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米Apple社開発の携帯型音楽プレイヤー ウィキペディアから
iPod(アイポッド)は、Appleが2001年11月から2022年まで販売していた携帯型デジタル音楽プレイヤー製品および派生シリーズの総称である。
iPodは2001年10月24日、Appleの創業者の一人で当時のAppleのCEOでもあったスティーブ・ジョブズの陣頭指揮により開発され、同年からジョブズが推進していた「デジタル・ハブ構想」と呼ばれるMacを中心として様々なデジタル機器やデジタルメディアを連携させる戦略の一環として発表された[1]。Mac専用のMP3音楽ファイルの管理・再生ソフトとして公開されデジタル・ハブ構想の一角を担っていたiTunesはCD-Rの書き出し機能などによりCDプレイヤーと連携し、またMP3プレイヤーと呼ばれる製品も当時市場に現れ始めていたが、いずれもiTunesの長所を活かすものではなかった。iPodはこのiTunesの長所を最大限に活かすための専用ハードウェアという位置付けで、ユーザーが構築した登録曲とプレイリストからなる音楽ライブラリをAuto-Sync(オートシンク、自動同期)と呼ばれた機能によりそのままダウンロードし、常に最新の状態に保ちながら再生することができた[2]。「自分の音楽コレクションを全部ポケットに入れて持ち運び、どこででも聞くことができる」というiPodの製品コンセプトは当時の音楽プレイヤーでは類を見ないもので、たちまち大きな成功を収めることになった[3]。
音楽コレクションを丸ごと持ち出すというコンセプトを実現するため、当時MP3プレイヤー用としては一般的だったが容量が限られていたフラッシュメモリではなくハードディスクドライブを内蔵ストレージに採用し、大容量のデータをやり取りするための接続端子には当時は低速だったUSBではなくFireWireが採用された。FireWireは充電端子を兼ね、データのダウンロードと充電を同時に行えることも当時としては斬新な特徴だった。
後継機種や派生機種も多数発売された。最初の製品である第1世代iPod(区別のため「iPod (Scroll Wheel)」と公式で呼ばれることがある)の直接の後継機種(後に「iPod classic」呼ばれるシリーズになった)に加え、iPod miniやiPod nano、iPod shuffleと呼ばれる派生機種も登場した。技術の進歩により、後継機種では接続端子にFireWireに代わって高速化したUSB2.0が使用されるようになり、大容量化したフラッシュメモリも派生機種で採用されるようになった。音楽ファイルもMP3に限らずAACなど対応形式を増やしてしていった。
iPodの大成功によりAppleの経営方針や販売戦略も大きく変化していった。Mac中心を謳ったデジタル・ハブ構想を排し、iPodはWindowsパソコンにも対応するようになった。iPodの成功を背景に運営が始まったiTunes Store(当初はiTunes Music Store)によりAppleはデジタルコンテンツの販売業に参入し、音楽業界に影響力を持つようになった。
2000年代から2010年代に掛けて展開されたiPodシリーズは世界的な音楽の消費の形を変え、音楽文化そのものに大きな影響を与えてきたが、2010年代の終わりからはスマートフォンの台頭により需要が縮小し、最後のモデルであるiPod touchが2022年5月10日に在庫限りで販売終了[4]となったことをもって全シリーズの販売が終了した。
2007年、当初iPod機能を取り入れたスマートフォンというコンセプトで発売されたiPhoneはiPodを上回る成功となり、2024年現在も販売が継続されている。iPodという製品名はポッドキャストの語源にもなったほか、今でも販売中のEarPodsやAirPodsといった製品名にその面影を残している。
初版発売日:2001年10月23日。第1世代から第5世代までは単に「iPod」と呼ばれた(当初は派生機扱いだったiPod photoを除く)が、第6世代から区別のため「iPod classic」と改称された。いずれも1.8インチハードディスクを内蔵。ストレージ容量は最終機種の最大モデルで160GBであり、2019年発売のiPod touch (第7世代)256GBモデル登場まではiPodファミリーで最大の保存容量を有していた。2014年9月に販売終了。
