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推進剤を噴射する事によってその反動で推力を得るエンジン ウィキペディアから
ロケットエンジンとは推進剤を噴射する事によってその反動で推力を得るエンジンである。ニュートンの第3法則に基づく。
たとえば化学ロケットのロケットエンジンは、燃料(と酸化剤など)の化学反応=燃焼による高温、高圧のガスを噴射する事によってその反動で推進力を得る。通常、エネルギー源と噴射する物質の双方を指して(ポピュラーな化学ロケットでは同一ということもあり)推進剤と言う。燃焼室の化学反応で得られた圧力はロケットエンジンノズルによって速度に変換され、高速で後方に噴射される。電気推進の場合は電気的な効果により推進剤を加速するため、ノズルを備えないものもある。
ジェットエンジンとの違いは、ジェットエンジンが外部の空気を吸入・圧縮して燃料と混合し燃焼するのに対して、ロケットエンジンはあらかじめ搭載している酸化剤を燃料と混合燃焼させる点がある。このため、短時間で大きな力や仕事率を得られる、真空の宇宙や大気圧の小さい高高度、水中などでも使用可能である、といった利点の反面、長時間の連続使用には不向きである。損耗が激しい事や宇宙飛行・兵器利用など回収の難しい用途が多い事から多くは使い捨て方式だが、スペースシャトル用のSSMEやファルコン9のマーリンエンジンなど再利用可能な物も一部存在する。(「ジェット推進研究所」がロケットの研究所であることからもわかるように、語義的にはロケットエンジンも「ジェット」によるエンジンであることには変わりない。しかし現在一般的には「ジェットエンジン」はエアブリージングのもののみを指す。)
化学ロケットの場合、推力はガスの噴出速度と燃焼圧力、外部圧力の比によって決定される[要出典]。大気中においては大気圧が存在するため、圧力項のファクターが大きく、相対的に高い燃焼圧力が要求される。真空中になると外部圧力がないため圧力項が無視され、代わって噴出速度(高い比推力)が重視されるようになる[要出典]。
ロケットの効率を示す指標として比推力がある。これはガスの噴出速度を重力加速度で除算したもので、質量1kgの推進剤で1Nの推力をどれだけの時間持続できるかという意味を持つ。燃費と異なり、数値が大きいほど効率が良い。電気推進では比推力を重視しているため、推力が極端に小さい代わりに比推力が化学ロケットよりもはるかに大きい[要出典]。
化学ロケットには固体燃料ロケット、液体燃料ロケット、ハイブリッドロケット等がある。固体燃料ロケットは構造が単純で小型化しやすく保存も容易だが、一度燃焼を始めると制御が難しいため、従来は小型のミサイルなどに用いられて来たが、近年は技術開発により大型のロケット/ミサイルでの使用例も多くなっている。液体燃料ロケットは制御は固体燃料ロケットに比べて容易いが、燃料の保存、打ち上げプロセスが複雑である。ハイブリッドロケットは両者の利点を併せ持つものとして研究されている。
ロケットエンジンの燃焼温度は燃料、燃焼圧力などによるが最大で3000℃以上に達する[要出典]。ロケットエンジンの燃焼温度は燃焼室の素材の融点よりも高く、グラファイトやタングステンの融点よりは低いがそれらの材料は酸化されるので適さない。再生冷却やアブレーション冷却、フィルム冷却等により既存の材料を強度を損なわない温度下で使用する。セラミックや傾斜機能材料等、耐熱性に優れた素材の開発も進められている。化学推進ロケットの性能は事実上推進剤の組成によって決まる[要出典]。
ロケットの冷却方法[要出典]:
再生冷却では従来は管をろう付けする事によって燃焼室やノズルを形成していたが、この製造方法は熟練を要し、品質を維持する事は困難だった。近年は旧ソビエト連邦で開発された、重量は多少増すが頑丈で信頼性が高く、品質管理が比較的容易なチャンネルウォール構造が増えつつある。
