氷と炎の歌 の物語は、おもにウェスタロス大陸が舞台である。その広さは南アメリカ大陸にほぼ等しい。しかし、極度の低温と、〈野人〉(〈野性人〉)として知られる敵意に充ちた住民のために、極北の地は未踏のままである。北部は南部よりも人口が少ない。
〈征服戦争〉の前は七つの独立した王国に分かれていたが、 ターガリエン家 の主権のもとに統一され、各領域はそれぞれ一つの名家によって統治される。統一後も、これらの領域はまとめて七王国と呼ばれる。七王国の社会は封建社会であり、大小の領主が支配地の領民から税を取り立てる。これらの領主は各領域の支配的な名家に忠誠を誓う旗主となる。
七王国の統治は、現代の内閣にあたる常設の小評議会が王のもとで統治する。小評議会の成員は固定ではないが、王自身のほか、首相にあたる〈王の手〉、法相、蔵相、海相、スパイの頭、グランド・メイスター、〈王の盾〉総帥などが参加する。重要な議題を決定する際には、まれにウェスタロス中の貴族を招集した大評議会が開かれることもある。
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以上の九つの領域がいわゆる七王国である。正確に言えば、七王国とはターガリエン家にかつて統治された土地を指し、大陸を指すウェスタロスと同義語ではない。七王国は大陸の大半を占めるが、〈壁〉 の向こうの極北の地はウェスタロスではあっても七王国の一部ではない。
ウェスタロスは、何年も続くがその長さは予測できないという、不規則な季節に苦しめられている。氷と炎の歌 の序盤において、ウェスタロスは10年も続く夏を満喫していたが、同じくらい長く厳しい冬が来ると恐れられている。
七王国においては、結婚は神聖なものであり、結婚によらない私生児は厳しく差別され、高貴な生まれの私生児は各領域で定められた姓を名乗らされる。
北部
原作者は北部をスコットランドに例えている
ウェスタロスの北半分であり、ウィンターフェル のスターク家 によって治められている。北部は他の六王国を合わせたほど広いが、人口は希薄である。雪が降り、冬の気候は厳しい。
ホワイト・ハーバーの街は繁栄した港として描かれている。北部の北の境は、アリセーン女王によって〈冥夜の守人〉(〈夜警団〉)に永久に与えられたニューギフトであり、南北50リーグ(240キロメートル)ほどの幅で東西に広がる。
ネック(地峡)の湿地が北部と南部の境界である。ネックの沼地には、小柄な湖上生活者が住み、スターク家の旗主(旗手)である〈灰色沼の物見城〉(グレイウォーター・ウォッチ)のリード家に治められている。狭く通行困難な土地であり、難攻不落のモウト・ケイリン城も備えるがゆえに、この地域は自然境界であり、南部からの侵略に対する防衛線となっている。このため、北部は〈最初の人々〉の習慣を色濃く残す土地となる。北部に生まれた高貴な私生児は、“スノウ”姓を与えられる。
その他の主な城はボルトン家のドレッドフォート、スターク家の親戚であるカースターク家のカーホールド、トールハート家のトーレンズスクエア、アンバー家の〈最後の炉端城〉(ラスト・ハース)、グローヴァー家の〈森林の小丘城〉などである。
壁
〈壁〉はイングランド北部のハドリアヌスの長城 に発想を得ている
七王国の北の境界にある巨大な石と氷と魔法の壁。伝説によれば、北からの脅威から七王国を守るために、8000年前にブランドン建設王ひきいる〈最初の人々〉により、巨人の助けを得て作られる。480kmの長さにおよび、平均した高さは210mほどであるが、所によっては270mの高さにもなる。〈壁〉の上は10mほどの幅があり、12人の騎士が並んで進めるほどである。
〈壁〉の北側には七王国の法が及ばない。〈誓約の兄弟〉とも呼ばれる〈冥夜の守人〉 が〈壁〉を守備し、北の脅威から人間の領域を守る。もともとは超自然的な〈異形〉(〈異形人〉)から〈壁〉を守っていたが、後には〈壁〉の北に住む、七王国の刑罰や徴税から逃れた自由民とその子孫である〈野人〉から守るようになる。物語が進むにつれて、〈異形〉 と、〈異形〉によって死から引き戻され操られる〈亡者〉が真の敵として再び姿を現す。
〈壁〉の南にはギフト 、ニューギフト と呼ばれる細長い土地がある。〈冥夜の守人〉はこの土地に補給を頼る。北部に境界を接しながらも、〈壁〉とギフト、ニューギフトは七王国から法的に独立しており、法の及ばない土地である。〈壁〉の防衛の補給のため、〈冥夜の守人〉はギフトの管理を数千年間続けており、ターガリエン家 がウェスタロス を征服して七王国を統一した時に、ターガリエン家に名目上の忠誠を誓わせただけで、〈冥夜の守人〉にギフトの管理を続けさせ、後にニューギフトを加増する。しかし、物語の時点では住人がいない。
冥夜の守人