初版発売日:2004年1月6日。初の派生機種で、小型軽量化モデルとして登場した。1インチハードディスクを内蔵。2005年9月に販売終了。
初版発売日:2005年1月11日。さらに安価なモデルとして登場した。液晶画面を廃し、シャッフル再生に特化。衣服等に付けるためのクリップを備えており、
初版発売日:2005年9月7日。iPod miniの後継機種として登場し、iPod miniよりもさらに小型化した。フラッシュメモリを内蔵。第5世代のみカメラ採用。第6世代からカメラを採用せず、タッチスクリーンに対応した。2017年7月に販売終了。
初版発売日:2007年9月5日。全面タッチパネルによるユーザインターフェースをもち、無線LANによるウェブブラウズ、アプリケーションの追加などが可能。iPodファミリーで唯一
iPodの象徴とも言うべきホイールがある。このホイールを用いて選曲、音量調整、早送り、巻き戻し、画像・動画閲覧などすべての操作を直感的に行える。このマンマシンインタフェースは、液晶のないshuffleでもよく似た形のコントロールパッドを備えるほどに一貫していた。
iPodおよび後のiPod classic)、第5世代までのiPod nano、iPod miniのユーザインタフェースは、中央のスクロールホイールを使って操作し、階層構造をたどって選曲する。この方法により、何千曲ものライブラリがあったとしても、ユーザは容易に選曲をすることが可能である。再生中の曲の頭出しや早送り、音量調整、収録されているゲームの操作や写真・動画の閲覧も、全てスクロールホイールによって行うことができる。このデザインは第1世代から踏襲され、スクロールホイールはiPodの象徴ともなった。その後、クリックホイールに改良された。
iPod touchやiPhone、iPad、iPod nano(第6世代以降)などは、タッチパネル入力を採用したが、こちらも直感的な操作ができるように工夫されている。
Auto-Sync機能を搭載し、iPodをMacに接続するとすべてのiTunesの登録曲とプレイリストが自動的にiPodにダウンロードされ、常に最新の状態に保たれる。
「アーティスト」「アルバム」「ジャンル」等で管理される階層的な検索システムを持つ。
これは クリエイティブテクノロジーの持つ「ZEN特許」と呼ばれる[5]ユーザインタフェース関連の特許に該当していたため、同社から訴訟を起こされAppleはクリエイティブテクノロジーに対し1億ドルの和解金を支払い和解することになった[6]。他社製プレイヤーにも同様のユーザインタフェースを持つ物がある。
モノクロディスプレイを持つ第1世代から第4世代までのiPod (classic)の画面表示の書体は、英数字に「Chicago」、採用していた。これはバージョン1から7.xまでのClassic Mac OSにおいてシステムフォントして使われていたものと同一である。
iPod miniは英数字に「Espy Sans」を採用していた。これはApple Newtonのシステムフォントでもある。
初期のカラーディスプレイを持つiPod (classic)の第4世代(iPod photoを含む)および第5世代、iPod nano第1世代から第2世代は英数字に「Myriad」を採用。これは当時のApple製品全般で製品ロゴや広告などに使用されていたフォントである。
第6世代以降のiPod classic、第3世代以降のiPod nano、iPod touch(iOS 8まで)は同時期のmacOSのシステムフォントと同様、英数字に「Helvetica」を採用していた。
日本語のフォントにはモノクロディスプレイ時代は「Osaka」、カラーディスプレイ化以降は「ヒラギノ角ゴシック」を採用している。
ただし、iPod miniおよびカラーディスプレイを持つiPodでもディスクモードにしたときのフォントはChicagoになる。
GUIの対応言語はモデルによって異なり、第1世代のiPod (classic)では僅か4言語(英語、フランス語、フランス語、日本語)のみであった。その後徐々に拡大し、iPod nano 第7世代では35のGUI言語、29のVoiceOver言語、7のフィットネス音声フィードバック言語にまで対応していた。
