デオキシリボ核酸
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デオキシリボ核酸(デオキシリボかくさん、英: deoxyribonucleic acid、DNA[1])は、2本のポリヌクレオチド鎖が互いに巻きついて二重らせんを形成しているポリマーである。このポリマーは、すべての既知の生物と多くのウイルスの発生、機能、成長、および生殖のための遺伝的命令を伝達する。DNAはリボ核酸(英: ribonucleic acid、RNA)とともに核酸と総称される。核酸はタンパク質、脂質、複合多糖と並んで、すべての既知の生命体にとって不可欠な4大生体高分子のひとつである。
DNAの二本鎖は、ヌクレオチドと呼ばれるより単純な単量体単位から構成されていることから、ポリヌクレオチドと呼ばれる[2][3]。各ヌクレオチドは、4つの窒素含有核酸塩基(シトシン: C、グアニン: G、アデニン: A、チミン: T)のうちの1つ、デオキシリボースと呼ばれる糖、およびリン酸基で構成されている。あるヌクレオチドの糖と、次のヌクレオチドのリン酸が共有結合(ホスホジエステル結合と呼ばれる)によって鎖状に結合し、糖-リン酸が交互に繰り返される主鎖が形成される。二本のポリヌクレオチド鎖の窒素塩基は、塩基対合則(AとT、CとG)に従って水素結合で結合し、二本鎖DNAを形成する。窒素塩基は、単環のピリミジンと二重環のプリンという2つのグループに分類される。DNAでは、チミンとシトシンがピリミジン、アデニンとグアニンがプリンである。
二本鎖DNAの両鎖は同一の生物学的情報を保存している。この情報は2本の鎖が分離するときに複製される。DNAの大部分(ヒトでは98%以上)はノンコーディングであり、これらの部分はタンパク質配列のパターンとしては機能しない。DNAの2本の鎖は互いに反対方向に走っているため、逆平行になっている。それぞれの糖には4種類の核酸塩基(または塩基)のうちの1つが結合している。遺伝情報をコード(符号化)するのは、主鎖に沿ったこれら4種類の核酸塩基の配列である。RNA(リボ核酸)鎖はDNA鎖を鋳型として転写と呼ばれる過程で作られ、その際にDNA塩基は対応する塩基と交換されるが、チミン(T)の場合は例外で、RNAはウラシル(U)と交換する[4]。これらのRNA鎖は翻訳と呼ばれる過程で、遺伝暗号(英語版)に基づいてタンパク質のアミノ酸配列を決定する。
真核細胞では、DNAは染色体と呼ばれる長い構造体に組織化されている。これらの染色体は、通常の細胞分裂の前にDNA複製過程で複製され、それぞれの娘細胞に完全な染色体の集合を提供する。真核生物(動物、植物、真菌類、原生生物)はDNAの大部分を核DNAとして細胞核内に保存し、一部をミトコンドリアDNAとしてミトコンドリア内、あるいは葉緑体DNA(英語版)として葉緑体内に保存している[5]。対照的に、原核生物(細菌と古細菌)はDNAを細胞質内の環状染色体(英語版)にのみ保存している。真核生物の染色体内では、ヒストンなどのクロマチンタンパク質がDNAを小さくまとめて組織化している。これらの緻密な構造は、DNAと他のタンパク質との相互作用を導き、DNAのどの部分が転写されるかを制御するのに役立っている。