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横溝正史による日本の小説 ウィキペディアから
『貸しボート十三号』(かしボートじゅうさんごう)は、横溝正史の中編推理小説、および表題作とする中編小説集。「金田一耕助シリーズ」の一つ。『別冊週刊朝日』1957年(昭和32年)8月号に掲載された後、1958年(昭和33年)9月に中編化された[1]。
本作を原作とするテレビドラマが2020年に放映された。
日曜日、隅田川の川口、浜離宮公園沖に流れ着いた貸しボートから、男女の惨死体が発見された。どちらも首がノコギリで途中(女は7割ほど、男は3割ほど)まで挽き切られ、ちぎれかかっていた。女の方はレーンコートの下に派手なスーツを着ており、スーツの上から心臓を刃物でえぐられていたが、死因はひもによる絞殺であり、これだけなら首を絞めたあと念のためとどめを刺したようにも見えた。それに対して奇妙なのは男の方で、女と違ってこちらはパンツ一丁(猿股一丁)の姿であり、死因も心臓を刃物で刺されたものである一方、その後わざわざひもで首を絞められていた。等々力警部とともに現場に訪れた金田一耕助は、犯人の最初の計画では死体の身元を分からなくするために首を切断しようとした、そこに余儀ない事情が突発して首斬り作業を中止せざるを得なくなったと、捜査陣に説く。
夕方になって、吾妻橋ぎわの貸しボート屋の店員の証言で、問題の貸しボート十三号を金曜日の晩に借りてそれきり返しに来なかった客は、金縁眼鏡をかけて、鼻下に美しいひげをはやした中年の紳士であることが判明した。月曜日の10時ごろ、その中年紳士に容貌が似ている役所勤めの大木健造が出頭し、殺されたのは妻の藤子と、大木の娘の家庭教師で名門として知られるX大学ボート部に所属している駿河譲治であることを申し出た。大木は否定するが、藤子と駿河の間に不倫の噂があったらしい。所轄署の平出警部補は大木を容疑者と疑うが、ボート屋の店員によると、ボートを借りた男はもう少し柄が大きかったように思うとのことであった。
金田一は、X大学ボート部のボートハウスが殺人の現場の可能性が高いと考え、ボートハウスがある戸田に、等々力警部たちと向かう。ボートハウスを検分すると、最近誰かがコンクリートをきれいに洗い落としたらしく、泥の跡も残っていなかった。いよいよボートハウスが犯行現場らしく思え、金田一は仮にここが現場であるなら、吾妻橋から戸田までボートで漕ぎ上ってくるには、よほどボートに自信のある男に違いないと考え、同じく戸田にあるX大学ボート部の合宿所にボート部員たちの話を聞きにいく。
初めは警察に対する警戒心と敵意で、進んで話そうとしなかった部員たちだったが、面談者に金田一が混ざっていると知ると、急に態度を改めた。部員たちは、金田一が一流企業として知られる神門産業の総帥・神門貫太郎から絶大な信頼を得ていることや、神門の弟で神門産業専務の川崎重人とも昵懇であることを、殺された駿河から聞いていた。駿河は専務の川崎の娘・美穂子の婚約者であった。
原型短編版では金田一耕助が事情を寮母からまとめて聞き出し「金縁眼鏡に口髭の男」の正体に気が付いたところで、ナレーションが「読者諸君も真相に気が付いただろう」と一気に真相を説明して終了している。この際、冒頭で金田一たちが「なぜ2人の遺体のうち女の方はレインコートなのに、男の方は猿股姿なのか?」とわざわざ疑問に上げた問題が説明されないままになっている[3]。
改稿後の前半では捜査状況や警部補の口癖などの人物描写を細かく加筆しているが、大筋は変わっておらず、量的にも7割程度の増である。一方、後半ではボート部の関係者を各々個性的に登場させて悲劇に至るまでの経緯も細かく描写し、最後には神門邸での真相説明の晩餐会を演出するなど、元の約8倍に達する大幅な加筆を行っている。神門と金田一の関係に関する設定は元の短編には無い。
なお、改稿に際して以下のような登場人物名の変更がある。
『シリーズ横溝正史短編集II「金田一耕助踊る!」貸しボート十三号』[4]は、2020年1月18日にNHK BSプレミアムにて短編ドラマとして放送された[5]。
大幅に省略簡略化され順序も前後しているが、科白やナレーションのほぼ全てを原作から抽出した文言で構成している。
市外通話が交換手接続であるため受信者に発信地域が判るという原作(1957年)の時代の設定を排し、公衆電話は1996年以降に設置されたデジタル電話になっている。
その他、以下のような改変が見られる。
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