本体デザインは同社のMac・シリーズと同様、ジョナサン・アイブが中心のデザインチームが担当した。Mac・シリーズと同じく、光沢のあるプラスチックやカラーアルマイト、磨き上げられたステンレスなどの質感を重視した素材を使用し、可能な限りシンプルな形状にデザインされているのがシリーズ共通の特徴と言える。
iPodはMP3、WAV、AAC/M4A、Protected AAC/M4P、AIFF、Audible audiobook/AA/M4B、Apple Lossless音声ファイルフォーマット/M4AおよびM4Vの再生に対応する。ただし、iPod shuffleはApple Losslessには対応していない。第5世代のiPodではこれに加えて H.264、MPEG-4の再生にも対応する。iTunes for Windowsでは、コピーガードが無いWMAファイルをAAC、MP3、WAVの各形式に変換し、iPodに取り込めるようにもできる。
iPodはUSB大容量記憶装置としても利用できる(iPod Touchは除く)。基本的にはFireWire接続の外付けディスクとして利用できる(ただし2005年9月発表のiPod nano以降のモデルではFireWire接続には対応していない)。[注 1]
2006年1月にFMラジオチューナー機能付きのワイヤードリモコンが発表され、第5世代以降発表のshuffleを除くモデルでのラジオ受信が可能となった。ファームウェア上ではRadio Data Systemを標準に準拠したデータが送られ、ラジオ局の情報や聞いている曲、ミュージシャンの名前などの情報が表示される仕様となっている。
左から右へ:
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すべてのiPodにはiPodのデザイン色に合わせた、白いコードのインナーイヤーイヤフォンが付属しており、この白いイヤフォンはiPodブランドのシンボルとなっている。付属のイヤフォンは左右のコードの長さが同じY型であり、左右のチャンネルを示す「L」「R」の文字がイヤーパッド部分に入っている。このイヤフォンは日本のフォスター電機が単独供給している。
白いイヤフォンを装着している人がすなわちiPodの利用者である、という認識が広まる一方で、2005年ころは米国では白いイヤフォンで音楽を聴いているユーザーからiPodを強奪するという事件が近年しばしば発生[8]し、死者が出た例もある。
デザインは数度変更されており、いわゆる第5.5世代iPod、第2世代iPod nano、第2世代iPod shuffleのカラーバリエーション増加後からは、全体が丸みを帯び、音質を向上させた新しいイヤフォンが付属。第5世代iPod touch、第7世代iPod nanoからはEarPodsと新たに名付けられた新デザインのイヤフォンが付属した。
iPodにはさまざまなソフトウェアが搭載されていて、パソコン側のiTunesを通して、バックアップもとれる。
iPodではちょっとした待ち時間等をつぶす、という目的で使えるゲームも搭載されている。
第1世代および第2世代のiPodにはブロック崩しゲームの「Brick」が収録されている。
第3世代および第4世代のiPod、iPod mini、iPod nano(第1世代および第2世代)にはBrickの他に3つのゲームが含まれる。
メモ機能を利用して、簡単な
第5世代は当初第3世代および第4世代同様の4つのゲームが添付されているのみだったが、2006年9月12日に公開されたiPodソフトウェア1.2から、
iPod classicおよびiPod nano(第3世代)には以下の3つのゲームが含まれるほか、iTunes Storeからダウンロード購入したゲームも追加できたが、2011年10月に取り扱いを終了している[11]。VortexとiPod Quizは第5世代iPod向けにiTunes Storeからダウンロード販売されているものである。
iPod touchはファームウエア2.0以降でiTunes storeの
2001年10月23日に発表された第1世代iPodはMac OS 9またはMac OS Xが動作するMacでのみ使用できたが、2002年7月17日にAppleはオリジナルのHFS+フォーマットの代わりにFAT32でフォーマットされた内蔵型HDDを持つWindows互換iPodの販売も開始した[12]。
