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シソ科イブキジャコウソウ属の総称 ウィキペディアから
タイム(英: thyme)はシソ科イブキジャコウソウ属 (Thymus) の植物の総称で、およそ350種を数える。芳香を持つ多年生植物で、丈が低く草本にみえるが、茎が木化する木本である。6月18日の誕生花。ハーブとしてよく知られる代表種にタチジャコウソウ(学名:Thymus vulgaris)があり、日本ではこの種を一般にタイムと呼んでいる。
イブキジャコウソウ属(タイム) | ||||||||||||||||||
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タチジャコウソウ (Thymus vulgaris) | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Thymus L. | ||||||||||||||||||
種 | ||||||||||||||||||
他(約350種) |
原産はヨーロッパ、北アフリカ、アジアで、ヨーロッパ南部からアジアの北半球に広く分布する[1]。
樹高15 - 40センチメートルほどの常緑小低木で、ハーブの一種として知られる[2]。多くの種がケモタイプを持つ[注釈 1]。日本ではタチジャコウソウ(立麝香草、コモンタイム、T. vulgaris)のことを一般にタイムと呼ぶことが多い。数ある種の中でも、コモンタイム、シトラスタイム(レモンタイム)、ワイルドタイム(ヨウシュイブキジャコウソウ)が代表的な種である[3]。野生種は35種ある[4]。葉に斑が入った種や、レモンやオレンジのような芳香を持つ種など、野生種から選抜した栽培品種もある[5]。
イブキジャコウソウ属(タイム属)は、立性と匍匐性の2タイプに大きく分けることができる[4][5]。幹は一般的に細く、針金状のものもある。ほとんどの種は常緑で、4 – 20ミリメートルほどの卵形の葉は対をなして全体に並ぶ。すべての種で、春先から初夏にかけて、たくさんの愛らしい花を咲かせる[4][6]。花は頂部末端に集中し、萼は不均一で、上端は3つに裂け、下部はくぼんでいる。花冠は管状で長さ4 – 10ミリメートル。種類によって花色は異なり、白、ピンク、または紫を基調に、様々な色がある[6]。花が咲く頃に、葉の芳香が一番強くなる[6]。
斑入り葉の園芸品種は、基本種の突然変異で生まれたもので、夏の暑さで先祖返り現象が起きて、元の緑色葉に戻ることがある[7]。
種類は多数あるが大きく分けると、茎が立ち上がる直立性のアップライトタイム(Upright thymes)と、茎が地表を這う匍匐性のクリーピングタイム(Creeping thymes)に2分できる。直立性のタイムが好む場所は、小径の脇や急斜面のようなところで[8]、匍匐性のタイムは土手や野原の地表を這い、グランドカバーにも適している[9]。
古代エジプトではミイラを作成する際の防腐剤として使われていたとされる。ギリシャ人は入浴時や神殿で焚く香として使っていた。ヨーロッパへのタイムの浸透は、それらを部屋を清めるのに用いていたローマ人によるものと考えられている。古代ギリシャではタイムは勇気を鼓舞すると信じられており、また、中世には悪夢を防ぎ安眠を助けるようにと枕の下に敷かれた。
中世、持ち主に勇気をもたらすと信じられていたことから、栄誉を称えて、しばしば女性たちは騎士や戦士に蜂とタイムの小枝を刺繍したスカーフの贈り物をした[14]。香料としても用いられ、来世への旅路を確実なものとするために葬儀の際に棺に入れられた。
日当たりのよい場所を好み、水はけや風通しのよい場所、弱アルカリ性の土壌で栽培する[15]。乾燥気味の場所がよく、耐寒性のある種が多いが、高温多湿や日照不足になると枯れてしまう場合がある[15][1]。栽培する土壌は、園芸用の砂利をすき込んだ赤玉土が主体の用土で育てられる[8]。直立性・匍匐性にかかわらず、春に刈り込むと、香りの強い若葉が出るようになる[8]。また、過湿抑止のために株元の通気をよくする目的で、茎葉が密集してきたら葉を数枚残して短く刈り込むことも行われる[6]。夏の終わりに、株が木質化するのを抑えるために再度刈り込んでおく[8]。