〈冥夜の守人〉は土地と称号を持たず、妻や子を持たず、家族との絆を断ち切り、七王国の争いには関わらず、脱走しないことを誓う。誓いを破ることは死罪に値する。〈冥夜の守人〉は黒い衣だけをまとうため、〈冥夜の守人〉に加わることを“黒衣を着る”とも言われ、蔑称として〈鴉〉とも呼ばれる。〈冥夜の守人〉に参加することは今でも名誉だと考えられ、身分にかかわらず〈冥夜の守人〉の中の階級を登ることができる。だが近年は、七王国の防衛のために志願する者は少数となり、ほとんどが七王国から追放された犯罪者や裏切り者からなる弱体化した集団となっている。最後に〈異形〉が現れてから数千年が経過したため、七王国においては警戒心が薄れており、〈壁〉の防御は弱まっている。〈守人〉の員数は減り、〈壁〉に沿う19の城のうち、もはや〈黒の城〉 、〈海を望む東の物見城〉(〈海辺の東方監視所〉)、〈影の塔〉の3城にしか守備隊がいない。〈野人〉は〈壁〉を通り抜けられないが、登って越える者、あるいは船で沿岸を迂回する者がいる。〈守人〉の新入りにはそれぞれ役割が与えられる。〈工士〉 は壁を補修し、武器を作る。〈雑士〉 は日常の雑事を行う。〈哨士〉 は戦いと偵察を行う。
壁の向こう側
ドラマシリーズのシーズン2では〈壁〉の向こう側のシーンをアイスランド のヴァトナヨークトル氷河 で撮影した
『王狼たちの戦旗 』では〈壁〉 の向こう側が描かれるが、最初の五部ではそれほど詳しく描かれていない。だが最後の二部ではより詳しく〈壁〉の向こう側が描かれる予定である。ドラマシリーズではアイスランド で〈壁〉の向こう側の撮影が行われたが、原作者によれば〈壁〉の向こう側はアイスランドよりも大きく、グリーンランド よりも大きい。〈壁〉の近くには木の密生する森が広がるため、カナダ のような環境である。北に向かうにつれて景観は変わり、ツンドラと氷原が見られるようになり、極地方の環境となる。片側には平原があり、別の側には高い山々がある。
〈壁〉の向こう側には〈野人〉 が住む。〈野人〉は〈最初の人々〉、および七王国の刑罰や税から逃れた自由民の子孫である。〈野人〉はしばしば〈壁〉を襲撃し、また〈壁〉を通ってその南の七王国に向かおうとするため、これを阻止することが〈冥夜の守人〉の主たる任務となっている。〈冥夜の守人〉はしばしば〈壁〉の北を偵察し、〈野人〉の動向を探る。〈野人〉の中には、クラスター など、〈冥夜の守人〉と友好関係を保つ者もいる。
〈壁〉の向こう側には、かつて〈最初の人々〉および〈森の子ら〉 と戦った〈異形〉 も住むと伝えられるが、物語の開始時点では、数千年間も姿を見られていない。
ウィンターフェル
古からのスターク家 の本城。冷涼な北部にあるため、城の下にある温泉から温水を壁の中に通して暖房している。城の地下深くには地下墳墓があり、スターク家の先祖が葬られている。墓には彫像がおかれ、足元には大狼 が、手には剣が握られている。代々のウィンターフェル公と、〈征服戦争〉前の〈北の王〉が葬られている。
鉄諸島
鉄(くろがね)諸島はウェスタロス大陸の西岸沖の〈鉄人の入江〉(〈鉄人の湾〉)にある荒涼たる7つの島-パイク、グレート・ウィック、オールド・ウィック、ハーロー、ソルトクリフ、ブラックタイド、オークモント-からなる。これらの島の居住者たちは、ウェスタロス人からは〈鉄(くろがね)人〉と呼ばれ、みずからは〈鉄諸島生まれ〉と名乗っている。気候は風が強く、冷涼で湿気が多い。〈鉄人〉達は、あきらかにヴァイキング をモデルとしており、その船はロングシップ と呼ばれる高速船である。
パイクのグレイジョイ家 が最上位の領主家である。グレイジョイ家は、〈征服戦争〉中にハレン暗黒王(色黒王)の血統が絶えた後、〈鉄人〉たち自身によって選ばれる。エイゴン征服王の到来以前には、〈鉄人〉たちはリヴァーランド と、ウェスタロス の西岸の大部分を占領する。〈鉄人〉たちは海上では勇猛であり、その海軍は比類なき強さを誇り、西部および南部沿岸への襲撃は、“海の恐怖”として恐るべき評判を今も保っている。かつてアンダル人は鉄諸島を侵略し、現地の人間と通婚する。子孫はアンダル人の〈七神正教〉 (〈七柱の神々〉の宗教)を信仰することを止め、〈溺神〉 (溺れた神)を信仰するようになる。鉄諸島の高貴な私生児は“パイク”姓を与えられる。
主な城としてテン・タワーズなどがある。
パイク
北アイルランド のBallintoyでパイクのシーンが撮影された
長年鉄諸島を治めて来たグレイジョイ家 の本拠。パイク島の岩がちの半島の先端に作られている。〈五王の戦い〉以後、パイクの玉座は〈海の石の御座〉(海の石の玉座)と呼ばれる。止むことなく打ちつける波の衝撃が、もともとパイク城が建っていた岩を砕いてしまったため、今や城は、本島に建つ主城と海の中の岩に建ついくつもの小さな塔に分断されている。これらの塔は岩の城や揺れるロープの吊り橋でつながれている。ローズポートは島のもう一方の端にある村で、ボトリー家の城が見下ろす位置にある。