初代iPodはMacでしか使えなかったのは、HFS+でフォーマットされた記憶装置をWindowsで認識することが特別な追加ドライバソフトウェア無しには不可能だからである。第2世代はMac用iPodがHFS+、Windows用iPodがFAT32でフォーマットされて出荷された。第3世代はHFS+フォーマットで出荷され、これをWindowsへ接続した場合FAT32フォーマットに初期化するかどうかの確認メッセージが表示される。なお、FAT32フォーマットのiPodをMacに接続して使うこともできる。Macは、FAT32でフォーマットされた記憶装置を認識し、互換性を保ったまま使用できるからである。現在では、旧世代のMacのみに対応しているiPodも、iPod Updaterで復元することで両オペレーティングシステムに対応させる事ができるが、Apple社の保証外動作のため保証は受けられなくなる。
Apple社は2003年10月16日にiTunesのWindows版をリリースした[13]。それ以前は、WindowsユーザーがiPodを使うには、Musicmatch Jukebox、ephPodまたはXPlayといったサードパーティ製ソフトウェアが必要だった。iTunesのWindows版が公開されるまでWindows向けiPodには、Musicmatch Jukeboxが同梱されていた。
iPodはiTunesとの同期機能を備え、「iTunesのライブラリに収めた音楽を外へ持ち出す」というコンセプトで開発されたiPodは、発表時に「iTunes to go」というコピーでそれを表した。このコピーは
2003年以降はビビッドカラーの背景にiPodを手に持った人物の黒いシルエットが音楽に合わせて踊るという有名な広告の投入を開始。この広告は特に評判になり、CMに採用された曲がヒットすることも多かった。
2004年10月に放送が開始されたバージョンの広告[14]ではBGMにU2の『ヴァーティゴ』が採用され、メンバーたちが微妙に顔が判別できる程度のシルエットの形で出演した。ちなみにU2はそれまで広告等のタイアップに決して応じることが無いと言われていたが、今回は無料で出演している。これ以降、楽曲と共に本人達によるシルエット出演が行われたのはエミネム、ボブ・ディラン、ポール・マッカートニー、コールドプレイ等である。
U2と同様に広告等のタイアップに今まで応じたことが無かったエミネムの起用にあたっては、当初、米国で放送された広告において自身の楽曲『ルーズ・ユアセルフ』の無断使用が発覚したため、エミネムのレーベル会社である「エイト・マイル・スタイル」がApple社と広告を制作した広告代理店に対する著作権侵害を訴える裁判沙汰に発展した。2004年2月に始まった訴訟は翌年5月に和解が成立したため、晴れて同10月からのiPodの広告としてエミネム本人のシルエット出演と共にタイアップされることになった。
一方で、カンセイ・ジ・セール・セクシー(CSS)の『Music Is My Hot, Hot Sex』をタイアップしたバージョンが2007年10月に放映されたが、これは元々、イギリスの大学生が、Apple社サイトからとってきたビデオ・クリップを組み合わせた映像にCSSの楽曲を乗せて編集した、云わばiPod風の自作コマーシャルであった。作成した大学生がこのクリップをYouTubeに投稿していたところ、Apple社の目に留まり、本物のコマーシャルとして採用されて放映されることになったという。
作曲者 | 曲名 | 備考 |
---|---|---|
プロペラヘッズ | ||
ブラック・アイド・ピーズ | ||
ジェット | ||
N.E.R.D | ||
フューチャーキャスト | ||
ザ・ヴァインズ | ||
ステリオグラム | ||
オゾマトリ | ||
U2 | ||
シーザーズ | ||
ゴリラズ | ||
ダフト・パンク | ||
ザ・リソース、ジミー・ネイプス | ||
プロトタイプス | ||
U2 | ||
エミネム | ||
ウィントン・マルサリス | ||
ライノセラス | ||
ウルフマザー | ||
ボブ・ディラン | ||
カット・ケミスト | ||
クンビア・キングス | ||
ザ・フラテリス | ||
Nickodemus & Quantic、Tempo | ||
ポール・マッカートニー | ||
