Loading AI tools
1875年にジョルジュ・ビゼーが作曲したフランス語によるオペラ ウィキペディアから
『カルメン』(Carmen)は、ジョルジュ・ビゼーが作曲したフランス語によるオペラである。世界で最も人気のあるオペラの一つとされる[1]。声楽抜きでオーケストラのみによる組曲もコンサートや録音で頻繁に演奏されている。
メディア外部リンク | |
---|---|
カルメン(全曲を試聴) | |
音楽・音声 | |
アルコア版の録音 - テレサ・ベルガンサ(カルメン)、プラシド・ドミンゴ(ドン・ホセ)、シェリル・ミルンズ(エスカミーリョ)ほか、クラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団、Universal Music Group提供YouTubeアートトラック | |
ギロー版の録音 - レオンティン・プライス(カルメン)、フランコ・コレッリ(ドン・ホセ)、ロバート・メリル(エスカミーリョ)ほか、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、Sony Classical提供YouTubeアートトラック | |
映像 | |
アルコア版の映像 - Irena Parlov(カルメン)、Javier Agulló(ドン・ホセ)、Vicente Antequera(エスカミーリョ)ほか、Ricardo Casero指揮Orquesta Reino de Aragón、Halidon Music公式YouTube |
本項ではオペラの他に、バレエやミュージカルといった舞台作品についても記載する。
オペラ『カルメン』は、プロスペル・メリメの小説『カルメン』を元に、アンリ・メイヤックとリュドヴィク・アレヴィがリブレット(台本)を作り、ビゼーが作曲した4幕もののオペラである[1]。音楽(歌)の間をレチタティーヴォではなくメロディのない台詞でつないでいくオペラ・コミック様式で書かれていた。
1875年3月3日、パリのオペラ=コミック座で初演された[1]。初演は不評であった[2]が、その後の客入りと評判は決して悪くなく、ビゼーのもとには『カルメン』のウィーン公演と、そのために台詞をレチタティーヴォに改めたグランド・オペラ版への改作が依頼された。この契約を受けたビゼーだったが、持病の慢性扁桃炎による体調不良から静養中の6月4日、心臓発作を起こして急死してしまう。そこで友人である作曲家エルネスト・ギローが改作を担当してウィーン上演にこぎつけ、それ以降フランス・オペラの代表作として世界的な人気作品となった。リブレットはフランス語で書かれているが、物語の舞台はスペインである。そのため日本では役名の「José」をスペイン語読みで「ホセ」と書きあらわすが、実際はフランス語読みで「ジョゼ」と発音して歌われる。音楽もハバネラやセギディーリャなどスペインの民族音楽を取り入れて作曲されている。
近年では、音楽学者フリッツ・エーザーがビゼーのオリジナルであるオペラ・コミック様式に復元するとして、1964年にアルコア社(Alkor-Edition)から出版した「アルコア版」による上演も行われる。現行の主要な版は原典版のほか、オペラ・コミック版、グランド・オペラ版、メトロポリタン歌劇場版がある[要出典]。ギロー版(グランド・オペラ版)はフランス語ネイティブ以外のキャストでも台詞に訛りがつくのを避けられることもあり、現在でも使用されている。
2000年代初めには決定版ともいうべきミヒャエル・ロートによる校訂版が作られており、一応の完成(A:自筆譜)から初演時点、初版などの各時点とその周辺の成立時点ごとに全てが併記されており、指揮者や演出家などのプランナーが自由に取捨選択することが可能な版となっている。校訂報告も簡潔な文章で、表になっていて非常に読みやすいものとなっている。日本では桐朋学園大学図書館が所有していて、閲覧や各地の図書館との連携によって貸出可能である。
以降は版によって増減される。