グレイジョイ家の反乱の際、ローズポートとボトリー家の砦はロバート・バラシオン によって破壊され、パイクは包囲され征服される。ベイロン・グレイジョイ はパイク公として残されたが、その息子のシオン は人質としてエダード・スターク に里子に出される。反乱の後に、ローズポートは神殿を除いて再建され、ボトリー公は、以前の木材と編み枝の城の代わりに石造りの小城を建てる。
リヴァーランド
トライデント河流域に広がる肥沃で人口の多い土地。ウェスタロス の9つの領域のひとつではあるが、8番目の王国となることはなく、他の王国の支配下にあることが多い。西部 、王室領 、アリンの谷間 、そして北部 に囲まれ、自然障壁がないために、しばしば攻め込まれて戦争が起きる。物語の当初、この地域の最上位の領主はリヴァーラン のタリー家 である。古の〈川の王〉の没落の後は、さまざまな南部の王国に支配され、エイゴン征服王による〈征服戦争〉の時には鉄諸島 のホア家のハレン暗黒王に支配されている。タリー家 は、ハレン暗黒王に背いてエイゴン征服王を選んだ反逆者の貴族であり、その褒賞として最上位の領主の地位を与えられる。リヴァーランドで生まれた高貴な私生児は“リヴァーズ”姓を与えられる。
主な城としてリヴァーラン 、シーガード、メイドンプール、双子城 、〈ハレンの巨城〉 (ハレンホール)などがある。
ハレンの巨城
ウェスタロスの中央部の湖である〈神の目〉の北岸に位置し、当時リヴァーランドをも支配していた鉄諸島のハレン暗黒王によって、史上最大の城として建設される。黒い石を使って建設され、5つの巨大な塔と一軍を入れられるほどの大広間をそなえ、ハレンの傲慢さの記念碑となっている。だが工事を終えた直後にエイゴン征服王の侵略が始まる。エイゴンのドラゴン の前では、分厚く高い壁も役に立たず、ドラゴンの炎は、城の石を粉砕して溶かし、ハレンとその息子たちを殺す。ハレンの血統は絶え、その王国は征服される。
ハレンの破滅の後、この城は様々な家によって所有される。悲惨な末路を迎えた居住者が多かったため、城には呪われていると言う悪評がつく。このように巨大な城を維持し兵を配置することは、兵站的にも経済的にも困難であり、〈ハレンの巨城〉は無用の長物となる。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の時代には、ほぼ廃墟となってはいるが、ストロング家が領主となり城代を置いている。内戦〈双竜の舞踏〉では、デイモン・ターガリエンがこの城にリヴァーランドの諸侯の兵を集める。
〈五王の戦い〉の初め、〈ハレンの巨城〉は荒れ果て、城のごく一部だけが手入れされている。タイウィン・ラニスター がこの城を奪ったとき、サーセイ 王妃は所有権をジャノス・スリントに与えるが、弟で〈王の手〉のティリオン・ラニスター は即座にこの報酬を取り上げ、スリントを〈壁〉 に送る。タイウィンは代りに城をピーター・ベイリッシュ (ベーリッシュ)に与え、それ以来、彼が名目上の所有権を保持しているが、一度も足を踏み入れたことはない。
戦争が進むにつれて、〈ハレンの巨城〉には次々と所有者が現れ、幾度となく残虐行為が行われる。〈勇武党〉(〈勇敢組〉)の傭兵たちが城のラニスター家 の守備隊を裏切った後、ルース・ボルトン が城を乗っ取る。ボルトンが城を捨てた後は、グレガー・クレゲイン が〈勇武党〉を粉砕して城をラニスター家に取り戻す。
リヴァーラン
〈征服戦争〉以来リヴァーランド 公であるタリー家 の古からの本拠地。タンブルストーン川がトライデント河の赤の支流に流れ込む土地の突端にあり、砂岩を使って建てられた、三角形の城である。城を大きな船に例える者もいる。正門の他にも、〈水車の塔〉からの水路を通って、タンブルストーン川からリヴァーラン城に入ることも可能である。城の二つの側面はタンブルストーン川と、トライデント河の赤の支流に面するが、第三の側面は巨大な人工の濠であり、城が攻められた時には水が入れられる。リヴァーランで最も高いのは巨大な物見の塔であり、ここからは何マイルも先の敵を発見することができる。川と濠による防御と相まって、リヴァーラン城は難攻不落である。
