七高僧(しちこうそう)とは、浄土真宗の宗祖親鸞が選定したインド(天竺)の龍樹・天親、中国(震旦)の曇鸞・道綽・善導、日本(和朝)の源信・源空の7人の高僧のこと。「正信念仏偈」の依釈段や、『高僧和讃』に示してある。
浄土真宗の寺院には七高僧の掛軸の軸絵が本尊の脇などに祀られている事が多い。龍樹と天親は「インド僧」ではなく「菩薩」の姿に描かれていることが多い。
- 願生浄土者
- 自らが、阿弥陀仏の本願を信じた上で、念仏し生きたこと。
- 自力による行・念仏によって浄土往生しようとした者は、選定されていない。
- 開顕の釈功
- 阿弥陀仏の本願を顕かにする上で、先人の踏襲ではなく、独自の教義展開(発揮)があること。
- 諸説の了否
- 阿弥陀仏の本願の趣旨に相応していること。
- 製作の有無
- 書物を著し後世に弘伝したこと。
- 七高僧の著述を総称して、「七祖聖教」(しちそしょうぎょう)・「七高僧論釈章疏」[1]とよぶ。
- 尊称
- 「龍樹菩薩」、「龍樹大士」と尊称する。(『高僧和讃』〈以下、略す。〉)
- 発揮
- 「難易二道[2]」・「二道の鴻判は南天[注 1]の功[3]」
- 著作
- 『十住毘婆沙論』全17巻[注 2]
- 『十二礼』
- 尊称
- 「天親菩薩」と尊称する。浄土教以外では「世親」と呼ばれることが多い。
- 発揮
- 「宣布一心[2]」・「宣布一心は北天[注 3]の功[3]」
- 著作
- 『無量寿経優婆提舎願生偈』(『浄土論』)
- 尊称
- 「曇鸞大師」、「曇鸞和尚」と尊称する。
- 発揮
- 「自力他力[2]」・「顕示他力」・「顕示他力は雁門[注 4]の功[3]」
- 著作
- 『無量寿経優婆提舎願生偈註』(『浄土論註』・『往生論註』)
- 『讃阿弥陀仏偈』
- 尊称
- 「道綽襌師」、「道綽大師」と尊称する。
- 発揮
- 「聖浄二門[2]」・「二門廃立」・「二門廃立は西河[注 5]の功[3]」
- 著作
- 『安楽集』
- 尊称
- 「善導大師」、「善導和尚」と尊称する。
- 発揮
- 「正雑廃立[2]」(しょうぞうはいりゅう)・「古今楷定」(ここんかいじょう)・「古今楷定は終南[注 6]の功[3]」
- 著作
- 『観無量寿経疏』(『観経疏』・『観経四帖疏』・『観経義』)[注 7]
- 『往生礼讃偈』(『往生礼讃』)
- 『法事讃』[注 8]
- 『般舟讃』[注 9]
- 『観念法門』[注 10]
- 尊称
- 「源信和尚」、「源信大師」と尊称する。
- 発揮
- 「専雑得失[2]」・「報化弁立」(ほうけべんりゅう)「報化弁立は横川[注 11]の功[3]」
- 著作
- 『往生要集』
親鸞の師、法然房源空。
- 尊称
- 「源空聖人」、もしくは「聖人」と尊称する。『歎異抄』第二章においては、「ヨキヒト」(よき人)とも敬称している。
- 一般には「源空上人」、「法然上人」と表記・尊称する。
- 発揮
- 「選択称名[2]」(せんじゃくしょうみょう)・「弘興選択」・「弘興選択は吉水[注 12][注 13]の功[3]」
- 著作
- 『選択本願念仏集』(『選択集』)
注釈
南天 - (北インド(北天竺)に対する南の意で)南天竺の出身であることにちなむ。 『十住毘婆沙論』全17巻三十五品の内、浄土真宗の依拠聖典として用いられるのは、巻第五「易行品第九」のみである。『十住毘婆沙論』「易行品」と呼称する。
西河(さいが) - 居住した玄中寺の所在地名。西河汶水。
『観無量寿経疏』の各巻題は、『観経玄義分 巻第一』・『観経序分義 巻第二』・『観経正宗分定善義 巻第三』・『観経正宗分散善義 巻第四』である。
『法事讃』…上巻の首題は、『転経行道願往生浄土法事讃』、尾題は『西方浄土法事讃』で、下巻は首題・尾題ともに『安楽行道転経願生浄土法事讃』である。
『般舟讃』…首題は『依観経等明般舟三昧行道往生讃』、尾題は『般舟三昧行道往生讃』である。
『観念法門』…首題は『観念阿弥陀仏相海三昧功徳法門』、尾題は『観念阿弥陀仏相海三昧功徳法門経』である。
横川(よかわ) - 居住した比叡山延暦寺内の地名。
出典
七高僧論釈章疏…『真宗大谷派宗憲』第11条「正依の聖教」二 七高僧論釈章疏より
勧学寮 編 『浄土三部経と七祖の教え』P.95 - 98