Xist(X-inactive specific transcript)は、哺乳類のX染色体にコードされているノンコーディングRNAで、X染色体不活性化過程の主要なエフェクターとして機能する[5]。他の2つのRNAコード遺伝子(Jpx、Ftx)、2つのタンパク質コード遺伝子(Tsx、Cnbp2)とともに [6]、Xic(X染色体不活性化中心)の構成要素[7] となっている。
Xist RNAは大きな転写産物(ヒトでは17 kb)[8]であり、不活性な染色体上に発現し、活性な染色体には発現しない。スプライシングやポリアデニル化など、mRNAと同様の方法で処理される一方、翻訳はされない。このRNA遺伝子は、少なくとも部分的には、タンパク質をコードする遺伝子が偽遺伝子となって進化したものであると考えられている [9]。不活性化されたX染色体はこの転写産物によって覆われ、この過程は不活性化には不可欠である[10] 。Xistを持たないX染色体は不活性化されないが、他の染色体にXist遺伝子が重複すると、その染色体は不活性化される[11]。
ヒトXIST遺伝子は、アンドレア・バラビオ(Andrea Ballabio)によってcDNAライブラリのスクリーニングから発見され、キャロリン・J・ブラウン(Carolyn J. Brown)とハント・ウィラード(Hunt Willard)との共同研究により特性解析がなされた[12][13]。