固体燃料ロケットエンジンはロケットモータとも呼ばれる。内部に固体の推進剤が入っている。燃料を貯蔵する容器は高張力鋼や炭素繊維強化プラスチック等の複合材で出来ている。燃焼形式は主にノズルに近い部分から徐々に燃える端面燃焼方式と燃料がマカロニのように中心部に穴のある形状で内部から外部へ燃焼が進む内面燃焼方式が用いられる。端面燃焼方式の場合、燃焼面積が一定の為、一定の推力を持続するが、モーターケースは高温高圧のガスに晒されるので耐熱性を要求される。一方、内面燃焼方式は普通の円形の穴を開けた形状にすると燃焼が進むにつれ燃焼面積が増加し推力が変化するので推力を調整する為に断面形状が工夫されている。一般的には推力を持続させる際は端面燃焼方式が、短時間で高推力を出す際は光芒断面の内面燃焼方式が用いられる。
固体燃料ロケットの大型化には困難が伴う。仮に大きさを2倍にした場合、二乗三乗の法則により、体積、重量は8倍になるが、燃焼断面の表面積は4倍にしかならないため、増加した重量に比例した推力を得るためには燃焼速度を2倍にする必要がある[1]。そのため、大型化すればそれに応じて高速燃焼の組成の推進剤を開発する必要がある。従って、固体推進剤の燃焼速度の問題が解決されない限り、実用上の固体燃料ロケットの大きさには上限があるとされる。
[要出典]
[要出典]
液体燃料を推進剤として使用する形式のロケットエンジンである。推進剤の組み合わせで多様な用途に用いられる。燃焼方式にはガス発生器サイクルや二段燃焼サイクルやエキスパンダーサイクル等、複数の形式がある。
液体燃料ロケットエンジンは推進剤をエンジンに供給する方式によって、以下のように分類される。
少量の推進剤を燃焼させてターボポンプを駆動する方式。
ガス発生器サイクルと同様に推進剤を燃焼させてターボポンプを駆動し、燃焼ガスをメインの燃焼室へ戻す。推進剤の無駄が無いため熱効率を高くできる。
BE-4
燃焼室の冷却に用いた燃料でターボポンプを駆動する。上段エンジンに適しており、再着火能力を備える物も多い。
エキスパンダーサイクルと同様に冷却に用いた燃料でターボポンプを駆動するが、ターボポンプを駆動した部分の水素ガスをノズル内に捨て燃焼には用いないという開いたエキスパンダーサイクル。
ヘリウムガスや窒素ガス等でタンク内を加圧する事によって推進剤を燃焼室に送る。ターボポンプを使用する方式よりも構造が単純で信頼性が高い。構造上大規模なエンジンには適さない。
三液推進系には複数の形式があり、三種類の推進剤を組み合わせる形式と飛行段階に応じて推進剤を切り替える形式がある。前者の場合リチウム/フッ素・水素を同時に燃焼させる方式があり、後者の場合は単段式宇宙輸送機への搭載を企図して低高度ではケロシン/液体酸素、高度が上昇すると液体水素/液体酸素の組み合わせに切り替える方法が模索される。低高度で密度の大きいケロシンを燃焼することで燃料タンクの小型化が可能になり高高度では比推力の大きい水素を燃焼する。
ポゴ振動(Pogo振動)とは液体燃料ロケットの飛行中にエンジンが共鳴振動する現象である。このような振動は燃料の流量が増えた時(燃焼室内の圧力は下がる)や燃料流量が減った場合(燃焼室内の圧力は上昇する)、圧力の変動が順番に集まり、エンジン内の圧力の変動が引き金になり発振する。 燃料システムの共鳴振動周波数で発生すると振動は徐々に強まり機体を破壊する。
Pogo振動のPogoはアクロニムではなく、英語のPogoスティック(和名ホッピング)に由来する。
この現象が十分解明されていなかった1950年代から60年代のロケットが少なからずこの現象により失われた。
機種 | RS-25D | LE-7A | RD-0120 | ヴァルカン2 | RS-68 | YF-77 |
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開発国 | アメリカ合衆国 | 日本 | ソビエト連邦 | 欧州宇宙機関 | アメリカ合衆国 | 中華人民共和国 |
形式 | 二段燃焼サイクル | 二段燃焼サイクル | 二段燃焼サイクル | ガス発生器サイクル | ガス発生器サイクル | ガス発生器サイクル |
全高 | 4.24 m | 3.7 m | 4.55 m | 3.45 m | 5.20 m | 4.20 m |
直径 | 1.63 m | 1.82 m | 2.42 m | 2.1 m | 2.43 m | |
重量 | 3,177 kg | 1,832 kg | 3,449 kg | 2,100 kg | 6,696 kg | 2,700 kg |
推進剤 | 液体水素と液体酸素 | 液体水素と液体酸素 | 液体水素と液体酸素 | 液体水素と液体酸素 | 液体水素と液体酸素 | 液体水素と液体酸素 |
