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HYDEのアルバム ウィキペディアから
『666』(シックス・シックス・シックス)は、日本のロックバンド・L'Arc〜en〜Cielのボーカリストで、シンガーソングライターであるHYDEの2作目のアルバム。2003年12月3日発売。発売元はKi/oon Records内に設立した自身の主宰レーベル、HAUNTED RECORDS。
前作『ROENTGEN』以来約1年9ヶ月ぶりとなるスタジオ・アルバム。
本作には、2003年にアルバムに先行してリリースされたシングル「HELLO」「HORIZON」の表題曲を含めた10曲が収められている。なお、本作のマスタリングは、リンキン・パークの『ハイブリッド・セオリー』や、アウトキャストの『スピーカーボックス/ザ・ラヴ・ビロウ』などの制作に参加したブライアン・ガードナーが担当している。
2002年3月に発表した前作『ROENTGEN』は、HYDEが「家で聴いて楽しめる音楽」として完成させたかったこともあり[1]、ライヴ活動に関してはプロモーション企画で数本の単発コンサートを行うに留まっていた[1]。そのため、HYDEの中に「ライヴができる様なアルバムを作って、(リスナーの)みんなに会いに行きたい」という気持ちが徐々に芽生えるようになっていったという。そしてHYDEは、アルバム制作を主体とした<静>の活動から、ライヴ活動をメインに据えた激しいロックサウンドを追求する<動>の活動スタイルに方針を180度転換することにしている。なお、HYDEは本作発売当時に受けたインタビューの中で、前作発売後の心境の変化について「(『ROENTGEN』に関しては)大々的にツアーとかあんまり考えてなかったから。だから、もっと激しいのがしたくなったんですよね[2]」と語っている。
活動方針を転換した後、HYDEは「HELLO」などのデモテープを作りはじめ[2]、Ken(L'Arc〜en〜Ciel)とSakura(ZIGZO、ex.L'Arc〜en〜Ciel)が中心になって結成されたスリーピースバンド、SONS OF ALL PUSSYS(略称:S.O.A.P.)が主催するライヴに出演し、アルバム発表に先駆けて新曲を披露することにしている。HYDEは、S.O.A.P.のライヴへの出演が決まった経緯について「S.O.A.P.とかと飲んでた時に、一緒にライヴできるような曲を今作ってるから、いつか一緒にツアーしようね、みたいな話をSakuraに言ったらしばらくして"すでにブッキングされてるよ"なんて言われて。えっ、もう!?みたいな(笑)[2]」と述懐している。
HYDEはS.O.A.P.主催ライヴに出演した後も、今回の共同プロデュースを担当したK.A.Zが在籍するSpin Aqua、MONORALと共同で開催したイベント「SHAM 03」や、野外ロック・フェスティバル「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2003」[3]といったライヴイベントに出演し、アルバム収録予定曲を先行披露してまわっている。
こうしてHYDEは今回のアルバムで、自身が好んで聴いてきたライヴで盛り上がるようなハードロックを制作する方向にシフトすることになった。ちなみにHYDEは、本作発売当時に受けたインタビューの中で「実質的には『ROENTGEN』が初のソロ・アルバムだけど、自分の中では今回が1stだって意識が強いですね[4]」と述べている。また、2021年に受けたインタビューにおいても、このアルバムについて「ここからがソロとしての本格的なスタート[5]」と捉えていることを示唆している。
『666』の録音作業は、2002年9月に出演したSONS OF ALL PUSSYS(略称:S.O.A.P.)主催のライヴの前からデモ制作が始められ、その後もイベント出演を挟みながら、マスタリング工程以外が日本にて実施されている。HYDEは本作発売当時に受けたインタビューの中で、マスタリングをアメリカ・ロサンゼルスで行うことにした経緯について「(このアルバムは)別にアメリカンなロックではないと思うんですけどね。でもなんか自分的にはアメリカで流れても気持ちいい感じっていうか、そういうのは多少あったかもしんないですね[2]」と述べている。
