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ジソピラミド(Disopyramide)は、心室性頻拍の治療に用いられる抗不整脈薬である[1]。本剤はナトリウムチャネル遮断薬であり、クラスIaの抗不整脈薬に分類される[2][3]。ジソピラミドは心室心筋に負の変力作用を及ぼし、収縮力を著しく低下させる[4][5]。また、心臓に対する抗コリン作用も有しており、多くの副作用の原因となっている。ジソピラミドは経口および静脈内投与が可能であり、毒性は低い[5]。
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
販売名 | Norpace |
Drugs.com | monograph |
MedlinePlus | a682408 |
胎児危険度分類 | |
法的規制 | |
投与経路 | Oral, intravenous |
薬物動態データ | |
生物学的利用能 | High |
血漿タンパク結合 | 50% to 65% (concentration-dependent) |
代謝 | Hepatic (CYP3A4-mediated) |
半減期 | 6.7 hours (range 4 to 10 hours) |
排泄 | Renal (80%) |
識別 | |
CAS番号 | 3737-09-5 |
ATCコード | C01BA03 (WHO) |
PubChem | CID: 3114 |
IUPHAR/BPS | 7167 |
DrugBank | DB00280 |
ChemSpider | 3002 |
UNII | GFO928U8MQ |
KEGG | D00303 |
ChEBI | CHEBI:4657 |
ChEMBL | CHEMBL517 |
化学的データ | |
化学式 | C21H29N3O |
分子量 | 339.48 g·mol−1 |
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物理的データ | |
融点 | 94.5 - 95 °C (202.1 - 203.0 °F) |
左心室収縮機能障害および低駆出率の患者には投与してはならない。LV収縮機能が正常または異常な患者にジソピラミドを使用しても、心不全や重篤低血圧は認められない。
重大な副作用として、
が知られている。
が生じうる。
ジソピラミドのIa群の活性は、ナトリウムチャネルを標的として伝導を阻害するという点で、キニジンと類似している[3][5]。ジソピラミドは、心臓の活動電位の第0相における心筋細胞のナトリウム透過性の上昇を抑制し、その結果、内向きナトリウム電流を減少させる。この結果、興奮の閾値が上昇し、立ち上がり速度が低下する[3]。ジソピラミドは、QRS波とP波の継続時間を延長することによりPR間隔を延長する[5]。この効果は心房から心室への活動電位の伝搬を遅らせるため、心室頻拍の治療に特に適している。ジソピラミドは、βまたはαアドレナリン受容体の遮断薬としては作用しないが、心室心筋に対して有意な陰性変力作用を示す[10]。その結果、ジソピラミドの使用は収縮力を低用量で42%、高用量で100%まで低下させ、心不全を引き起こす可能性がある[5]。
Levitesは、虚血性心疾患後のリエントリー性不整脈に対するジソピラミドの二次的な作用機序の可能性を提案した。ジソピラミドは不応期を延長させるだけでなく、梗塞心筋と正常心筋の不応期の不均質性を減少させる[4]。このことは、信号が励起されない不応状態の組織に遭遇する可能性が高くなるため、回帰性不整脈の脱分極の可能性を減少させる[11]。これは、洞房結節と房室結節への組織のペースメーカー制御を回復させるので、心房細動と心室細動の治療法の可能性を提供するものである[12]。
肥大型心筋症(HCM)は、最も一般的な遺伝性心疾患であり、一般人口の1⁄500~1⁄1000の割合で発生すると言われている。米国には肥大型心筋症の患者が60万人、日本では21,900人[13]居ると推定される。HCMの最も一般的な型は、収縮期僧帽弁前方運動による左室(LV)内閉塞と僧帽弁-中隔接触を呈し、心エコーで容易に診断される。陰性変力薬による薬物治療が第一選択である。β遮断薬が最初に使用され、息切れ、胸痛、運動不耐性の症状を改善するが、安静時の左室内圧較差は減少せず、症状をコントロールするには不充分であることが多い。多くの研究者や臨床医は、ジソピラミド徐放製剤が安静時血圧較差を減少させ、症状を改善させる最も強力な薬剤であると考えている[14][15][16][17]。ジソピラミドは30年以上に亘って活発に使用されてきた[18]。閉塞性HCMに対するジソピラミド投与は、閉塞性HCM治療に関する2011年の米国心臓協会/米国心臓病学会財団のガイドラインでIIaの推奨となっている[19]。IIaの治療推奨とは、ベネフィットがリスクを上回り、治療を行うことが妥当であることを示している。
陰性変力薬は、左室の駆出加速度および僧帽弁に掛かる流体力学的な力を減少させることにより、左室の閉塞を改善する。ジソピラミドの特別な効果はその強力な陰性変力作用によるもので、直接比較ではβ遮断薬やベラパミルのいずれよりも血圧低下の効果が高い[20]。ジソピラミドは最も頻繁にβ遮断薬と併用される。β遮断薬に抵抗性の患者に使用した場合、ジソピラミドは60%の症例で有効であり、外科的中隔切除術のような侵襲的処置が必要ない程度に症状や較差を軽減することができる[17]。
ジソピラミドはその有効性にもかかわらず、大きな副作用が1つあるため米国での使用は制限されているが、カナダ、英国、日本では広く使用されている。迷走神経遮断は予想通り口腔乾燥を引き起こし、前立腺肥大症の男性では尿閉を引き起こす可能性がある。Teichmanらは、ピリドスチグミンとジソピラミドの併用により、抗不整脈作用を損なうことなく迷走神経毒性の副作用を大幅に軽減することを示した[21]。この併用療法は、閉塞性HCMにおいても大規模なコホートにおいて、有効かつ安全であることが示されている[17]。臨床家の中には、ジソピラミドの投与を開始した全ての患者にピリドスチグミン徐放製剤を処方する医師も居る[22]。閉塞性HCMでは用量反応相関があり、高用量でより低い較差が得られるため、この併用はジソピラミドの高用量投与に対する許容度を高める。
ジソピラミドに関するもう一つの懸念は、そのI型の抗不整脈作用により突然死を誘発する可能性があるという仮説であった。しかし、ある多施設登録と最近の2つのコホート登録により、突然死の発生率は病気そのものによるものよりも低いことが示され、この懸念はほとんど消失した[14][15][17]。
ジソピラミドは一般に、外科的中隔切除術(開心術)やアルコール中隔焼灼(心臓発作の抑制)による侵襲的中隔縮小術に進む前に患者に試される最後の薬剤であるという臨床的観点から、この薬剤に関するこれらの懸念は理解されなければならない。これらの侵襲的な処置は、いずれも罹患率と死亡率のリスクがある。
選ばれた患者に対しては、侵襲的な中隔縮小術に進む前にジソピラミドの経口投与を試みることは妥当な方法である。ジソピラミドに反応した患者には、引き続き同薬剤が投与される。障害が残る患者や副作用のある患者は、速やかに中隔縮小術に移行する。このような段階的な戦略を用いることで、生存期間は年齢をマッチさせた正常な米国人集団で観察されるものと変わらないと報告されている[17]。
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