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アスター家(英: Astor family)は、アメリカ、イギリスの財閥。ドイツからの移民ジョン・ジェイコブ・アスターがアメリカにおいて一代にして莫大な財を築いたのに始まる。彼の子孫はニューヨークに膨大な不動産を所有した。イギリスに帰化した子孫は連合王国貴族の爵位も与えられており、貴族としてのアスター家にはアスター子爵家とヒーヴァーのアスター男爵家の二家が存在する。
アスター家 Astor | |
---|---|
現居住地 |
アメリカ合衆国 イギリス |
家祖 | ジョン・ジェイコブ・アスター |
著名な人物 |
ジョン・ジェイコブ・アスター4世 ブルック・アスター |
親族 |
リビングストン家 ルーズベルト家 ウィンスロップ・ダドリー家 バヤール家 スタイヴェサント家 |
支流 |
アスター子爵家 ヒーヴァーのアスター男爵家 |
業績 | アメリカで最初の貴族 |
家宝 |
アスター家肖像画 アスター・ダイヤモンド |
別荘 | クリブデン・ハウス |
アスター家(ドイツ名:アストア、アストル家)はドイツ・シュヴァーベンから出た家といわれる[1]。アスター家の財を築くジョン・ジェイコブ・アスター(ドイツ名:ヨハン・ヤーコプ・アストア)(1763年–1848年)は、プファルツ選帝侯領ヴァルドルフに肉屋の息子として生まれ[2]、1783年に貧しいドイツ人移民としてアメリカに移住したが、毛皮商を始めると一代にして事業を大きく拡大し、その販路を極東にまで広げた。ニューヨークの不動産への投資も行って莫大な利益を上げた。1811年には中国の広東との貿易の拠点としてコロンビア川河口にアストリアを建設し、さらに五大湖地域やミシシッピー川上流の交易独占権も握った。死去した時の彼の遺産額は2000万ドルにも上り、この額は当代随一だった[3]。
始祖は商業から財を築いたが、その子孫はニューヨークに有する莫大な不動産の運用で知られ「ニューヨークの地主(the landlords of New York)」と呼ばれた[4]。
ジョン・ジェイコブ・アスター1世の直系の曽孫にあたるウィリアム・ウォルドーフ・アスター1世(1848–1919)は、ニューヨーク州議会下院議員やニューヨーク州議会上院議員を務めていたが、1890年にイギリスに移住し『ペル・メル・ガゼット』や『ペル・メル・マガジン』を購入してその経営者を務め、1899年にはイギリスに帰化してイギリス臣民となり、慈善事業などに尽くした功績で1917年に連合王国貴族爵位アスター子爵に叙せられた[5][6]。その三男であるジョン・ジェイコブ・アスター5世(1886–1971)も、イギリス保守党の政治家を務めながら、1922年にタイムズの所有者となり、その経営者として活躍し、1956年に連合王国貴族爵位ヒーヴァーのアスター男爵に叙せられた。なおタイムズの所有権は1966年にフリートの初代トムソン男爵ロイ・トムソンに売却している[7][8]。
一方アメリカに残った子孫でニューヨークの不動産を相続したジョン・ジェイコブ・"ジャック"・アスター4世 (1864–1912)は、タイタニック号の乗客として命を落としたことで著名である[1]。彼とウィリアム・ウォルドーフ・アスター1世は、ニューヨークの最高級ホテルウォルドルフ=アストリアの創設者でもあった。
ジョン・ジェイコブ・アスター4世の息子ウィリアム・ヴィンセント・アスター(1891–1959)が死去した後、アスター家の財産は、その未亡人ブルック・アスター(1902-2007)に相続された。彼女は夫の死後半世紀近くアスター家の財産を支配して米国屈指の資産家となり、古き良きニューヨーク社交界を象徴する人物となった。メトロポリタン美術館やニューヨーク公共図書館などに多額の寄付を行った功績で1998年には大統領自由勲章を授与されている[9]。
彼女は晩年に認知症を患っており、彼女の二番目の夫との間の子アンソニー・ドライデン・マーシャル(1924-2014)がその後見人となったが、アンソニーの息子フィリップ・マーシャルは、父アンソニーがブルック・アスターの面倒をろくに見ないで虐待しているので後見人を変更するよう民事訴訟を起こした。その裁判によりアンソニーが弁護士と共謀して彼女の財産を自身に流用していることなどが発覚し、アンソニーは詐欺罪などで刑事訴追も受けて、2009年10月にニューヨーク州地方裁判所から有罪判決を受けた。この事件はニューヨーク社交界の歴史の中でも屈指のスキャンダルとなった[9]。
ヨハン・ヤーコプ・アストア (Johann Jacob Astor, 1724–1816) 肉屋
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