主燃料室圧力 | 18.9 MPa | 12.3MPa | 21.8 MPa | 11.5 MPa | 9.7 MPa | 10.2 MPa |
真空中比推力 | 453秒 | 440秒 | 454秒 | 434秒 | 409秒 | 430秒 |
真空中での推力 | 2.278MN | 1.098MN | 1.961MN | 1.340MN | 3.370MN | 0.700MN |
地上での推力 | 1.817MN | 1.517MN | 0.960MN | 2.949MN | 0.510MN | |
搭載 | スペースシャトル | H-IIAロケット H-IIBロケット | エネルギア | アリアンV | デルタ IV | 長征5号 |
RL-10 | HM7B | Vinci | CE-7.5 | YF-75 | RD-0146 | ES-702 | ES-1001 | LE-5 | LE-5A | LE-5B | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
開発国 | アメリカ合衆国 | フランス | フランス | インド | 中華人民共和国 | ロシア | 日本 | 日本 | 日本 | 日本 | 日本 |
燃焼サイクル | エキスパンダーサイクル | ガス発生器サイクル | エキスパンダーサイクル | 二段燃焼サイクル | ガス発生器サイクル | エキスパンダーサイクル | ガス発生器サイクル | ガス発生器サイクル | ガス発生器サイクル | エキスパンダブリードサイクル (ノズルエキスパンダ) |
エキスパンダブリードサイクル (チャンバエキスパンダ) |
真空中推力 | 66.7 kN (6.80 tf) | 62.7 kN (6.39 tf) | 180 kN (18 tf) | 73 kN (7.4 tf) | 78.45 kN (8.000 tf) | 98.1 kN (10.00 tf) | 68.6 kN (7.00 tf)[2] | 98 kN (10.0 tf)[3] | 102.9 kN (10.49 tf) | 121.5 kN (12.39 tf) | 137.2 kN (13.99 tf) |
混合比 | 5.05 | 5.2 | 6.0 | 5.5 | 5 | 5 | |||||
膨張比 | 40 | 40 | 40 | 140 | 130 | 110 | |||||
真空中比推力 (秒) | 433 | 444.2 | 465 | 454 | 437 | 463 | 425[4] | 425[5] | 450 | 452 | 447 |
燃焼圧力 MPa | 2.35 | 3.5 | 6.1 | 5.8 | 3.68 | 7.74 | 2.45 | 3.51 | 3.65 | 3.98 | 3.58 |
LH2ターボポンプ回転数 min-1 | 125,000 | 41,000 | 46,310 | 50,000 | 51,000 | 52,000 | |||||
LOXターボポンプ回転数 min-1 | 16,680 | 21,080 | 16,000 | 17,000 | 18,000 | ||||||
全長 m | 1.73 | 1.8 | 2.2~4.2 | 2.14 | 1.5 | 2.2 | 2.68 | 2.69 | 2.79 | ||
質量 kg | 135 | 165 | 280 | 435 | 550 | 242 | 255.8 | 259.4[6] | 255 | 248 | 285 |
技術実証用のオーダーメイドものも多いが、イオンエンジンを中心に製品化されている。現在でも多くの研究がすすむ。
推進剤を電熱線やセラミックヒーター等で温めるだけなので、初期の人工衛星には多く搭載された。
極めて高い比推力を発揮し、現在の商用衛星では標準的な装備となってきている。
多くの1-2kW級アークジェットが衛星システムに搭載された実績を持つ。
旧ソビエト、ヨーロッパを中心に実績を持つほか、アメリカでも意欲的に研究がすすむ。
電磁力を使用するスラスタ。単純なシステムと高いエネルギー密度を実現できる。
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