繁殖は他のシソ科のハーブ同様に、挿し木、株分け、取り木で増やしていく[7][1]。種子から育てることもできるが、種が小さく細かいため、直播きにはあまり向かないと言われているが[10]、一方では園芸用の砂か小麦粉と混ぜておくと、うまく種まきができるとも言われている[8]。覆いをせずに20℃に保っておくと、5 - 10日ほどで発芽する[8]。苗が若いうちは立枯病にかかりやすく、水やりは最小限に控えて病気にならないようにする[8]。挿し木による場合では、晩春に花が咲く前の新しく伸びた枝を切り取って行う[8]。株分けは、冷涼ないし湿潤な地域では春に、温暖・乾燥地域であるならば秋に行うと良いとされる[8]。
直立性のタイムよりも立ち上がらない匍匐性のタイムのほうが育てやすいが[6]、収穫性は直立性のタイムのほうが容易に茎葉を摘み取ることができる[9]。匍匐性よりも立性タイプは高温に耐えられないため、7 - 8月は苗などの植え付けは避けるべきだと言われている[6]。木立性のタイムは、匍匐性に比べるとやや寒さに弱い傾向がある[16]。
常緑ハーブで1年を通じて摘み取って収穫できる為、古くからヨーロッパでは薬であるとともに料理のハーブとしても広く利用されてきた[4][8]。有効成分にチモールが含まれ、強い防腐・抗菌作用があることが知られている[4]。料理には直立性のタイムが主に使われ、種によって香りも風味も様々である[8]。匍匐性のタイムも直立性タイムと同様に利用できるが、地を這って生長している為、摘み取って収穫する際に労力を要する[9]。
料理には、やわらかい枝の先端や葉だけを利用する[17]。特に料理向きとされる種は、葉が肉厚のコモンタイム(タチジャコウソウ)と、柑橘系の香りがするレモンタイムなどが挙げられている[17]。殺菌・防腐効果が強く、肉料理、スープ、シチュー、マリネの香り付けにしばしば使われる[17]。加熱しても風味が落ちにくく、煮込み料理などの加熱調理にも使われる[14]。フランス料理ではブーケガルニやエルブ・ド・プロヴァンスに欠かせない食材の1つで、ブーケガルニに使われているのは直立性タイムのほうである[8]。ケイジャン料理やカリブ料理にも広く用いられる。また、中東(マシュリク)の香味料「ザアタル」 (za'atar) の重要な成分である。また、ソーセージやサラミ、塩漬けの肉などの保存食にも用いられる。
タイムの葉はピリッとした風味で、肉類など脂肪の多い食品の分解を助け、消化を促進してくれる効果がある[17][8]。強い消毒作用は、タイムで煎れたハーブティーを飲めば、二日酔いやのどの痛みに効くと言われている[8]。生であれ加熱調理後であれ、α-アミラーゼ、α-グルコシダーゼのいずれに対して、顕著な阻害作用を示し、糖尿病予防への可能性が示唆された[18]。
タイムの精油の主成分はチモールとカルバクロールであり、その他シモール、シネオール、リナロール、モノテルペン、トリテルペン、フラボノイド、またローズマリー酸などのタンニンや、抗酸化剤としてはたらくビフェニルを含む。チモールは、殺菌効果や強壮作用があり、気管支系の病気によいとされている[17]。
ハーブティーとして古くから飲まれていて、ニコラス・カルペパーは、悪夢にうなされる人に効くと書き残している。神経性の病気に良いという説がある。また、タイムから抽出されたエッセンシャルオイルは、消毒薬、歯磨き粉、うがい薬、石けんの香料などにも使われている[3]。
かつて、タイムはデザイナーフーズ計画のピラミッドで3群に属しており、3群の中でも、ハッカ、オレガノ、キュウリ、アサツキと共に3群の中位に属するが、癌予防効果のある食材であると位置づけられていた[19]。
タイムはキバガ科の Chionodes distinctella(Zeller)や ツツミノガ科 Coleophora 属の C. lixella Zeller, C. niveicostella Zeller, C. serpylletorum Hering および C. struella Staudinger などのガの幼虫の食草である。最後の3種はタイムのみしか摂食しない。
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