キシリトール (xylitol) は化学式 C5 H12 O5 で表される、キシロース から合成 される糖アルコール の一種。メソ化合物 である。天然の代用甘味料 として知られ、最初はカバノキ から発見されギリシア語 Ξυλον (Xylon、木)から命名された。北欧諸国で多用されている[ 要出典 ] 。旧厚生省 は天然にも存在する添加物に分類している[2] 。
キシリトールの結晶
フィッシャー投影式
冷涼感 があり、後味の切れが早い。スクロース と同程度の甘みを持ち、エネルギー が4割と低い。分子量 は152.15である。また、加熱による甘みの変化がないため、加工にも適している。
う蝕
キシリトールは口腔 内の細菌 による酸の産生がほとんどなく、またミュータンス菌 (Streptococcus mutans )の一部の代謝 を阻害(無益回路 の生成による)する効果があることから[注釈 1] 、非う蝕 性甘味料として知られる。1976年にアリエ・シェイニン らがフィンランド で行った実験をはじめとして、う蝕予防効果があることが実証されている。しかし、キシリトールの再石灰化促進作用については証明されておらず、非う蝕原性であるが抗う蝕性と言うことはできない。現状での結論として、キシリトール配合のガム などを適切に利用することでう蝕の予防に一定の効果が認められるが、う蝕が治るということはないとされている(ガムをかむことにより分泌される唾液 による口内の清浄化効果、pH が低下しない状態の維持とこれによる脱灰 防止と歯の再石灰化促進効果はあるものの、それは「キシリトールそのもの」とは関係がない)。
口腔衛生
口腔 内の細菌 による酸の産生がほとんどなく、また清涼効果や湿潤効果、味による唾液分泌効果、洗浄効果があるので用いられる。
糖尿病
キシリトールは上記の通り、スクロース に比べカロリーが4割低い。この他、スクロースより吸収速度が遅いため、血糖値 の急上昇を引き起こさない[3] 。
骨粗鬆症
キシリトールは骨粗鬆症 の治療に役立つ可能性が指摘されている。フィンランド の研究者グループは、研究のネズミ で骨の弱体化が防がれ、骨密度が改善されたことを発見した[4] [5] 。
急性中耳炎
キシリトールのガムが急性中耳炎 を防ぐのに役立つことを示した研究報告がある[6] 。
キシリトールは、他の糖アルコール の大部分と同様、弱い下剤 の働きをする。毒性 は無い。キシリトールの摂取回数の増加に伴う下痢の発生頻度の増加は見られず、う蝕予防効果を期待するレベルのキシリトールガム摂取は胃腸状態にほとんど影響しないとする実験結果もある[7] 。
主にガムなどでキシリトール配合による虫歯予防を謳っている製品があるが、キシリトール以外に砂糖など、う蝕性の高い甘味料が配合されている場合、虫歯予防本来の効果は期待できない。キシリトールの摂取を国を挙げて推進している国、フィンランド歯科医師会のキシリトール製品推薦条件は以下である。
キシリトールが甘味料中50%以上含まれていること
キシリトール以外の甘味料は、低酸産生のものを使用していること
製品にはクエン酸のような、酸触症発生の危機のある酸を含んではならない
口腔内での酸産生試験を行い、非酸産生を確認すること
健康にリスクがあるかもしれないというような研究の発表が報じられている[8] 。
イヌ に対してはインスリン の分泌を促進し、長期間かつ多量に与えた場合には肝臓へのグリコーゲンの蓄積が起こるが、単回投与における毒性は極めて低いとされる[9] 。獣医師による研究ではイヌが摂取した場合、多量のインスリンを放出し肝機能 に影響が出るなど、場合によっては生命に危険が及ぶとの報告もある[10] [11] [12] [13] 。ただし、肝臓障害の原因はまだ明らかではない[14] 。
食事の有無や咀嚼の有無などに左右されるが、100mg/kg以上のキシリトール摂取によって、過剰にインスリンが分泌され、血糖値が低下し、嘔吐や沈鬱、衰弱などの臨床症状が現れる[14] 。
注釈
ただし、この効果に抵抗を示す株もある。キシリトールを長期に渡り用いている場合、口内のミュータンス菌はキシリトールによる無益回路の生成が発生しないキシリトール非感受性の株が多くなってくる。(ただし、この場合でも、現状、勢いの非常に強いS.mutansの悪性株の発見はキシリトール感受性の株に偏っているので、それらが存在しない(あるいは存在しにくい)事による恩恵はあると言える。)
出典
厚生省生活衛生局食品化学課 (2000年12月14日). “表5 食品添加物の年齢別摂取量 ”. マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 . 日本食品化学研究振興財団. 2008年1月11日 閲覧。 [ 要検証 – ノート ] Mattila, P. T.; Svanberg, M. J.; Jamsa, T.; Knuuttila, M. L. (2002). "Improved bone biomechanical properties in xylitol-fed aged rats". Metabolism 51 (1): 92– 96. オンライン版アブストラクト Uhari, M. et al. (1998). "A novel use of xylitol sugar in preventing acute otitis media". Pediatrics 102 (4): 879– 974.
仲井雪絵 ,進賀知加子,守谷恭子,加持真理,瀧村(米田)美穂枝,山中香織,森裕佳子, 紀瑩,竹本弘枝,下野勉『妊娠期からのキシリトール摂取が齲蝕原性菌の母子伝播および齲蝕発症に及ぼす影響―第3報キシリトールの長期経口摂取は下痢の発現を誘発するのか?―』一般財団法人日本小児歯科学会、2007年。doi :10.11411/jspd1963.45.2_335 。Eric K. Dunayer, MS, VMD; Sharon M. Gwaltney-Brant, DVM, PhD, DABVT. (2006).: "Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs": オンライン版アブストラクト , 2008年6月15日閲覧. 須崎恭彦 (2006年11月9日). “キシリトールは犬に危険? その2 ”. 獣医師須崎のペットに手作り食 . 2015年12月8日 閲覧。 “論文 Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs Eric K. Dunayer, MS, VMD; Sharon M. Gwaltney-Brant, DVM, PhD, DABVT ...には、犬の体重1kg当たり1.4-2.0gのキシリトールを摂取して肝障害になり死亡した例が紹介されております。 ” “ペットに人間の食物× かわいさ余って… 死に至ることも”. 読売新聞 東京朝刊 : p. 17. (2007年1月16日). "...犬や猫に人と同じ食べ物...を与える愛好家が多く、獣医師らが注意を呼び掛けている。...安易に与えると命取りになる可能性もあるという。...犬であれば、タマネギやチョコレート(カカオ)、ブドウ、キシリトール入りのガムなどだ。 "
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