リヴァーランはロブ・スターク が北の王に即位した場所である。古の北の王国には属していなかったトライデント河流域の諸公も、ロブ王を支持し、軍と城を提供する(ただし、ウォルダー・フレイ は例外である)。五王の戦いの当初、ジェイミー・ラニスター (ジェイム・ラニスター)は大軍でリヴァーランを包囲するが、〈囁きの森の戦い〉でロブ・スタークに敗れて捕虜となり、その軍は殲滅される。後にタイウィン・ラニスター がリヴァーランドを再び攻めようとした時、エドミュア・タリー がその襲撃を退けてリヴァーランを守る。しかし、〈釁られた婚儀〉(〈血染めの婚儀〉)でロブ王が死んだ後、ラニスター家 とフレイ家は再びリヴァーラン城を包囲する。サー・ライマン・フレイがエドミュア・タリー公を人質にとっていたにもかかわらず、ラニスター家とフレイ家の争いのため、包囲は無秩序で、不首尾となっている。ジェイミー・ラニスターが来て、捕虜のエドミュア公と降伏案を交渉するまで、サー・ブリンデン・タリー“ブラックフィッシュ” は包囲軍に抵抗することが出来る。だがエドミュア公は、ジェイミーに攻められて城内の軍勢を皆殺しにされるよりは、城を明け渡すことを選ぶ。そしてリヴァーランは、ラニスター家の同盟者であるエンモン・フレイの弱々しい手に渡る。
双子城
緑の支流にかかる石造りのアーチ橋で結ばれた、堅固に防御された二つの城。橋は二台の馬車がすれ違えるほど広く、〈水の塔〉として知られる中央の塔によって警備されている。双子城は600年以上もフレイ家の本拠であり続け、ここにある関門橋(渡り場)を通らなければ数日間も回り道をしないと川を渡る事が出来ない。高額な渡し賃によりフレイ家は富裕であり、多くの一族を抱える。フレイ家はタリー家 に臣従する家の中では最も強力であり、1000人の騎士と3000人の歩兵を戦争に送り、なおかつ少なくとも400人の守備兵を双子城に残すことができる。だが、過去においてフレイ家の忠誠心は疑問とされ、現在の家長であるウォルダー・フレイ 公は遅参公とも呼ばれ、怒りっぽく高慢な老人として知られている。
〈五王の戦い〉の間、フレイ家は〈北の王〉のために〈鉄の玉座〉に反抗して立ち上がる。この反抗は、フレイ家の娘とロブ・スターク の婚約を条件とする。しかし、ロブ・スタークがウェスタリング家の娘と結婚して婚約を破った後、ウォルダー・フレイ公はこの侮辱に対する復讐を計画する。フレイ公は、エドミュア・タリー 公と自らの娘のロズリン・フレイとの結婚を整える。ドレッドフォートのルース・ボルトン 公およびタイウィン・ラニスター 公と陰謀をめぐらし、傭兵と騎士に楽師を装わせる。婚儀の最中に、“楽師”は、王の母である レディ・キャトリン(ケイトリン)・スターク を含む王の家族と支持者たちを殺し、リヴァーラン公エドミュア・タリーを捕虜とする。王は斬首され、代わりにそのダイアウルフの頭を縫い合わされて引き回される。この事件は〈釁られた婚儀〉として知られるようになる。最も神聖な客の権利を侵害されて多数の北部人が殺されたため、フレイ家は北部では憎悪され、その他の地域でも軽蔑されることになる。
アリンの谷間
ほぼ完全に月の山脈(月の山)によって囲まれた肥沃な谷。西はリヴァーランド に隣接する。アンダル人貴族の中でも最古の血統であり、エイゴン征服王以前には〈山と谷間の王〉であったアリン家 に統治されている。その本拠地高巣城 (アイリー)は、山の上にあり、小さくとも難攻不落である。谷間への道は、がけ崩れと〈暗闇猫〉と〈山の民〉によって危険な峠道である。峠道は四人の騎手しか通れない細い道となり、谷間の唯一の入り口であり、二つの監視塔に挟まれた〈血みどろの門〉につながる。山に囲まれているため、谷の気候は穏やかであり、肥沃な平地と森を有する。山の雪解け水は凍ることのない急流〈アリッサの涙〉となり、豊かな水を谷間にもたらす。肥沃な黒土と、緩やかな流れの川と、数百の小さな池がある。最高峰は5600mにもなる〈巨人の槍〉である。谷間で生まれた高貴な私生児は“ストーン”姓を与えられる。
主な城としてガルタウン、ストロングソングなどがある。
高巣城
ノイシュヴァンシュタイン城
ドラマシリーズではギリシャ のメテオラ の映像が高巣城のシーンのCG合成に利用された
アリン家 の古からの本拠。ノイシュヴァンシュタイン城 に着想を得ている。[1] 城は〈巨人の槍〉として知られる山の上にあり、ラバ のための細い道でしか行くことが出来ず、〈月の門〉と3つの小さな関門-石城砦、雪城砦、空城砦-で守られている。
高巣城は巨城と呼ばれる城の中では最小であり、7つの細い塔からなっている。あらゆる食料は下の谷間から運んで来られる。最も上にある関門である空城砦からは巨大なリフトが備えられている。ライサ・アリン (リサ・アリン)など多くの者が、山に囲まれた高巣城は難攻不落だと主張するが、冬は雪で城への補給が不可能になるため、永久に難攻不落であるわけではない。高巣城の牢は〈天空房〉(〈空の独房〉)として知られ、極めて悪名高い。冷たい空に向かって開け、床は外に向かって傾き、囚人たちは寝ている間に滑って端から落ちてしまうことを恐れる。多くの囚人たちが、囚われの身でいるよりも自殺することを選んだ場所である。高巣城での処刑は、広間の〈月の扉〉から山の岩までの身もよだつような600フィート(180メートル)の落下である。〈神々の森〉がないことも高巣城の特徴である。
