DNAナノテクノロジー
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DNAナノテクノロジー(英: DNA nanotechnology)とは、有用な核酸構造を人工的に設計・作製する技術をいう。DNAの名が冠されているが、他の種類の核酸も用いられるため「核酸ナノテクノロジー」という別名がある。この分野では核酸を生細胞の遺伝情報キャリアとしてではなく、非生物学的なナノ材料として用いる。これまでの研究で、DNAを用いた2次元・3次元の結晶格子やナノチューブ、多面体、さらに任意形状の静的構造が作製されており、分子機械やDNAコンピューターのような機能デバイスも得られている。X線構造解析や核磁気共鳴スペクトロスコピーによるタンパク質の構造同定など、構造生物学や生物物理学における基礎的な問題を解決するツールとしても用いられ始めた。将来的な分子スケールエレクトロニクス(英語版)やナノ医療への応用も研究されている。
DNAナノテクノロジーの概念的基盤は1980年代初頭にネイドリアン・シーマン(英語版)によって築かれた。広く関心を集め始めたのは2000年代半ば以降である。核酸を用いる利点は、核酸鎖のうち互いに相補的な塩基配列を持つ部分だけが結合して強固な二重らせん構造を形成するという厳しい塩基対合則の存在である。この規則を利用して合理的な塩基配列デザイン(英語版)を行えば、ナノスケールの精密なパーツが自然に組みあがって複雑な標的構造を形成することが可能になる。構造のアセンブル方式としては、より小さな構造(DNAタイル)をアセンブルさせるタイルベース構造や、核酸の折りたたみによって望みの形状を得るDNAオリガミ法、鎖置換法によって動的な再配置を行う方式などがある。