なお、今回のレコーディングには、Oblivion DustやSpin Aquaでギタリストを務めるK.A.Zが共同プロデューサー兼HYDEのギターアドバイザーとして参加している。また、ギター録りはすべてHYDEが担当している。こういった制作体制を採用したことにより、セルフプロデュースだった前作の制作方法と異なり、今回HYDEはギターフレーズを細かく考える前に[6]、曲全体の表情がみえたら[6]、その大まかなデモをK.A.Zに渡してアレンジを施してもらい[6][7]、最終的に2人で調整するといった手法をとっている[7]。今回のギターアレンジの方向性について、HYDEは「(スリーピース体制の)ライブで演ることを考えて、あまりダビングしたくないなとは考えてましたね[6]」と述べている。ちなみにHYDEは、今回K.A.Zに共同プロデュースを依頼した経緯について「前回(『ROENTGEN』)は、イギリスに行く前の段階はすごく一人で緻密に作ってた感じですね。イギリスに行ったら、音を言葉で説明するのがきっと難しいだろうなって思ったんで、けっこう作り込んでたんですけど、自分でずーっと作業をやっていくのがすごい大変だったんで、今回はもっと楽しんでやりたいと思って[8]」「たまたま飲み屋でKAZと知り合って、あっ、この人ならバッチリかもって思ったんですよ。ギタリストでもあるし、打ち込みとかの知識もあって、それでいて繊細だし[8]」と述べている。また、K.A.ZはHYDEからのオファーを受けた経緯について「HYDEからプロデュースの依頼を受けたときはうれしかったけれど、俺自身がSpin Aquaを始めたばかりだったから、正直、躊躇もしたかな。でも、いっしょに演ったら、カッコいいサウンドが生まれるかもしれないって予感はあった[9]」と語っている。
さらに今回のレコーディングでは、ドラマーとしてFURUTON(ex.SPACE COWBOY、ex.Oblivion Dust、ex.BUG)、ベーシストとしてHIROKI(ex.media youth、ex.KILLERS)が招聘されている。HYDE曰く、HIROKIの情報はSakura(SONS OF ALL PUSSYS、ex.L'Arc〜en〜Ciel)から教えてもらったといい[8]、それを受けて後日HIROKIが出演する武田真治のライヴを観に行ったという[8]。訪れたライヴでは、HIROKIの後ろでFURUTONがドラムを叩いており[8]、HYDEが声をかけたことをきっかけに[8]、2人がレコーディングに参加してくれることになった[8]。HYDEは2人にオファーした経緯について「もともと彼ら自体が別でバンドやってたっていうのがあったんで、音を合わせた時にアットホームな印象を受けたんですね。なんかクールじゃない感じというか、すごく暖かい感じ。それがいいかなって[8]」「俺が(ギターが)へたくそな分、うまい人じゃないとちょっとツライなとは思ってましたから[8]」と述べている。ちなみに、HYDEと2人が出会うきっかけになったライヴを行っていた武田真治は、本作に収録された楽曲「WORDS OF LOVE」の制作で、サックス奏者として参加している。
上記のメンバーを中心にレコーディングが行われ、HYDEが嗜好するヘヴィなハードロックを下敷きに、ゴシック・ロック[10]やハードコア[10]などの要素が盛り込まれた楽曲が本作に収められることになった。なお、収録された楽曲はいずれもハードでありながら、メロディアスさやポップセンスが損なわれないような仕上がりになっている。HYDEは今回制作した楽曲について「僕の中で何かしらメロディアスだったり、キャッチーだったりする要素が含まれていないと、よい曲の基準に達さないっていうハードルがあるんです[7]」と述べている。また、今回のHYDEのボーカルワークは、2000年にL'Arc〜en〜Cielとして発表したアルバム『REAL』から引き続き、低音域の声が生かされており、収録曲は自身の低い声域を想定し制作されたものとなっている[4]。さらに本作では、これまでにHYDEが関わった作品にあまりなかった、シャウトするようなアプローチもみせている[4]。HYDEは今回の自身のボーカルワークについて「比較的、自分が好きな中・低域の声を想定して作曲してますね。高い声の場合も歪んだ歌い方なので、そういう点で印象はかなり違うかもしれないですね[4]」「こういう歌のアプローチはしたことがないのに等しいから、ラルクやってたら、こんな歌い方はしてなかったかもしれない。ソロだからこそ、気づいた声だし、チャレンジできたんだと思うし、見つけちゃったから、ラルクにも生かされると思いますよ[4]」と述べている。
