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『ダルタニャン物語』(ダルタニャンものがたり、D'Artagnan)は、アレクサンドル・デュマ・ペールの小説シリーズ。17世紀フランスやイギリスを舞台に、ガスコーニュ出身のダルタニャンの活躍を描く。ダルタニャンの表記は、ダルタニアン、ダルタニヤンなどもある。
歴史教師オーギュスト・マケ(fr)が草稿を書き、デュマはそれに手を加えていた。実質上の共著者とも言われるが、出版物にマケの名前は著作者の欄に書かれないのが一般的である。巻末の解説などで、マケの功績を説明しているものは存在する。
ダルタニャン物語は、第1部『三銃士』(1844年刊)、第2部『二十年後』(1845年刊)、第3部『ブラジュロンヌ子爵』(1851年刊)からなる。物語の概要は以下のとおり。各部の詳細については、それぞれのリンク先も参照のこと。
仏: Les Trois Mousquetaires(1844年刊)
一般に「三銃士」として知られる物語は、この第一部に当たる。ルイ13世の治世下、リシュリュー枢機卿が権勢をふるう時代。青年ダルタニャンは都会で一旗揚げる夢を抱いて、ガスコーニュの田舎からパリに出てきて「三銃士」たち、アトス、アラミス、ポルトスと意気投合する。ダルタニャンは英仏両国にまたがる陰謀に巻き込まれ、三銃士の助けも得ながら大活躍する。
ダルタニャン、アトス、アラミス、ポルトスだと合計四人なので、厳密には「三銃士」ではない。しかし(銃士になる前の)ダルタニャンが主役として「三銃士」と出会う形なので、表題が「三銃士」となっている[1]。
第1部から20年後。国王ルイ14世はまだ幼く、大后アンヌ・ドートリッシュが摂政に立つが、政治の実権を握るのはマザラン枢機卿である。フロンドの乱が起こり国内の貴族が対立する中で、かつての四銃士たちも敵味方に分かれる。イギリスで起こった清教徒革命が、4人の運命に大きく関わってくる。
仏: Le Vicomte de Bragelonne - ou Dix ans plus tard
第2部から、さらに10年後。「太陽王」ルイの親政が始まり、財務監督官コルベールと財務卿フーケの確執、デルブレー卿(アラミス)の陰謀などが渦巻く。アトスの子ラウル(ブラジュロンヌ子爵)の恋の行方、そして壮年となり元帥杖を渇望してやまないダルタニャンなども描かれている。
この第3部は、シリーズ中もっとも長大である。華麗な宮廷描写や「鉄仮面」として知られるエピソードが含まれて、全ダルタニャン物語の半分以上を占めている。
角川文庫、岩波文庫、講談社文庫(下記他社で新版)で刊行されている。岩波文庫版は、生島遼一訳『三銃士』全2巻(第1部の全訳)。角川文庫版は、竹村猛訳『三銃士』全3巻(旧版は全2巻、第1部の全訳)と、第3部『ブラジュロンヌ子爵』の後半の一部が『鉄仮面』(石川登志夫訳『仮面の男』、角川文庫)。『三銃士』は、他に児童版の抄訳で幾つかの出版社で出されている。
講談社文庫版(全11巻、1975年)は、鈴木力衛による完訳版。初版は講談社・箱入単行本[4]。訳者没後の文庫化に際し、同僚・弟子たちが再度改訳を行った。
約十数年間にわたり重版されたが、1990年代前半に絶版となった。しばらく復刊されなかった理由は、差別用語表記が多いためと見られる[5]。多くの復刊要望があり、問題となる用語を修正した新装選書版が、ブッキング(2001年)を経て復刊ドットコム(2011年)で再刊。2024年5月よりグーテンベルク21(電子書籍)で刊行。
鈴木力衛訳「ダルタニャン物語」の題名は以下。講談社文庫版・復刊ドットコム版共に、タイトルは同一である。
巻数 | 題名(鈴木力衛訳) | 対応部 |
---|---|---|
1巻 | 友を選ばば三銃士 | 第一部『三銃士』 |
2巻 | 妖婦ミレディーの秘密 | |
3巻 | 我は王軍、友は叛軍 | 第二部『二十年後』 |
4巻 | 謎の修道僧 | |
5巻 | 復讐鬼 | |
6巻 | 将軍と二つの影 | 第三部『ブラジュロンヌ子爵』 |
7巻 | ノートルダムの居酒屋 | |
8巻 | 華麗なる饗宴 | |
9巻 | 三つの恋の物語 | |
10巻 | 鉄仮面 | |
11巻 | 剣よ、さらば | |
デュマは、物語の序文で自ら『ダルタニャン氏の覚え書』、『ラ・フェール伯爵の覚え書』を読んだとしているが、実際に参考にしたのは『ダルタニャン氏の覚え書』で、『ラ・フェール伯爵の覚え書』は架空の本と考えられている。
『ダルタニャン氏の覚え書き』は、回想録の形式をとっているが、実在した銃士隊長・「シャルル・ダルタニャン」を主人公として、クールチル・ド・サンドラスによって執筆された読み物である。サンドラスは、宮廷ゴシップを書き立ててバスティーユ牢獄に投獄されたこともある人物で、『ダルタニャン氏の覚え書』も回想録仕立てのゴシップ小説として1700年にオランダで出版されたものである。とはいえ、サンドラスの小説は本人の元銃士としての体験をもとにしており、登場人物やストーリーも含めて、『ダルタニャン氏の覚え書き』とデュマの小説との一致は多く、デュマが参考にしたことは間違いない。
また、三銃士であるアトス、ポルトス、アラミスにも実在のモデルが存在し、それぞれ本名はアトスがアルマン・ドゥ・シレーグ・ダトス・ドートヴィエイユ、ポルトスがイザック・ドゥ・ポルトー、アラミスがアンリ・ダラミツでいずれもガスコーニュ出身の貴族である。
一方、小説のモデルとなったダルタニャンの子孫は現存していて、マルキ・ド・モンテスキューというアルマニャック産のブランデーを製造している。
「皆は一人の為に、一人は皆の為に」は、『三銃士』第9章ラストにて、ダルタニャンが発案した友情の誓いの言葉を、日本語に直訳したものである。フランス語原文では、"Tous pour un, un pour tous"しかし、生島遼一・竹村猛・鈴木力衛各人は、それぞれ違う意訳で日本語で記している。
原作でこの言葉が登場するのは、手を重ねて誓いを立てた1度きりで、この合言葉で銃士たちが剣を触れて掲げる場面は登場しない。
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