ジョン・アリン の居城であったが、ジョンは〈簒奪者の戦争〉の前に、エダード・スターク とロバート・バラシオン を里子として育てる。ジョンはターガリエン家 に対抗して旗を上げた最初の者である。戦争の後、ジョンはロバート・バラシオン一世王の〈王の手〉として仕える。ジョンが暗殺された後、その妻ライサは病気がちの息子ロバート (ドラマシリーズではロビン・アリン)を連れて再び高巣城に逃げこむ。〈五王の戦い〉の間、ライサはどの王位宣言者とも同盟しないが、ピーター・ベイリッシュ が彼女と結婚することを承知したために、ラニスター家 と同盟することに合意する。ピーターの私生児の娘を装っていたサンサ・スターク をライサが殺そうとした時、ピーターはライサを殺し、病気がちで発育が遅れたロバートの守護代および摂政として高巣城を治める。
西部
リヴァーランド の西、河間平野 (リーチ)の北にある土地。かつて〈岩の王国〉の王であった、キャスタリーロック のラニスター家 によって治められている。この地域の人々は西部人と呼ばれる。西部(ウェスターランド)には貴金属が豊富であり、これがラニスター家の富の源泉となっている。西部で生まれた高貴な私生児は“ヒル”姓を与えられる。
キャスタリーロック
キャスタリーロックはジブラルタルの岩 から着想された
港湾都市ラニスポートとその向こうの海を見下ろす山を刻んで作られた砦であり、ラニスター家 の古からの本拠地である。伝説によれば、ラン利発王として知られる英雄がキャスタリー家を騙してロックを諦めさせ、自分の物にしたことになっている。ロック城は七王国の中でも最も強固な城の一つとして名高い。〈五王の戦い〉以前はタイウィン・ラニスター 公が所有していたが、その死後は、摂政太后(摂政女王)サーセイ・ラニスター が従兄の一人を城代としている。
ジョージ・R・R・マーティン は、キャスタリーロックはジブラルタル の岩から着想を得たと自身のブログの中で述べている。
ラニスポート
キャスタリーロック の強力なラニスター家 の分家である、ラニスポートのラニスター家により統治される港であり、豊かで繁栄した街である。この街はラニス家などラニスターと類似の家名をもつ小さな分家の故郷でもある。
河間平野
ハイガーデンのタイレル家 (ティレル家)が治める、マンダー河流域の肥沃な土地。エイゴン征服王による征服戦争以前、タイレル家は河間平野(リーチ)の王であったガードナー家の執政である。ガードナー家の最後の王が〈火炎が原〉で死んだ後、タイレル家はハイガーデンをエイゴンに献上し、その報酬としてハイガーデン城と河間平野の最高位の領主の地位を与えられる。河間平野の富と力は豊かな農業生産に由来する。〈五王の戦い〉においては、バラシオン家 と同盟を結んで食糧をキングズランディング に運び込み、飢えた民衆を救ってタイレル家の評判を高める。
ドーンとの境界地方(マーチ、ドーンの辺境)は、河間平野とドーン の国境の北側にあり、タイレル家に忠誠を誓う辺境の諸公たちが居住する。これらの旗主たちは、しばしば南部のドーン家の旗主たちと争いをおこす。河間平野の最も重要な都市はオールドタウン である。河間平野に生まれた高貴な私生児は“フラワーズ”姓を与えられる。
他の主な城としてアシュフォード、ゴールデングローブ、ビターブリッジなどがある。
オールドタウン
ウェスタロス で最大の都市の一つであり、アンダル人の侵略以前に〈最初の人々〉によって建設された最古の都市。アンダル人に反抗せず歓迎することでその侵略を生き延びる。ウェスタロスの南西部の、ハニーワイン川河口が囁きの入江(囁きの瀬戸)とその先の〈日没海〉に向かって開くところに位置する。
助言者、医者、学者、そして通信係として七王国に仕えるメイスター(マイスター)の結社の本拠である、〈知識の城〉(〈大城砦〉)のある都市として最も有名である。〈星の聖堂〉(〈星の神殿〉)は、キングズランディング にベーラー大聖堂が建設されるまでは七神正教 の本拠である。エイゴン征服王がオールドタウンに入り、総司祭(大神官)によって戴冠された時、正式にターガリエン 王朝が始まる。
オールドタウンはまた、七王国で最も重要な港の一つでもある。夏諸島 、自由都市 、その東にある都市、そしてウェスタロス中からの貿易船で常に埠頭がにぎわう。街そのものが美しく、多くの川や運河が、玉石を敷き詰めた道と交差し、息をのむような石造りの大邸宅が林立する。 キングズランディング にウェスタロス最大の都市としての地位は譲り渡しているが、この街にキングズランディングの汚らしさは見られない。
ハイタワー城は街で最大の建物であり、かつウェスタロスで最も高い建造物でもある。これは巨大な階層状の灯台であって、空に向かって800フィート(240メートル)も伸び、頂きには何マイルも先の海上からも見える巨大な篝火が置かれる。ハイタワー城のハイタワー家によって治められている。ハイタワー家は、もとは王であったが、のちにハイガーデンのガードナー家に忠誠を誓い、さらに侵略戦争の後にはタイレル家の家臣となる。ハイタワー家はその忠誠と信念によって知られる。現在の市の統治者はレイトン・ハイタワーである。