フルート2(2本ともピッコロ持ち替え)、オーボエ2(2番はコーラングレ持ち替え)、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、コルネット2、トロンボーン3、ティンパニ、トライアングル、タンブリン、大太鼓、シンバル、小太鼓、ハープ、弦五部(14型)
約2時間40分(カットなしで各55分、45分、40分、20分)
1820年ごろのセビリア。昼休みに広場に現れたタバコ工場の女工たちに、男たちが言い寄るが、ジプシーの女工カルメンは全く相手にしない。カルメンは、女工たちに興味を示さない衛兵(竜騎兵)伍長のドン・ホセに花を投げつけ、気を引こうとする。ドン・ホセの婚約者であるミカエラが現れ、ドン・ホセに故郷の彼の母親からの便りを届ける。カルメンはけんか騒ぎを起こし、牢に送られることになる。しかし護送を命じられたドン・ホセは、カルメンに誘惑されて彼女を逃がす。パスティアの酒場で落ち合おうと言い残してカルメンは去る。
1か月後、カルメンを逃がした罪で牢に入れられていたドン・ホセが釈放される。カルメンが、友人2人(メルセデスとフラスキータ)、衛兵隊長スニガと酒場で歌い踊っていると、花形闘牛士エスカミーリョが現れ、カルメンの気を引く。釈放されたドン・ホセが酒場に着くと、カルメンはドン・ホセのために歌って踊り、密輸団の仲間になるよう誘う。カルメンの色香に迷ったドン・ホセは、婚約者ミカエラを振り切ってカルメンの元に行き、上司とのいさかいのため、密輸をするジプシーの群れに身を投じる。しかし、そのときすでにカルメンの心は闘牛士エスカミーリョに移っていた。
冒頭で、ジプシーの女たちがカードで占いをする。カルメンが占いをすると、不吉な占いが出て結末を暗示する。密輸の見張りをするドン・ホセを、婚約者ミカエラが説得しに来る。闘牛士エスカミーリョもやってきて、ドン・ホセと決闘になる。騒ぎが収まったあと、思い直すように勧めるミカエラを無視するドン・ホセに、ミカエラは切ない気持ちを一人独白する。カルメンの心をつなぎとめようとするドン・ホセだが、カルメンの心は完全に離れていた。ミカエラから母の危篤を聞き、ドン・ホセはカルメンに心を残しつつ、盗賊団を去る。
ホセが盗賊団を去って1か月後、エスカミーリョとその恋人になっているカルメンが闘牛場の前に現れる。エスカミーリョが闘牛場に入ったあと、一人でいるカルメンの前に、ドン・ホセが現れて復縁を迫り、復縁しなければ殺すと脅す。ドン・ホセの執拗な言動にカルメンは業を煮やし、それならば殺すがいいと言い放つ。以前彼からもらった指輪を外して投げつける。逆上したドン・ホセはカルメンを刺し殺し、その場で呆然と立ちつくす。
音楽・音声外部リンク | |
---|---|
齋藤秀雄指揮、新交響楽団演奏(日本コロムビア社発売) カルメン第3幕への間奏曲 - 歴史的音源(国立国会図書館デジタルコレクション) |
など
第1幕への前奏曲が独立した管弦楽曲として演奏される機会が多いほか、それを含む前奏曲、間奏曲、アリアなどを抜粋編曲した組曲や独奏曲も演奏される。
一般的に『カルメン』組曲として知られているのは、ギローの手による編曲でシューダンス社から刊行された、またオーストリアの音楽学者フリッツ・ホフマンがギローの補作をもとにほぼ同じ選曲をしてブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から刊行された「第1組曲」と「第2組曲」である。
ビゼー自身によるものでないこともあり、指揮者によっては演奏順を変えたり、第1・第2組曲を1つの組曲として演奏したり、2つの組曲から適宜選曲してオリジナルの組曲を編むことも自由に行われている。入手しやすいCDで上述の曲順通りに演奏しているものは、シャルル・デュトワ指揮・モントリオール交響楽団だけである。レナード・バーンスタイン指揮・ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏は上述の全曲を収録しながら、第1組曲にて一部の曲順を入れ替えている(第1組曲を締めくくるはずの「闘牛士」=第1幕への前奏曲の前半部分を、組曲の冒頭へ持ってきている。そのためバーンスタイン盤の第1組曲は「アルカラの竜騎兵」にて締めくくられる)。