なお、作詞作業はHYDEと訳詞家のリン・ホブデイ、もしくはANIS(MONORAL)がディスカッションしながら進められており、前作に続いて英語詞中心でリリックが綴られている。HYDEは作詞作業を振り返り「自分が好きな詞を書いているだけ[4]」「自分自身に訴えかけているところはあるけど、全然、メッセージじゃないですから。映画のようにその世界観に入り込んでほしいなとは思いますけど…。だから、曲が違うから人格も変わってくるんです[4]」と述べている。
余談だが、HYDEは本作発売後の2004年2月から、ソロ名義として初のライヴツアー「HYDE 2004 FIRST TOUR 666」を開催している。このツアーではレコーディングのときと同様に、HYDEがボーカル・ギター、HIROKIがベース、FURUTONがドラムを担当するスリーピースバンド体制で日本全国をまわっている。なお、このツアーはHYDEにとって、"バンドを始めたころの初期衝動"を思い出させるようなものになったという。HYDEはツアー終了後に出演したNHKBShi放送の特別番組の中で、「ギターを弾くので手一杯だった。多分凄い下手くそだったと思うんですけど、最初って。でもなんかすごい懐かしい感じがしましたね、高校生みたいな[11]」「ほんとに本当に高校生以下の演奏だったけどね、多分(笑)。俺以外の2人は上手なのかもしれないけどそれすらも分からないというか、自分のことで手一杯で。でも面白かったですね。今でもそういう気持ちで出来るんだなあって改めて思いますね[11]」とツアーを振り返っている。
アルバムタイトルには、新約聖書の『ヨハネの黙示録』において「獣の数字(=悪魔の数字)」に位置付けられている『666』が採用されている。
なお、この数字は映画『オーメン』などのホラー作品によく登場することもあり[7]、ホラー好きなHYDEのイメージと合致するということから、スタッフが事前にCD初回盤の規格品番(KSCL-666)として用意していた経緯がある[7]。そしてHYDEは、このスタッフの厚意を受け、品番の数字をそのままタイトルに採り入れたという[7]。HYDEはこのアルバムタイトルに関し、「全然音楽性とは関係なく、好きなワードからタイトルを選んだ[12]」と語っている。
フィジカルは、初回限定盤 (CD+DVD) と通常盤 (CD) の2形態で発売されている。初回盤には「HELLO」と「HORIZON」のミュージック・ビデオを収めたDVDが同梱されている。
全作詞・作曲: HYDE。 | |||
# | タイトル | 編曲 | 時間 |
---|---|---|---|
1. | 「SWEET VANILLA」 | HYDE, K.A.Z | |
2. | 「HELLO (Album Mix)」 | HYDE, K.A.Z | |
3. | 「WORDS OF LOVE」 | HYDE, K.A.Z | |
4. | 「HORIZON」 | HYDE, K.A.Z | |
5. | 「PRAYER」 | HYDE, K.A.Z | |
6. | 「MASQUERADE」 | HYDE, K.A.Z | |
7. | 「MIDNIGHT CELEBRATION」 | HYDE, K.A.Z | |
8. | 「SHINING OVER YOU」 | HYDE, K.A.Z | |
9. | 「FRUITS OF CHAOS」 | HYDE, K.A.Z | |
10. | 「HIDEAWAY」 | HYDE, K.A.Z |
[Produce & Mastering]
[Artwork etc]
年 | 楽曲 | タイアップ |
---|---|---|
2003年 | HELLO | ドワンゴ「いろメロミックス」CMソング(本人出演) |
HORIZON | 東映配給映画『スカイハイ 劇場版』主題歌 | |
SWEET VANILLA | ドワンゴ「いろメロミックス」CMソング(本人出演) | |
MASQUERADE | 松竹配給映画『CASSHERN』挿入歌 | |
SHINING OVER YOU | ニンテンドーゲームキューブ用ゲーム『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』CMソング | |
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