オールドタウンは〈五王の戦い〉には巻き込まれなかったが、のちにユーロン・グレイジョイ 王の下で〈鉄人〉が沿岸に大規模な攻撃を仕掛け、〈盾諸島〉とアーバー島の一部を征服し、さらにハニーワイン川の河口を封鎖しようとする。だが埠頭への攻撃は、市の守備隊によって退けられる。オールドタウンはその後も〈鉄人〉からの脅威にさらされ続けている。
ストームランド
キングズランディング とドーン海の間の領域。東はシップブレーカー湾であり、南はドーン海である。エイゴンの征服以前は、〈嵐の王〉によって治められ、その後はターガリエン家 の私生児に始まる家系であるバラシオン家 によって治められる。ドーンとの境界地方も領域内にあり、かつては〈嵐の王〉に征服され、その後はカロン家および下位の諸公に治められている。ドーン が七王国に加わった前世紀までは、ドーンとの境界地方はストームランド、河間平野 、そしてドーンの間の戦場となることが多い。ストームランドで生まれた高貴な私生児には“ストーム”姓が与えられる。
主な城としてイーブンフォールホール、レインウッドなどがある。
ストームズエンド
バラシオン家 の本拠であるが、それ以前は数千年に渡って〈嵐の王〉の古の本拠地である。伝説によれば、〈最初の人々〉の時代の最初の〈嵐の王〉ダランは、海神と風の女神の間に生まれた娘であるエレネイの愛を得る。ダランはエレネイを妻としたが、怒ったエレネイの両親は強力な嵐を送りこんでダランの城を破壊し、婚儀の客と家族を殺す。ダランは神々に宣戦布告 し、シップブレーカー湾に沿って、より大きくより強固な城を次々に建設する。最後の七番目の城は嵐に耐える。これは〈森の子ら〉 (森の子供たち)の助けを得たからであると言われるが、後に〈壁〉を建設したブランドン・スターク少年が、ダランに築城法を教えたからであるとも言われる。その真実は明らかでない。
極めて強固な城であり、七王国の時代には包囲にも嵐にも屈したことはない。その外側の防御は100フィート(30メートル)の高さの巨大な幕壁であり、最も薄い側面でも40フィート (12メートル)の厚さであり、海側の厚さは80フィート(24メートル)近くある。幕壁は砂と瓦礫の内核を二層の石積みが覆っている。幕壁は滑らかで丸くカーブしており、石があまりに巧妙に配置されているために、風が入り込むような石の間の割れ目すらない。海側の城壁の下には150フィート(45メートル)の崖がある。
城そのものは、最上部に恐るべき狭間 胸壁がある巨大な円筒形の塔であり、遠くの敵には、反抗の意思を込めて空に向かって突きあげる、棘のついた巨大な拳のように見える。巨大な塔の中には馬屋、兵舎、兵器庫そして君主の居室が全て入っている。
また、敵の魔法に対する防御として、幕壁に呪文が織り込まれていると言われている。
戦いで落城したことはないが、ストームズエンドは近年の歴史でも何度か包囲戦に遭っている。エイゴン征服王の〈征服戦争〉の間、最後の〈嵐の王〉であるアージラック傲慢王は城を出てしまい、ターガリエン家の傍系オーリス・バラシオンと戦場で戦って敗北する。オーリスはアージラックの娘をめとり、ストームランドの領主となる。〈簒奪者の戦争〉の間、ストームズエンドは一年間包囲され、陸ではメイス・タイレル 公がその軍を率い、海側ではパクスター・レッドワインがアーバー島の艦隊を率いる。防衛軍を率いたスタニス・バラシオン (スタンニス・バラシオン)は降伏を拒否し、その軍勢はネズミを食べるところまで追い込まれる。ダヴォス・シーワース という名の密輸業者が封鎖をすり抜けて城に補給を行い、スタニスは恩賞として彼を騎士としたが、過去の密輸の罪への罰として指を何本か切り落とす。戦後、今や王となった兄のロバート が城を末弟のレンリー に与え、スタニスを寒風吹きさらすドラゴンストーン の領主としたため、スタニスは怒り、何年も恨みを抱くことになる。〈五王の戦い〉の間、城はレンリーを支持し、スタニスに包囲される。レンリーの死後、城代は降伏を拒否する。ル=ロール (ルラー)の女祭司メリサンドル が城の下からダヴォスによって運び込まれ、超自然的な影の如きものを産み出して、城代は殺される。その直後、城はスタニスの軍勢に降伏する。その後の戦争で、城はメイス・タイレルの率いる強力な軍に包囲されるが、娘のマージェリー が密通の罪で総司祭に逮捕されたため、数週間で包囲を解いてキングズランディング に戻る。城はスタニス・バラシオンに忠誠を誓い続ける。
ドーン
ドラマシリーズでドーン のウォーターガーデンズのシーンが撮影されたセビリアのアルカサル宮殿
