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丸山眞男の著作 ウィキペディアから
『日本政治思想史研究』(にほんせいじしそうしけんきゅう)は、丸山眞男の初期著作にして代表作の一つ。1940年から1944年に発表した論文3篇の書籍化として[1]、1952年初版、1983年新装版が東京大学出版会から出版された。1953年毎日出版文化賞受賞[2]。複数言語に翻訳もされている[3]。日本政治思想史分野の記念碑的著作であり、21世紀現代でも影響力を持っている[3][4]。
日本政治思想史研究 | ||
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著者 | 丸山眞男 | |
発行日 | 1952年 | |
発行元 | 東京大学出版会 | |
ジャンル | 学術書 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
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近世日本において、徳川政権の体制イデオロギー(官学)となった朱子学的思惟が徐々に解体されていく過程に、日本の思想面での近代化を見出す[4]。解体の担い手として、伊藤仁斎[5]、荻生徂徠[5]、本居宣長[5]、安藤昌益[5]、福澤諭吉[6]らを取り上げ、とくに荻生徂徠を最重要視する[7]。
以上を論じるにあたり、西洋哲学由来の「自然」と「作為」の対立をはじめ、「存在」(ザイン)と「当為」(ゾルレン)の対立[8]、自然法論、ヘーゲル、ボルケナウ、マンハイム[9]、テンニース[9]、シュミット[9]、マルクス主義歴史学[9]などを援用する。
1937年、東京帝国大学法学部を卒業した丸山は、南原繁の学士助手となる。当時の丸山は左翼学生であり、日本の伝統思想に興味がなく、西洋政治思想史を志していた[10]。しかし、新設予定の「東洋政治思想史」講座(1939年文部省が国体学のため新設するが、南原によって客観的研究のため運営される)に所属させることを南原が企図したため、丸山は不服ながら日本政治思想史を研究することになる[10]。
1940年、助教授になるための「助手論文」として「近世儒教の発展に於ける徂徠学の特質並にその国学との関連」を発表[10]。同論文は『国家学会雑誌』に掲載された[10]。助教授になると、同講座で講義しつつ「近世日本政治思想における「自然」と「作為」」、「国民主義理論の形成」(書籍では「国民主義の「前期的」形成」に改題)などの論文を同誌に発表する。「国民主義理論の形成」は、召集令状により出征する日の朝に、新宿駅で同僚の辻清明に原稿を手渡したとされる[1]。その後、過酷な従軍生活、広島での被爆、終戦、復員、教授就任を経て、1952年にこれら3篇を書籍にまとめ、東京大学出版会から刊行した。
本書の内容は、戦中の時局を暗に反映している[11]。例えば、本居宣長は戦中体制側に礼賛されていたが、丸山はその中であえて宣長の反体制(反幕府)的側面を強調した[11]。
1974年には英訳が刊行された[12]。1983年の新装版には、英訳への序文の日本語版が収録されている[12]。
晩年の丸山は、自身の業績のうち『現代政治の思想と行動』などの現代政治学を「夜店」と称し、本書などの思想史学を「本店」と称していた[13]。
本書は、刊行当時は若手研究者による先鋭的な著作だったが、有名になるにつれ、分野の教科書的・権威的な著作として読まれるようになった[14]。(似た例として、中国思想史学の島田虔次の李贄研究や、日本中世史学の黒田俊雄の権門体制・顕密体制論がある[14]。)
本書は様々な観点から批判されている[15]。なかでも、尾藤正英『日本封建思想史研究』(1961年)や、渡辺浩『近世日本社会と宋学』(1985年、新装版2010年)は、朱子学が官学化した時期は、丸山の言うような近世初期の林羅山以降ではなく、近世後期の寛政異学の禁以降である、という旨の批判をした[15][16][17]。このことは、津田左右吉が『文学に現はれたる我が国民思想の研究 武士文学の時代』(1917年)で丸山より前に既に論じていた[15][12]。丸山自身も1974年の英訳への序文で、官学化の時期について訂正している[12][17]。
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