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『くまの子ウーフ』(くまのこウーフ)は、神沢利子・作、井上洋介・絵による児童文学作品。1969年(昭和44年)にポプラ社より刊行。全9編の短編から成り、『続くまの子ウーフ』(1984年、ポプラ社、2001年に『こんにちはウーフ』と改題)、『ウーフとツネタとミミちゃんと』(2001年、ポプラ社)と合わせ、『くまの子ウーフの童話集』となっている。第1作『くまの子ウーフ』の日本国内での累計発行部数は2010年10月現在で97万部[1]。日本語以外にも6つの言語に翻訳されている。『くまの子ウーフの童話集』は小学校の国語の教科書にも教材として掲載された。また、絵本やアニメーション作品ともなっている。数々の児童文学作品を創作してきた神沢利子の代表作の一つである。
擬人化された動物たちが登場する作品で、主人公である子熊のウーフが日々を過ごすうちにわきあがる疑問に自分なりの答えを見つけていく物語。ウーフは自由奔放で実に「子供らしい」キャラクターであるが、その問いは自分は何者か、何から出来ているのか、いのちの価値など哲学的なテーマとなっている。
『くまの子ウーフの童話集』1作目、『くまの子ウーフ』より[注釈 1]。
作者の神沢利子は執筆当時、ファンタジー児童文学作品において知られていた。『くまの子ウーフ』とほぼ同時期には長編ファンタジー『銀のほのおの国』を執筆している。本作品はこれまで創作してきた作品とは異なり、ストーリーによらずもっと詩的な形で物事の本質に迫りたいと試みた作品である[2]。ウーフが吹くハーモニカの「りら るら すいー」やキツツキが木をつつく「こんこん ころろろーん ころろろーん」といった作中に多く存在する擬音的表現にも詩的な部分を見て取れる[3]。主人公のウーフをはじめとして登場キャラクターたちは擬人化というよりも、人間の子供を「擬獣化」したキャラクターとなっており[4][5]、ウーフが持つ疑問は、大人を時折はっとさせる幼児の質問を髣髴とさせ、子供たちの思考や認識をありのままの形で描いた作品として評価されている[3][6][7]。子供たちが自身のアイデンティティー、実存を問う作品として、それまで児童文学のスタンダードであった浜田広介の「ひろすけ童話」を打ち破るものと評価され、いぬいとみこの『ながいながいペンギンの話』や中川李枝子の『いやいやえん』、松谷みよ子の『ちいさいモモちゃん』などと並び、児童文学の新たな時代を切り開いた作品として評されている[8][3][6]。また、楽しく素晴らしい作品ではあるものの、心温まる、癒される童話では決してなく、読後に心が揺れるようなすっきりしない感覚が得られる、考えさせられる作品という評価もある[9][10]。
累計発行部数は90万部を超え、日本語以外にも韓国語、中国語(台湾)、オランダ語、フランス語、ポルトガル語(ブラジル)、ドイツ語に翻訳されている[11]。また、1979年から1984年にかけて『くまの子ウーフの絵本』全10巻が刊行されている[12]。映像作品としては1983年に、今日では日本を代表する人形アニメーター[13][14]として知られる真賀里文子によって自主制作アニメが作られている[15]。2000年にはNHKのあつまれ!わんパークでもアニメ化されている[16]。
作者の神沢は樺太で育ち、直接出会うようなことまでは無かったが、クマというものが身近な存在であった[17]。ウーフは誰かがモデルにいるわけではなく、神沢自身の中にいる子供を描いているという[12]。そのため可愛らしい子供を描いていても、決して甘ったるくならず適度な距離感があると評するものもいる[18]。挿絵を担当した井上洋介は文章を読み終えずに描き始めたため、当初ウーフは裸であった。制作途中に「かにをポケットにいれて」という描写を見て、あわてて吊りズボンを描き足したという[19]。
