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カタクチイワシの稚魚を加工した食品 ウィキペディアから
たたみいわし(畳鰯)、たたみしらす[1]は、カタクチイワシの稚魚(シラス)を生のまま冷水で洗い、葭簀(よしず)や木枠に貼った目の細かい網で漉いて天日干しにかけ、薄い板状(網状)に広げる加工を施した食品[1][2][3][4][5]。
「かつては畳の表に用いられるイグサの上で干していた」[4][5][注釈 1]や、「縦横にくっついた板状のシラスが畳のように見える」[6][8]などが由来とされている。
シラスを厳選し、新鮮かつ1 - 2センチメートル程度の中細で脂肪の少ない個体のみを用いる[4]。水中の型枠全体に均一に広げる板状への加工には、熟練を要する[4]。生シラスを使う必要があり、加熱したシラスではシート状にならない[4]。
特に味付けは施されていないため、軽く炙ってパリパリの食感にしたうえで醤油などを付けると、より美味しく食べられる[1][2][3][4][5]。
日本食品標準成分表2010年版によれば、たたみいわしの75%はタンパク質である[10]。
たたみいわしは食品表示法で定める「水産加工食品」に該当する[11]。
2022年の国立健康・栄養研究所の調査によれば、日本全国から1歳以上の住民を無作為に抽出した11月の1日1人あたりの平均摂取量は、しらす干しが0.977gだったのに対してたたみいわしは0.001gだった[12]。
この節に雑多な内容が羅列されています。 |
1643年の『料理物語』には、たたみいわしに相当する料理が掲載されている[13]。
1645年の俳諧論書『毛吹草』には、伊予の名産として宇和島鰯を使ったたたみいわしが挙げられている[14]。日本国語大辞典第2版に掲載されている「畳鰯」の語の用例としてはこれが最も古い[15]。
1729年頃に加賀藩台所方の舟木伝内が書いた『料理無言抄』には、「たたみ鰯。御國にても近年これあり。一寸斗の鰯を五寸(約15センチメートル)から六寸(約18センチメートル)四方にフノリの如く四角に干したるものなり。色付焼、酒の肴に万用、一夕によし」と書かれている[16]。
1789年の『寛政武鑑』には、信濃国上田藩の正月の時献上の品として、畳鰯が挙げられている[17]。
19世紀初頭の『料理早指南』には、干物魚類調理の部に「畳鰯 是は白すといふ魚の干たる」と書かれている[15]。同時期の『東海道中膝栗毛』には、駿河の瀬戸の話として「時にこの吸物はなんだ。たたみ鰯のせんば煮か」と書かれている[15]。
1847年の『重訂本草綱目啓蒙』(小野蘭山著)には、「うすく板のごとく拵へ乾たるを、しらすぼし 江戸、と云又たたみいはし 同上、と云」と書かれている[15]。
幕末頃に作られたおかずの番付『日々徳用倹約料理角力取組』には、「魚類方」の大関にめざしいわしが挙げられ、以後も「むきみ切干し」「芝えびからいり」「まぐろから汁」に続いて「前頭3枚目」としてたたみいわしが挙げられている[18]。
明治時代から盛んに製造されるようになった[4]。全国各地での自家消費向けの製造が発端となり、神奈川県の湘南から三浦半島付近に専門の加工業者が現れ始め、静岡市用宗地区および神奈川県での生産量が多くなったという[4]。
1874年に東京府が各区戸長に留置者への差し入れ品の一度当たりの上限を通達しており、その中でたたみいわしは「50枚」と定められている[19]。
奥村繁次郎による1905年の『家庭和洋料理法』には、「たゝみ鰯」の料理法として、醤油を塗って付け焼きにするか、2、3日水で戻してから解して吸い物にすることが多いと書かれている[20]。
1850年代に書かれた土岐村路の『路女日記』には、5年間の食事の中で2回、たたみいわしが登場している[21]。
谷崎潤一郎は1934年の『東京をおもふ』の中で、「鮒の雀焼や浅草海苔やタタミイワシが名物であるという理由が分かる。震災前の東京市が市ではなくて村だといわれたが、震災後の今も、ある意味において田舎なのだ」と書いている。これを読んだ日本に留学経験がある中国の散文作家である周作人は、「谷崎潤一郎は東京の食べ物の脆さ、貧乏さ、豊さのなさ、みすぼらしさを明らかにした」と解釈した[22]。
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