ファイスト | ||
カンセイ・ジ・セール・セクシー | ||
メアリー・J. ブライジ | ||
ブレンダン・ベンソン | ||
ザ・ティン・ティンズ | ||
コールドプレイ | ||
アステロイズ・ギャラクシー・ツアー | ||
チェアリフト | ||
フランツ・フェルディナンド | ||
ミス・リー | ||
ケイク | ||
シャッポ | ||
ザ・ビートルズ | ||
グループラヴ | ||
ザ・ポリフォニックスプリー | フォルクスワーゲンとの合作。ニュービートルの広告でもある。 | |
グリーン・デイ | ペプシコーラとの合作。 |
発売された初期の頃は電池の消耗・劣化が激しく、更に電池の交換費用が高額だった(購入後、僅か90日間の製品保証だった[15])ために、米国では購入者から電池交換費用を安くするよう運動やデモを起こされ、集団訴訟にまで発展した。この訴訟でApple社が応じた和解の条件は以下の通りである。2004年5月31日までに第3世代までのiPodを米国で購入した米国の居住者に対して、バッテリの無償交換もしくは50ドルの商品券を渡すこと、あるいはその期間までにiPodの電池交換を有償で受けた購入者には最大で50パーセントの有償交換金額の返金に応じる、の2点である。イギリスの国会でもiPodの電池劣化問題が話題となったが、2004年6月以降からは電池も改良され、更にサポートとしてAppleCare Protection Planが発売されて解決している。2005年10月14日には、電池交換サービスの料金が従来の15,750円から半額以下の6800円に改訂された。
iPodの流行を背景に、世界のいくつかの国ではiPodを含むデジタル音楽プレイヤーから著作権料を徴収すべきか否か議論が行われた。
カナダでは法廷闘争の末、iPodから著作権料を課金する行為が違法であるとした司法判決が2005年7月に最高裁で下った。
フランスではiPodなどの価格に「著作権者への補償金」が含まれている。2005年には、iPod nanoなどのフラッシュメモリプレイヤーに対する料率が引き下げられる見込みである。
日本ではJASRACなどの権利団体が私的録音録画補償金制度にiPodなどを含めるよう「要望」を行ってきたが、非難の声が大きく結局iPodシリーズの販売終了まで実現することはなかった。
2005年4月28日に行われた文化庁文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の第3回審議において、私的録音補償金制度の見直しについての意見書がJASRACなどから提出され、「ハードディスク内蔵型レコーダーとBlu-ray Disc録画機器およびディスクを私的録音補償金制度の対象に含めるべき」と課金対象を具体的に示した。これはまず間違いなくiPodを始めとするハードディスク内蔵型音楽プレイヤーに対してのものである。
しかし、音楽CDなどのデータソースに対する著作権使用料に加えてプレイヤーに対する著作権使用料も徴収される事になってしまうために、「これは著作権料の二重取りになるものだ」といった非難の声が、消費者からはもちろんの事、審議参加議員らからも上がった。そのため、審議は一般人の声にも対応するために2005年9月以降までに延期されることになり、この課金制度適用については2年先送りすることで決定した。その期間中に寄せられた意見は、iPodなどのハードディスク内蔵型音楽プレイヤーに対して著作権使用料を取得することに対する反対意見が、賛成意見の4倍以上となる結果となった[16]。
知的財産推進計画2007[17]の策定に際して行われた「知的財産推進計画2006」の見直しに関する意見募集[18]では、日本法人であるアップルジャパン株式会社名で「私的使用複製について結論を得る」に関する意見として、著作物の私的複製による権利侵害には科学的且つ客観的証拠は存在せず、仮に私的複製により権利侵害を被ったと主張するなら、原因は複製防止技術を備えていない著作物パッケージを製造販売しているレーベルに有り、ハードウェア会社に対して責任転嫁するのは無責任且つ自己中心的な姿勢であるとし、「科学的且つ客観的証拠に基づかない理由に依る私的録音録画補償金制度は即時撤廃すべきである」と主張する意見が掲載されたが、後に提出者からの要請で撤回された。アップルジャパンは、この意見が同社が提出したものかどうかについてコメントを避けている[19]。