ドラマシリーズでドーンのシーンが撮影されたセビリアのオスナ大学
ドラマシリーズでドーンのシーンが撮影されたコルドバ のローマ橋
ドラマシリーズで〈喜びの塔〉のシーンが撮影されたグアダラハラ県 のザフラ城
ウェスタロス 最南部で最も人口希薄な土地。中心のサンスピアはドーンを統治するマーテル家 の本拠地である。その郊外にはマーテル家の夏の宮殿であるウォーターガーデンズがある。ドーン辺境の高い山々(赤い山脈)から大陸の南岸までがドーンである。北にはドーン海があり、東には〈踏み石諸島〉(ステップストーン諸島が)あり、南の沿岸は〈夏の海〉に面する。ウェスタロスで最も暑い地域であり、岩だらけで山も多く、乾燥した気候で大陸唯一の砂漠がある。だが川の周りには肥沃な土地が広がり、ドーンを居住可能な土地としている。内陸では水が金と同じ程の価値を持ち、井戸は厳しく警備されている。主な城としては、デイン家のスターフォール城、マーテル家の最も強力な旗主であるアイアンウッド家のアイアンウッド城などがある。
ドーン人は熱血さで知られる。過去にエッソス のヴァリリア から逃げて来たロイン(ローイン)人による大規模な移住があったため、ドーン人は文化的にも人種的にも他のウェスタロス人とは異なっている。男女平等の長子相続制など、ロイン人の習慣も多く取り入れている。ドーンはエイゴン征服王に抵抗することに成功した、ウェスタロスで唯一の王国である。その後、征服戦争の一世紀以上後になって、通婚によって七王国の一部となる。これにより、ドーンはある程度の独立性を保つことになる。ドーンを統治するマーテル家の領主は、ロイン人のならわしで自らを“プリンス”あるいは“プリンセス”と称する。ドーンに生まれた高貴な私生児は“サンド”姓を与えられる。
ドーン人は3種類に分かれるとされる。"塩のドーン人"は沿岸にすみ、ロイン人の血が最も色濃く残り、肌はオリーブ色で髪は黒い。"砂のドーン人"は砂漠および川の沿岸に住み、肌はさらに黒く、スカーフを頭に巻いて日差しを避けるがよく日焼けしている。"岩のドーン人"はロイン人の血が最も薄く、北の山岳地方に住み、肌は白く髪の毛は茶髪あるいは金髪であり、アンダル人および〈最初の人々〉の血を色濃く残す。
乾燥した風土およびロイン人の影響など、ドーンは後ウマイヤ朝 の支配を受けたスペイン をモデルとしており、ドラマシリーズのシーンもスペインで撮影されている。
〈踏み石諸島〉(ステップストーン)
〈踏み石諸島〉はドーンとエッソスの間に連なる群島であり、この諸島の支配はエッソス南部及び東部への航海権を握ることになるため、しばしば抗争の舞台となる。小説『炎と血 』およびドラマシリーズ『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン 』においては、エッソス の自由都市 ライス 、ミア 、タイロシュ の連合である三頭市およびこれに味方するドーン の領主クォーレン・マーテルと、これに対抗するデイモン・ターガリエン 王子、ヴェラリオン家、さらにはペントス がその支配をめぐって戦う。
王室領
キングズランディング の周辺の土地は〈鉄の玉座〉の王権によって直接統治される。王室領には、ウェスタロス最大の都市であるキングズランディングのほかに、ロズビー、ストークワースとダスケンデールの街などが含まれる。王室領はアリンの谷間 の南、リヴァーランド の南東、西部 の東、そして河間平野 およびストームランド の北に位置する。〈征服戦争〉後、ターガリエン家 の王たちは、周辺の王国から人口希薄な土地を少しずつ集めて王室領を設定する。この領域はブラックウォーター湾を見下ろすところにある。征服以前からのターガリエン家の領地であり、〈狭い海〉がブラックウェーター湾に入るところにあるドラゴンストーン島 の土地も、王室領の一部だと考えられる。ここで生まれた高貴な私生児は“ウォーターズ”姓を与えられる。
ドラゴンストーン
ドラマシリーズでは北アイルランド のDownhill Strandでドラゴンストーンの浜辺のシーンが撮影された
ドラマシリーズのシーズン7ではスペイン のガステルガチェ でドラゴンストーンのシーンが撮影された
かつては古代ヴァリリア永世領(古代ヴァリリア自由保有地)の最西端の前哨地である。〈破滅〉と呼ばれる謎の災厄の一世紀前、ターガリエン家 がこの地を統治するために送りこまれる。〈破滅〉がヴァリリア を襲ったとき、ターガリエン家はヴァリリアのドラゴン の最後の生き残りと共にこの島で生き延びる。一世紀後、エイゴン・ターガリエンとその姉かつ妻であるヴィセーニア(ヴァイセニア)と妹かつ妻であるレイニス(レーニス)は島から大規模な征服作戦を開始し、最終的にはドーン と〈壁〉 の北を除く全ウェスタロス を征服する。その後、エイゴンの子孫は3世紀にわたって七王国に君臨する。