『くまの子ウーフの童話集』は長きに渡って教材として小学校の国語の教科書に掲載されてきた[20]。光村図書では昭和52年度版の小学2年生の教科書に『ウーフは おしっこでできてるか??』を採用し(題名は『くまの子ウーフ』)、その後掲載タイトルを『おかあさん おめでとう』に変えながら昭和64年度版(平成元年度版)まで掲載、平成12年度版で再度掲載している[21][22]。日本書籍では昭和52年度版から『くま一ぴきぶんは ねずみ百ぴきぶんか』を昭和58年度版まで小学3年生の教科書に掲載。昭和61年度版からは小学2年生の教科書に『ウーフは おしっこでできてるか??』を掲載、平成12年度版まで教材として掲載している[23][22]。大阪書籍では小学1年生の教材として『ぴかぴかのウーフ』を平成元年度版から平成17年度版まで掲載している[24][22][注釈 2]。学校図書は平成8年度版から平成17年度版まで『くま一ぴき分はねずみ百ぴき分か』を小学2年生の教科書に掲載している[28][22]。教育出版では平成14年度版に『ちょうちょだけに、なぜなくの』が採用されている[29][22]。
複数の教科書で長い間、教材として利用されてきた理由として、読むことと心情理解を重視する日本の国語教育に合致していたという分析がある。『ウーフは おしっこでできてるか??』はタイトルが興味を惹きつけるものとなっており、児童が読まされるのではなく自ら進んで読むことにつながり、その内容の楽しさが読むことへの積極性を高める。また、ウーフの考えを推し量るに当たって、自由な発想を許す内容であることも、子供の想像力を高める点で教科書に採用されてきた理由の一つとする分析がある[30]。しかし、『くまの子ウーフ』の巻頭を飾る『さかなには なぜしたがない』は一度も教科書に採用されておらず、これは自分に自信を持てず、他人をうらやみ、楽することばかり考える「子供らしい」ウーフが、大人の求める純真無垢な「子供らしさ」に合わないからだとの考察がある[31]。また、限られた時間の授業現場では子供たちが理解し、共感しやすい作品が求められ、『くまの子ウーフの童話集』の中でも道徳的で分かりやすい作品が教材として採用されているという意見もある[32]。
昭和52年度 | 昭和55年度 | 昭和58年度 | 昭和61年度 | 昭和64年度 (平成元年度) | 平成4年度 | 平成8年度 | 平成12年度 | 平成14年度 | 平成17年度 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
光村図書 | ☆ | ☆ | ☆ | △ | △ | ☆ | ||||
日本書籍 | ○ | ○ | ○ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | ☆ | — | |
大阪書籍 | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ | ☐ | ||||
学校図書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
教育出版 | ◎ |
2000年4月9日から7月16日までNHK教育テレビのあつまれ!わんパーク内にて放送。
製作に『ThunderCats』など海外作品を手掛けてきたパシフィック・アニメーション・コーポレーションが関わっており、本作は数少ない国内作品での製作案件となっている。
本放送時は一部話数を入れ替えた上で放送が行われた。
# | # (本放送順) | サブタイトル | 放送日 |
---|---|---|---|
第1話 | 第2話 | ウーフはおしっこでできてるか? | 2000年 4月9日 |
第2話 | 第1話 | おひさまはだかんぼ | 4月16日 |
第3話 | おかあさんおめでとう | 4月23日 | |
第4話 | まいごのまいごのフーとクー | 4月30日 | |
第5話 | きつつきのみつけたたから | 5月7日 | |
第6話 | 第7話 | ミミちゃんのみみ | 5月14日 |
第7話 | 第6話 | たからがふえるといそがしい | 5月21日 |
第8話 | ウーフのおつかいかぞえうた | 5月28日 | |
第9話 | 何にもなれないか? | 6月4日 | |
第10話 | ぶつぶついうのはだぁれ | 6月11日 | |
第11話 | ぴかぴかのウーフ | 6月18日 | |
第12話 | ゆでたまごまーだ | 6月25日 | |
第13話 | くまいっぴきぶんはねずみ百ぴきぶんか | 7月2日 | |
第14話 | きょうはいい日 | 7月9日 | |
第15話 | くまの子ウーフの海すいよく | 7月16日 |
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