アメリカ合衆国ではiPodが難聴(音響難聴)を引き起こす原因になると指摘されるようになり、訴訟に発展した。
訴訟はルイジアナ州の男性によって2006年1月31日に起こされた。訴状によれば、iPodは115デシベル以上の音量を再生することが可能であり、この音量で1日28秒以上聴き続けると、難聴を引き起こすおそれがあるとのこと。iPodには「115デシベル以上を再生できるという、設計上の致命的欠陥」があり、これにより正常な聴覚を失う可能性に関してAppleは適切な警告と対策、補償を十分に行なっていない、とし、集団訴訟と認定されることを請求し、被害に対する賠償と、iPodを安全なものにする改善を要求した。
但し、件の男性は2005年にiPodを購入したとされているが、実際にiPodで難聴になったかどうかは訴状では明らかにされていない。男性の弁護士によると、実際にiPodで難聴になったかは重要ではなく、iPodが取り返しのつかない難聴を引き起こす可能性が放置されていることが問題なのだとした。
法的に見て、iPodを普通に使ったことでユーザに難聴が起きればその責任はiPodを製造したAppleにあることは明らかであるので、Appleはこの件で裁判で争っても勝てる見込みは全く無いので[注 3]、難聴を引き起こさないようにiPodに、下記のような、難聴発生防止のための対策を実際にほどこすことになった。
最新版のソフトウェアでは、第5世代iPod、iPod nano、iPod shuffle向けに、ある一定以上の音量が出ないように設定する機能が提供された。但し、この機能は旧世代機(第4世代以前のiPod、iPod mini)には提供されていない。現在iPodには、「イヤホンやヘッドホンを大音量で使用すると、聴覚を損なうおそれがあります」という警告文が添えられ、Appleからは最高音量の半分以下で使用することが推奨されている。なお、他社のプレーヤーでもこのような警告文が添えられるようになった。
アメリカ合衆国ニューヨーク州ではiPodなどの電子機器を操作しながら横断歩道を歩いていた住民が車に轢かれ死亡する事件が3件発生し、そのうち1件は「危ない」と叫んでいたのにもかかわらず気付かずに轢かれて死亡した。
2007年2月、アメリカ合衆国ニューヨーク州のカール・クルーガー上院議員がiPodなどの電子機器を操作しながら横断歩道を渡ることを禁じる法案を同州議会に提出した。
iPodに関連するサードパーティー製品、すなわちiPodと組み合わせて使うために他社が販売した製品。iPodはアクセサリー産業の二次市場を大きく成長させる発端となり、2005年のマックワールド基調演説でApple社CEOスティーブ・ジョブズはそれを「iPod経済」と呼んだ。一般的には、生態系になぞらえてエコシステムと呼ばれることもある。
iPodのイヤフォンを他社も模倣し白いコードのインナーイヤーヘッドフォンが多数発売された。
iPodは全モデルで、一般的なステレオミニジャック、すなわち3.5mmイヤホンジャックを採用しているため、同じジャックのイヤフォンやヘッドフォンを使用することができる。一部のサードパーティからは、iPod向けの代替イヤフォンとして白色のイヤフォン、例えば、ソニー社製EX71の白色モデルやエティモティック・リサーチ社製ER-6i、シューレ社のE4c、クリプシュ社のImage S4i White等が販売された。なお、iPod純正のイヤホンよりも高音質を謳い1万円を超えるような高価なイヤフォンも良く売れた。
iPodのアクセサリーにはメモリーカードリーダー、FMトランスミッター、及びボイスレコーダモジュールなどが存在する。それらのコネクターは音の信号を通し電源をiPodまたはアクセサリーに送ると同時に制御及び情報を提供する。これらのアクセサリー(ケース類などは除く)について2005年10月にApple社がロイヤリティ料を徴収する旨の記事が出たが、現在ロイヤリティ料を徴収する決定はApple社で出されていない。PORTER(吉田カバン)やプラダ、グッチ、コーチ、ポール・スミス、ルイ・ヴィトン、ダンヒルなど各種ファッションブランドの専用ケース等も存在し、Apple社でもiPod nano tube、靴下をモチーフにしたiPod靴下を販売している。