出版譜によっても異同があり、例えば日本楽譜出版社のミニスコアでは、「セギディーリャ」が第2組曲の終曲とされ(第1組曲は前奏曲と間奏曲のみで構成される)、また第2組曲は「夜想曲」を欠く。
旧ソビエト連邦の作曲家シチェドリンが1967年に編曲した、13曲で構成されるバレエ組曲。大規模な弦楽オーケストラと、ラテンパーカッションなども含む大量の打楽器を使う異色の編曲である(楽器編成参照)。ビゼーのほかの作品(『アルルの女』の「ファランドール」など)が挿入されているほか、「アルカラの竜騎兵」が3拍子に変更されている、「闘牛士の歌」の「サビ」がなかなか出てこないなど、さまざまな仕掛けがなされている。
曲の始まり(序奏)は、弦楽器のppの持続音の上に、チューブラーベルズ(チャイム)が「ハバネラ」の旋律の断片を暗示するというもので、「編曲」というよりは、ビゼーの『カルメン』の素材を借りたシチェドリンの創作に近い。この印象的な序奏は組曲の最後にも登場し、曲全体はチューブラーベルズの余韻と、弦楽器のpppによる変ニ長調の和音で終わる。
1967年に『カルメン』をモチーフにしたバレエが上演されることになり、主演のプリマドンナだったマイヤ・プリセツカヤは最初ショスタコーヴィチに、次いでハチャトゥリアンに編曲を依頼したが、両者とも「ビゼーの祟りが怖い」という理由で断り、仕方なくプリセツカヤの夫であったシチェドリンが編曲することになった。肝心のバレエの初演はブレジネフらの横槍もあって大失敗したが、のちに国外で評価されるようになった。
シチェドリン版と原曲とでは名前に差異がある。英語がシチェドリン版での曲名で、日本語が原曲の該当する部分である。
モートン・グールドが全曲から20曲の名旋律を取り出し、自身による編曲を施した演奏時間50分弱の抜粋版を作っている。グールド版は組曲ではなく「オペラの短縮版」と位置づけられており、声楽部分はコルネットとバリトン(バリトン・ホルン)各2に割り当てられている。
ホセ・セレブリエールが全曲から12の場面を選んで管弦楽のために再構成した。
『カルメン』の名旋律を使った『カルメン幻想曲』と呼ばれる作品がいくつかある。
また、エドゥアルト・シュトラウス1世が名旋律をたばねたカドリールを作曲している。『カルメン』の上演が初めて成功したのは1879年のウィーンでの上演だとされており、その人気にあやかったものと言われている。
ほかに、ピアニストのウラディミール・ホロヴィッツが『カルメンの主題による変奏曲』を作曲している(正確には、モーリッツ・モシュコフスキによる『ジプシーの歌』の編曲を基にしている)。
当初ビゼーは、メリメの原作に忠実な台本を望んだが、主人公が盗賊である、殺人によって劇が締めくくられるなどの内容がオペラ・コミックを上演する劇場にふさわしくないと劇場側から拒否され、やむなく原作から大幅な改変がなされた。結果としてこの改変が功を奏し、今日まで続く人気につながっているとみることもできる。おもな相違点は以下の通りである。
日本での初演は1919年(大正8年)、来日したロシア歌劇団によって行われた[4][5]。『カルメン』は大正8年1月に新劇として松井須磨子が演じ、公演期間中に自殺したことで知られていたほか、浅草オペラでは1918年(大正7年)3月に河合澄子を主演にビゼーの『カルメン』を漠与太平が編作した『カーメン』や、高木徳子主演の『カルメン物語』(伊庭孝脚色)、1919年(大正8年)12月に長尾史録脚色による2場だけのものが上演されていたが、いずれも原曲とはかなり異なったものであった[6]。
ほぼ全曲をオリジナルに近い形で上演したのは1922年(大正11)年3月の根岸大歌劇団による金竜館公演で、カルメンを清水静子、ホセを田谷力三が演じたほか、清水金太郎、安藤文子、柳田貞一、相良愛子、二村定一らが出演、これが大きな反響を呼んだことから以後、浅草オペラを代表する作品となった[7]。同年にはジェラルディン・ファーラー主演の無声映画『カルメン』も日本で初公開され、「闘牛士の歌」(トレヤドール)は自転車に乗った御用聞きによって口ずさまれるほど馴染みのある曲となった[5]。
