである。
2022年からは『Rally3』と、グループRallyからは独立した規定である『Rally1』が導入され、ラリーピラミッドは一旦の完成を見た。また同年、EV規定のe-Rally5の承認も行われた[8]。
車両クラス | グループ | NA排気量 | 過給排気量 | 気筒数 | 燃料 | 最低重量 | 駆動系式 | 主な該当選手権 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
RC2 | Rally2 | — | 1,620 cc | 4気筒 3気筒 |
ガソリン | 1,230 kg | 四輪駆動 | ||
Rally2キットカー | 1,600 cc | 4気筒 | |||||||
RC3 | R3 | R3D | 2,000 cc以下 | 6気筒以下 | ディーゼル | 1,150 kg | 二輪駆動 | ||
R3T | 1,620 cc以下 | 4気筒以下 | ガソリン | 1,080 kg | |||||
R3C | 1,600 cc超 2,000 cc以下 |
1,067 cc超 1,333 cc以下 | |||||||
RC4 | Rally4 | Ra4C | |||||||
Ra4B | 1,390 cc超 1,600 cc以下 |
927 cc超 1,067 cc以下 |
1,030 kg | ||||||
RC5 | Rally5 | 1,600 cc以下 | 1,067 cc以下 | 1,030 kg | |||||
— | 1,333 cc以下 | 1,080 kg |
旧名グループR5。パワーウェイトレシオは4.2 kg/hp[9]、最大販売価格は税抜198,840ユーロ[9]。スーパー2000に代わり2013年に誕生した規定で、WRカーに次ぐ戦闘力を持ったグループRally規定最強のマシン。かつてはこれを次期WRカーにするという構想も存在したほどで、事実狭くツイスティなコースでは大柄な現行WRカーを凌ぐ速さを見せることもある。かつてプライベーターからの絶大な人気を誇ったグループN/R4やスーパー2000に取って代わり、JRCを含む各地域ラリーで最高峰マシンとして採用されている。またWRCでもワークスチームの参入が相次いだため、ワークスやプロドライバー向けのクラス(WRC2プロ→WRC2)が創設されたこともあった。
小型大衆車のサスペンションをマクファーソン・ストラット化した上で4WDターボに改造するというコンセプト自体はスーパー2000と共通であるが、量産車の部品をより多く用いてコストの削減を狙っているのがポイントである。
Rally2車両の排気量上限は1,620 cc[10][9]。これはWRカーやラリー1の『GRE』とほぼ同じ排気量[11]であるが、Rally2の場合は同一グループ内の市販車に由来するエンジンを用いる必要があること、4気筒エンジン搭載車はカムシャフトのリフト量は9 mmまで、3気筒のカムシャフトのリフト量は11 mmまでに規制されている事と、吸気リストリクター径が32 mm[9]とWRカーに比べたら小さく、280馬力程度に絞られる事など相違点は多い。最大過給圧は2.5bar、最大圧縮比は10.5:1に設定されている。スーパー2000とは異なり、可変バルブ機構の採用が可能である。
エンジン以外についても、ターボチャージャーや冷却システムなど多くの部品で、公認を受けた量産車のものを多く用いる必要がある[注釈 7]。ヘッドランプもベース車両と同じもので、ホイールアーチも拡大できないため、フロントサスペンションの設計の自由度はWRカーに比べて著しく低い[12]。ただし最大サスペンションストローク量に規定は無いため、車種によっては270mm制限のあるラリー1よりも大きく取れる可能性がある。
駆動系についてはスーパー2000同様、サディフ社またはXトラック社が公認コンポーネントの供給を行う。ギアボックスは5速までのシーケンシャルシフト、ディファレンシャルギア(デフ)は前後のみの機械式となっている。前後輪の回転数の差を吸収するセンターデフは禁止されている代わりユニバーサルジョイント(カルダンシャフト)を用いており、リエゾンの走行をこなせるようになっている。タイトコーナーでリアをロックさせて滑らせるために、ハンドブレーキを引いた時にリアアクスルを切り離す特別なクラッチも装備される[13]。
空力についてはより厳しく、リアウィングは全幅を超えるサイズのものは装備できず、その価格も800ユーロまでに規制されている[14]。
公認取得後の改造については、使用回数の規制された『ジョーカー』を用いることで可能である。
なおRally2に参戦するクルーに対しては、FIAがWRカーと同様の安全装備を義務付けている関係で、最新の安全装備が必要とされており、常にFIAから発行される安全装備に関するテクニカルリストに即した、ヘルメット・FHRデバイス・レーシングウェアの装着が必須である。
旧名グループR4キット。オレカの供給する共通コンポーネント(エンジン、駆動系、サスペンション)を量産車に組み込むもので、ベース車両についてグループAの公認を必要としない点が、他のグループRally規定とは一線を画す。また他のグループR車両は基本的に量産車メーカーが開発・公認を受けるのに対し、Rally2キットカーはプライベーターが独自に開発を行うのも大きな特徴で、これにより多様な車種の参入が可能となっている。
もともとはR4の代替として、R5 (Rally2) とR3の間を埋めるための地域選手権限定の規則として発足した。後に各クラスの改名に合わせて"グループRally2キット" (RC2) に名称が改められている。ただしWRC2/3の選手権にはまだ参戦が認められていない。
