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エレクトロン (ロケット)

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エレクトロン (ロケット)
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エレクトロン (Electron) は、アメリカニュージーランドの企業であるロケット・ラボ社が開発した人工衛星打ち上げ用の小型液体燃料ロケットである。民間の小型衛星を打ち上げる目的で開発された。打ち上げ費用は750万ドル[2]低軌道 (LEO) に300kgの打ち上げ能力を持つ[3]

概要 エレクトロン (Electron), 基本データ ...
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設計

軽量化のため、ロケット本体は炭素繊維強化プラスチック (CFRP) で製作されている。低軌道 (LEO) に300kg、高度500kmの太陽同期軌道 (SSO) に150kgのペイロードを投入する能力を有する[注 1][3]

1段目・2段目のメインエンジンにはいずれも自社製のラザフォードエンジンを使用する。ラザフォードエンジンは衛星打ち上げロケット用としては史上初となる電動ポンプサイクルを採用しており、電源としてリチウムイオンポリマー二次電池を、電動ポンプとして直流ブラシレスモータにより駆動するターボポンプを使用している[6]。推進剤はケロシン (RP-1) と液体酸素 (LOX) である。また、エンジンの主要部品は専用の3Dプリンターで作られている[7]

ペイロード部はブースター部から切り離し可能としており、ペイロード部に貨物を搭載し封印してから数時間程度で再びブースター部に結合できる[6]

1段目・2段目の他にキックステージと呼ばれるオプションの3段目も開発されている。キックステージには再点火可能なキュリーエンジンを使用する。このキックステージは後にフォトン英語版という小型宇宙機へと拡張されており、フォトンを使用した場合最大180kgのペイロードをLEO以遠のより複雑な軌道に投入可能となる[4]

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射場

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2016年建設当時のニュージーランドのロケット・ラボ第1発射施設英語版

エレクトロンは主にニュージーランドマヒア半島英語版にあるロケット・ラボ第1発射施設英語版で打ち上げられている[8]。この場所が選ばれたのは、人口密集地から離れており高頻度の打ち上げが可能と見込まれたためだった[8]。ロケット・ラボは、ロケット本体だけでなくこの発射施設も民間資本で開発しており、これは軌道宇宙飛行の全要素を民間で実現した初めての例である[注 2][8][9]

2018年10月、ロケット・ラボは将来の二つ目の発射施設としてアメリカバージニア州ワロップス飛行施設にある中部大西洋地域宇宙基地 (MARS) を選択した[10]。第2発射施設での打ち上げは2023年1月より開始されており[11]、こちらは米政府関連の打ち上げに用いることが想定されている[12]

打上げ

要約
視点
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第1発射施設から打ち上げられたエレクトロン11号機

エレクトロンは2017年5月の初打ち上げ以後、31回の打ち上げを行っている(成功28回、失敗3回)。"It's a Test"と名付けられた最初の試験飛行は地上の通信設備の不具合で失敗したが、その後の"Still Testing", "It's Business Time", "This One's For Pickering"の打ち上げでは複数の小型衛星を低軌道に投入成功した[13][14]2019年8月の"Look Ma, No Hands"では4基の小型衛星の軌道投入に成功[15]、10月の"As the Crow Flies"ではキックステージを使用して高度400kmのパーキング軌道への投入に成功した[16]。しかし2020年6月の13回目の打ち上げは試験飛行以来となる打ち上げ失敗に[17]、また翌2021年5月の20回目の打ち上げも失敗している[18]

主な打ち上げ

"It's a Test"

"It's a Test"は、2017年5月25日に行われたペイロードなしの試験機の初打ち上げ。ロケットの上段は衛星軌道に乗らず弾道飛行に終わったものの、それ以外の技術的な実証はすべて成功に終わり、今後の進展に向けて充分な結果が得られた[19]。予定された軌道は近地点300km、遠地点500km、軌道傾斜角83°の楕円軌道だった。失敗原因の究明には約2か月が費やされた。発表によれば、高度224km時点で地上設備のミスによりテレメトリ異常が検出されたため、安全のために飛行を中断したという。これはソフトウエアで容易に修正可能な問題であり、2号機以降に生かされることになった[20]

打ち上げ実績

さらに見る No, 打上日時 (UTC) ...
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再使用

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エレクトロンの打ち上げから回収までの流れ

エレクトロンは使い捨て型ロケットとして開発されたが、2019年8月には将来的に1段目の回収・再使用を行う計画が発表されている。この計画では、打ち上げ後の1段目はそのまま自由落下した後、パラフォイルを展開。減速したところをヘリコプターで空中回収する。ロケット・ラボでは、再使用を打ち上げコストの削減ではなく、打ち上げ頻度を向上させる目的で行うとしている。[59]

その後、洋上にパラシュートで着水したものではあるが、2020年11月20日に打ち上げた16号機で同社としては初めて第一段機体の回収に成功した。民間企業としては世界で2社目となる。[35]

2022年5月2日打ち上げの26号機では初めてヘリコプターによる第一段機体の空中捕獲にも成功した。ただし予期せぬ負荷により念のため切り離され、回収は従来通り洋上着水後となった。[41] 2023年8月23日打ち上げの40号機では、26号機で回収したエンジンのうち1基を再使用しての打ち上げが行われた[60]

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脚注

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関連項目

外部リンク

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