ドラゴンストーンは同名の島の大部分を占拠する、巨大な恐るべき砦である。この城の珍しいところは、ヴァリリアの石工がドラゴンの形に刻んだ塔と、恐ろしいガーゴイルの像で覆われた城壁である。城の地下深くにいくばくかの火山活動が残っているために、城の低層階は意外に暖かい。城の外には小さな港と街がある。
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン 』では、レイニラ・ターガリエン がこの城を本拠として黒装派を率い、キングズランディングの翠装派に対抗する。
〈簒奪者の戦争〉の間、キングズランディング の略奪以前に、妊娠していたターガリエンの王妃レイラ(レーラ)と息子のヴィセーリス ( ヴァイセリス)はターガリエン艦隊の一部と忠実な兵士たちの守備隊と共にドラゴンストーンに送られる。だが、キングズランディングの陥落の後、ロバート・バラシオン はこの島の砦を落とすために弟のスタニス を送りこんだ。王に忠実な艦隊が嵐で全滅した後、ターガリエンの守備隊はヴィセーリスと生まれたばかりの妹デナーリス ( デーナリス)を裏切ってスタニスに引き渡そうとした(王妃は産褥の床で死んでいた)。しかし、サー・ウィレム・ダリーに率いられた忠実な家来たちは王の子らを連れ出す。スタニスはやすやすとドラゴンストーンを攻略し、ロバート王は城をスタニスに与えたが、バラシオン家 古来の本拠地であるストームズエンド を末弟のレンリー が相続したために、スタニスは冷遇されたと考えす。
ロバートの死後、スタニスは、王妃サーセイ の子供たちが近親相姦 による私生児であると非難し、自らが王であると宣言する。ドラゴンストーンは彼の本拠地になる。〈キングズランディングの戦い〉で壊滅的な敗北をした後も、スタニスは当地に戻る。スタニスの助言者である女祭司、アッシャイ のメリサンドル は、血の魔法によって城の〈石のドラゴン〉を甦らせるようにスタニスの説得を試みるが、ダヴォス・シーワース 公が、北の〈壁〉に赴き〈野人〉と〈異形〉 に対する戦いを助けるようスタニスを説いたために、メリサンドルの説得は失敗する。スタニスがドラゴンストーンを去ったあと、摂政太后サーセイ・ラニスター は島を封鎖するために艦隊を送り、城を包囲するよう命じる。だが、サー・ロラス・タイレル は故郷のハイガーデン城を守るために艦隊を包囲戦から解放しようと急ぎ、ドラゴンストーンを正面攻撃する。ロラスは城を手に入れるが、何千人もの兵士を失い、報告によれば彼自身も重傷を負う。その後ドラゴンストーンは再び〈鉄の玉座〉に属する。
ドリフトマーク
ドリフトマーク島は、ブラックウォーター湾の中、ドラゴンストーン島よりも西方の、よりキングズランディングに近く位置する島である。しばしば王に強大な艦隊を提供する、ヴァリリア人の子孫でターガリエン家の姻戚であるヴェラリオン家の領地である。『炎と血 』および『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン 』に登場するコアリーズ・ヴェラリオン は、〈双竜の舞踏〉の時期の、ヴェラリオン家の当主である。
キングズランディング
ウェスタロス および七王国の首都。ブラックウォーター川河口の、エイゴン征服王と姉妹妻がその征服を始めるためにウェスタロスに上陸した地点に位置している。市は城壁に囲まれ、〈金マント〉として知られる〈王都の守人〉(都市警備隊)によって守られている。城壁の内側に目立つ自然景観は3つの丘であり、エイゴンとその二人の姉妹妻にちなんで名づけられている。貧しい庶民は城壁の外側の掘立小屋に住む。キングズランディングは極めて人口が多いが、醜く汚い。市の廃棄物の悪臭ははるか城壁の外にも届く。
王城は〈赤の王城〉(〈赤い城〉)と呼ばれ、エイゴンの丘に建ち、王の宮廷がある。城には七王国の玉座である〈鉄の玉座〉がある。エイゴン征服王は、破った敵の剣から玉座を作ることを命じる。伝説によれば、統治者たるものは決して玉座に快適に座っているべきでないと信じて、刃を鋭いままにさせたと言われている。数世紀たっても、いまだに玉座に座って体に傷を負う王もいる。玉座で傷を負ったものは、玉座に“拒否”されたことを意味し、統治者にはふさわしくないと幅広く信じられている。
キングズランディングにはまた、聖王ベイラーの建設したベイラー大聖堂があり、〈篤信卿〉が総司祭のもとに集まる。もっとも神聖なる七神正教 の聖堂である。キングズランディングの貧民街は〈蚤の溜まり場〉と呼ばれ、住民はあまりに貧乏であるため、子犬や殺された人間の肉が入っていると噂される、〈茶色がゆ〉と呼ばれる謎のシチューで生き延びている。
オベリン・マーテル の来訪時に出迎えたティリオン の言によると、キングズランディングは、50万を超える人口があると推測されている。