グループRally最後発となる規定で、2021年から登場。名称が似ているがR3とは関連性の無い、全く新しい規定である。パワーウェイトレシオは5.6 kg/hp[33]、最大販売価格は税抜100,000ユーロ[33]。戦闘力差の大きいRally2とRally4の間を埋め、4WD車へのステップアップを促進するための規定。
コスト削減のために足回り(ウィッシュボーン、ブレーキキャリパー、ダンパー)は共通部品を用いるほか、ボディワークはほぼ市販車状態に制限される。エンジンはターボの場合、30 mm径吸気リストリクターで210馬力程度に絞られる[34]。
2022年からWRC3の車両として採用されている。
Rally4の旧称はグループR2[35]。パワーウェイトレシオは5.1 kg/hp[35]、最大販売価格は税抜70,000ユーロ[35]。グループRにおける二輪駆動車のメイン。R3とRally4は技術的にかなり近く、参戦クラスも滅多に区別されない。本規定唯一の後輪駆動車であるトヨタ・GT86 CS-R3もこれに該当する。
WRCではWRC3を主戦場としていたが、2019年に同クラスが廃止されて以降はJWRCにワンメイク供給されるフォード・フィエスタR2以外は、R1同様地域選手権や地元プライベーターの使用がメインとなる。
旧名はグループR1。パワーウェイトレシオは6 kg/hp[36]、最大販売価格は税抜40,000ユーロ[36]。グループRのエントリークラスで、安全装備やチューニング程度の改造しか認められない。WRCでは地元プライベーター以外が使うことは極めて稀である。
2012年にグループNとスーパー2000の戦闘力の差を埋めるために誕生した規定。2013年までのグループN4ホモロゲーション取得車両をベースに、軽量化やサスペンション・冷却性能向上のためのキット装着・ボンネットの開口部の作成・ターボの変更・窓ガラスの変更などが可能である。従来のグループNとは異なり、変型(VO・VR)のための追加生産は必要としない。これにより1 kmあたり1秒の戦闘力の向上が望まれたものの、実際には0.3秒程度のアップに留まった。加えてN4の改造範囲の拡大によりR4を区別する必要も無くなったことから、最終的に両者はR4に統合された[37]。これにより従来のR4は「VR4」、N4は「グループNR4」の名称で区別される[38]。
2015年以降のVR4はFIAシリーズの主催の欧州イベントでのエントリーを不可とされ(ただしASN車両枠なら参戦可能)、2017年にはR4の名称・立場を全く異なる規定であるR4キットカー(現Rally2キットカー)に明け渡すなど、段階的に廃止されている。ただしNR4についてはERCに参戦が可能である。
グループ | クラス | 自然吸気排気量 | 過給排気量 | 気筒数 | 燃料 | 最低重量 | 駆動系式 | 主な該当選手権 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R1 | R1A | 1,390 cc以下 | 927 cc以下 | 6気筒以下 | ガソリン | 980 kg | 二輪駆動 | |
R1B | 1,390 cc超 1,600 cc以下 |
927 cc超 1,067 cc以下 |
1,030 kg | |||||
R2 | R2B | 1,030 kg | ||||||
R2C | 1,600 cc超 2,000 cc以下 |
1,067 cc超 1,333 cc以下 |
1,080 kg | |||||
R3 | R3C | 1,080 kg | ||||||
R3D | — | 2,000 cc以下 | ディーゼル | 1,150 kg | ||||
R3T | 1,620 cc以下 | 4気筒以下 | ガソリン | 1,080 kg | ||||
R4 | 2,000 cc以上 | 無制限 | 1,300 kg | 四輪駆動 | ||||
(R4キットカー) | 1,600 cc | 4気筒 | 1,230 kg | |||||
R5 |
グループ | クラス | 排気量 | 最大気筒数 | エンジン型式 | 燃料 | 最低重量 | 駆動系式 | 該当選手権 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
R1 | R1A | 1,400 cc以下[注釈 8] | 6気筒 | 自然吸気 | ガソリン | 980 kg | 二輪駆動 |
|
R1B | 1,400 cc超 1,600 cc以下[注釈 9] |
1,030 kg | ||||||
R1T | 1,400 cc以下 | ターボ | TBA | |||||
R2 | R2B | 1,400 cc超 1,600 cc以下[注釈 9] |
自然吸気 | 1,030 kg | ||||
R2C | 1,600 cc超 2,000 cc以下 |
1,080 kg | ||||||
R3 | R3C | 1,600 cc超 2,000 cc以下 |
1,080 kg | |||||
R3D | 2,000 cc以下 | ターボ | ディーゼル | 1,150 kg | ||||
R3T | 1,620 cc以下 | 4気筒 | ガソリン | 1,080 kg | ||||
R4 | 2,000 cc以上 | 無制限 | 1,300 kg | 四輪駆動 | WRC2 | |||
R5 | 1,400 cc超 1,600 cc以下 |
4気筒 | 1,200 kg |
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