戦後は藤原歌劇団によって数多く上演され、二期会でも川崎静子が大きな当たり役とし、今日もなお日本国内でもっともポピュラーなオペラとして親しまれている。
ビゼーの音楽を使用し、ローラン・プティによる振り付けによるものが1949年にロンドンのプリンス劇場 (Shaftesbury Theatre) で初演されている[1]。
アルベルト・アロンソの振付、ロディオン・シチェドリンの編曲による『カルメン組曲』が1967年、モスクワのボリショイ劇場で初演されている[1]。カルメン役はマイヤ・プリセツカヤが演じた。
マッツ・エックの振り付けで、シチェドリン編曲の「カルメン組曲」を用いたものが1992年にクルベリ・バレエ団 (Cullberg Ballet) で初演されている[8][9]。
『カルメン・ジョーンズ』はオスカー・ハマースタインによるミュージカルで、1943年に初演された[10]。ビゼーのオペラを元に、舞台を第二次世界大戦中のアメリカ南部の黒人社会に置き換えたもの[10]。登場人物もすべて黒人に変え、オーケストレーションをロバート・ラッセル・ベネットが変更し、曲順にも変更を加えられている。
この舞台を元に1954年、映画『カルメン』(原題:Carmen Jones)が制作されている。
1989年、青山劇場で公演。大地真央がカルメン役で、他に萩原流行、紺野美沙子、榎木孝明らが出演。1999年に再演され、大地真央の他は、錦織一清、石井一孝、鈴木ほのか、江波杏子、近藤洋介、宮川浩らが出演した[11]
この節の加筆が望まれています。 |
ノーマン・アレンの脚本、フランク・ワイルドホーンの音楽、ジャック・マーフィーの歌詞による。2008年10月、プラハで初演。
2014年6月13日 - 6月29日にかけて、ホリプロ主催による日本初公演が天王洲 銀河劇場で行われた[12]。演出は小林香。主演のカルメン役は濱田めぐみで、他に清水良太郎、米倉利紀、大塚千弘、JKim、香寿たつき、別所哲也が出演した。
TSミュージカルファンデーションの企画制作によるミュージカルで、2008年初演、演出・振付は謝珠栄、脚本は小手伸也、音楽・歌唱指導は林アキラ、出演は朝海ひかる、天宮良、今拓哉、戸井勝海、宮川浩、友石竜也、野沢聡、平野亙、良知真次、東山竜彦、三浦涼介[13]。
上記のCalliを元に台本と音楽を一新したミュージカルで、2018年初演、演出・振付は謝珠栄、カルメンを花總まり、ホセを松下優也、ホセの上司スニーガを伊礼彼方、カルメンの夫ガルシアをKENTAROが演じた他、太田基裕、福井晶一、団時朗らが出演した[14]。
月組公演[15][16]。公演名は「ミュージカル・プレイ 激情」[15]、併演は『タイム・マップ』[15][16]。宝塚大劇場で1971年2月27日から3月24日まで上演された[15]。20場[15]。
スタッフ
おもな出演・本公演
1971年10月9日から10月18日まで中日劇場でも公演された[16]。
1971年3月13日に行われた新人公演では榛名由梨[15]、小松美保[15]、叶八千矛[15]、麻生薫[15]、涼千夏[15]らが出演した。
1999年初演、メリメの小説「カルメン」をモチーフとし、脚本は柴田侑宏 演出・振付は謝珠栄による[18]。
オペラ「カルメン」を元に、主人公を男、舞台をアメリカに置き換えた作品で、2000年に宝塚バウホール、日本青年館で宙組による公演が行われた。出演は樹里咲穂、遠野あすか、夢輝のあ等、脚本・演出は木村信司[19][20]。
2018年の「カルメン2018」はビゼーのオペラを日本舞踊でアレンジした作品で、ホセ役を花柳寿楽と中村橋之助、カルメン役を水木佑歌と市川ぼたんのダブルキャストで演じた[21]。日本舞踊版のカルメンは他に、1987年に「カルメン」、2003年に「薔沙薇の女 〜カルメン2003〜」が上演されている[21]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.