グリフィン・テクノロジー社[29]はiTrip、iBeam、iTalk、PowerPodおよびEarJamを含む、いくつかのiPodアクセサリーを作成している。テン・テクノロジー社によるnaviPod[30]はApple iPod向け5ボタン赤外線リモート・コントローラーである。ソニーやクリエイティブテクノロジーは、iPodシリーズと競合するデジタルオーディオプレーヤーを製造しているが、同時に、iPod専用のハードウェアも生産している。
iPodの多くの機種は背面が金属製で、レーザー刻印によって字やロゴを入れる加工が可能だった。Appleはこれを応用し、一般消費者が任意のテキストを入れられるサービスを展開したほか、企業ロゴやキャラクターなどを刻印したiPodのコラボレーション製品を多数制作していた。それらのコラボレーション製品は他社から一般販売されたり、懸賞として配布されるなどされた。
例として、2004年から2005年に掛けてヒューレット・パッカード社は「HP」ロゴ入りのiPodを販売していた。HPのiPodは当初同社のコーポレートカラーである青色の独自本体として発表されたが、結局は通常モデルにロゴを刻印したのみの変更にとどまった。HPのiPodは第4世代iPodおよびiPod photo、iPod mini、iPod shuffleをベースとしたモデルが存在した。
iPodLinuxプロジェクトはiPodで動作するLinuxのARMバージョンの移植に成功している。これはuCLinuxという仮想メモリの扱えない機器類への組み込み用に設計されたLinuxをベースとしており、現在第1世代(スクロールホイール)iPodから第3世代iPodまでをサポートし、公式にはサポートされていないが、第4および第5世代iPod、第1および第2世代のiPod mini、第1世代iPod nano上でも利用できる。macOS及びWindows上からインストールするためのインストーラが利用できる。iPodをマウントできれば他のオペレーティングシステムからでもインストールできる。SourceForge.net内にこのプロジェクトのウェブページ[31]が存在し、多くの関連文書がオンライン上に存在する[32]。
名前 | 概要 |
---|---|
foobar2000 | iPod manager[33]プラグインをオプションとしてインストールしてiPodを管理できる、Windows向け音楽プレイヤー。 |
AmaroK | 完全にiPodをサポートしているKDE向け音楽プレイヤー。 |
Rhythmbox | GNOME上で動作するiTunesクローン。 |
gtkpod[34] | iPodを目標とした GTK上のGTKツールキットを使用したシステム向けiPod管理プログラム。 |
ml ipod[35] | iPodをサポートするために加えられたWinamp向けオープンソース・プラグイン。 |
EphPod[36] | 多くのiTunesの特徴を備えたWindowsアプリケーション。EphPodはiPodからコンピューターへ音楽のコピーもできる。 |
iPodLinuxプロジェクト | iPod上でLinuxを利用できる。現在は第1、第2、および第3世代iPodのサポートを提供。これはminiも含めて、他の世代のiPodでも利用できるが、iPodLinuxプロジェクトでは、導入方法等に関しての言及はあるが、公式なサポートは行わない、としている。 |
Rockbox | iPod上でWMAやOgg Vorbisなどの音楽ファイルを再生したり、MP3などのギャップレス再生を可能にするオープンソースのファームウェア。2007年11月15日現在、iPod(第5.5世代以前)、iPod mini、iPod nano(第1世代のみ)に対応。 |
iPodWizard | iPodのファームウェア内の画像を入れ替えるWindows用ソフトウェア。 |
2008年4月、Apple社はiPodに関し、液体の侵入や極端な温度、過度の衝撃、不正改造したなどの場合、それをメモリーに記録する技術を開発し特許を取得した。一見しただけでは原因がわからないような故障の原因を特定することにより、保証による無償修理を行う通常の利用の範囲を超えた、有償修理とするべき不適切な利用を判別するためである[37]。
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