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コショウ属(コショウぞく、学名: Piper)は、コショウ目コショウ科に分類される属の1つである。2,000種以上が知られる大きな属であり、最もよく使われる香辛料の1つであるコショウの他にヒハツ (インドナガコショウ)、ヒハツモドキ (ジャワナガコショウ)、ヒッチョウカ、キンマ、カヴァなどが含まれる。日本にはフウトウカズラ(図1a)とタイヨウフウトウカズラの2種が自生しており、沖縄ではヒハツモドキ(図1b)が帰化している。
コショウ属 | ||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Piper L. (1753)[1] | ||||||||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||||||||
コショウ Piper nigrum L. (1753)[2] | ||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||
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下位分類 | ||||||||||||||||||
コショウ属の植物は多くは低木やつる性木本であるが、小高木や草本となる種もいる。葉は互生し、葉脈は掌状または羽状。花序はふつう葉と対生してつく。花は小さく、花被を欠き、両性または単性。果実は多肉果、種子を1個含む。精油やアルカロイドをもつ。
多くは低木または木本性のつる植物(根で付着)であるが、一部は草本や小高木になる[1][3][4][5](下図2a–c)。精油を含み、しばしば芳香がある[3]。節の部分が太くなる[3]。茎の断面では外側に維管束が1輪に配置し、その内側に維管束が散在する点で単子葉類に見られる散在中心柱に似ているが[3]、維管束形成層が生じて肥大成長する点で異なる[6]。
葉は互生し(下図2e, f)、単葉、心形から披針形(下図2d, e)、葉柄をもち、ときに基部が非相性(下図2f)、紙質から革質、葉脈は掌状または羽状(下図1d, e)、早落性の托葉はしばしば葉柄に合着し、節に輪状の跡を残す(下図1f)[1][3][4]。
花は両性、または単性で雌雄異株または雌雄同株[1][3][6](下図2g–j)。花序はふつう葉に対生、ときに腋生または頂生し、多肉質の花序軸に多数の小さな花がつく[1][3][4](下図2g–j)。花は非常に小さく花被を欠き、ふつう無柄(穂状花序)ときに小花柄をもち(総状花序)、小さな小苞に腋生する[1][3][6]。雄しべは(1–)3–6(–10)個、離生、まれに雌しべの基部に着く[1][3][6]。花糸は短く、葯は底着[1]。雌しべは1個、子房は1室、ときに花序軸に埋没、花柱を欠くものから長いものまであり、柱頭は2–5個[1][3][4](下図2g)。胚珠は1個、基底胎座[4]。
果実はふつう液果または核果、1種子を含む[1][3][4]。多数の果実が穂状につき、癒合した複合果となるものもいる[7](下図2k, l)。種子は少量の内胚乳と多量のデンプン質の周乳(外胚乳)をもち、胚は小さい[6]。染色体基本数は x = 13、著しい倍数化が見られる[5]。
北米南部から南米、アフリカ、マダガスカル、南アジアから東アジア、東南アジア、オセアニアに分布し、主に熱帯から亜熱帯域に生育する[1]。ただしアフリカには少ない[5][7]。南米から東南アジアなど、人間活動によって分布域を広げたものもいる(キダチゴショウなど)[6]。コショウ属は、熱帯多雨林の低木層やつる植物として重要な構成要素である[5]。このような環境において、コショウ属植物は極めて多様な昆虫と関わっており(主に食草として)、多様な二次代謝産物をもつことから昆虫の多様化の重要な要因の1つであると考えられている[5]。
日本にはフウトウカズラ(関東以西から南西諸島)とタイヨウフウトウカズラ(小笠原諸島)の2種が自生しており、前者は南日本では比較的普通である[4]。またヒハツモドキは東南アジア原産であるが、沖縄では香辛料用に栽培されており、一部では逸出野生化している[4]。
コショウ属の花粉媒介では虫媒(双翅類やハナバチ)や風媒が報告されており、その特異性は低い[5][8]。
中南米のコショウ属植物は、種子散布において果実食のコウモリ(Carollia)と比較的特異性が高い関係を結んでいる[5][9]。Carollia perspicillata の食物の45–47%が、コショウ属の果実であるとする報告もある[5]。またアリが種子散布に関わることもある[5]。
コショウ属の一部の種は、特定のアリの種と共生関係を結ぶアリ植物であることが知られている[10]。このようなコショウ属植物は、中空の茎をアリの巣として提供し、アリの食料として葉の向軸側基部に脂質とタンパク質に富む構造(opalescent food body)を形成する。一方で植物は、アリが持ち込んだ食物に由来する栄養塩やアリによる植食者に対する防御を得ることができる[10]。
コショウ属の植物は精油やアルカロイドを含み、果実が香辛料として利用される例がある。コショウは「スパイスの王様」ともよばれ、最もよく利用されている香辛料の1つである[11][12][13][14](図3a)。コショウは世界中の熱帯域で栽培されており(図3b)、2020年の世界の生産量は約71万トン、そのうち38%はベトナム、16%はブラジルであった[15]。コショウ以外にも、ヒハツ(インドナガコショウ)(下図3c)やヒハツモドキ(ジャワナガコショウ)、ヒッチョウカ(クベバ)、ニシアフリカクロコショウ(P. guineense)、キダチコショウ(P. aduncum)なども香辛料として利用される[6][16]。
キンマの葉やカヴァの根は、嗜好品として地域的に利用されている[6][16](下図3d, e)。またアオイゴショウ(P. umbellatum)や P. peltatum、P. sarmentosum などは、野菜とされることがある[6][16](下図3f)。コショウやヒハツ、ヒハツモドキ、ヒッチョウカ、キンマ、カヴァ、アオイゴショウ、フウトウカズラなどは生薬ともされる[6][16]。一方、P. magnificum、P. ornatum、P. sylvaticum などは、観葉植物として利用される[17](下図3g)。
コショウ属は、2,000種以上が知られる非常に大きな属である[5][7][注 1]。形態的にも極めて多様であり、さまざまな形質に基づいて Macropiper、Arctottonia、Ottonia、Pothomorphe、Trianaeopiper などの属に分けられたり、多数の亜属や節に分けられていた[7]。
その後、コショウ属内の系統関係について分子系統学的研究が行われ、およそ10個の系統群からなることが示唆されている[7](下図4, 下表1)。これらの系統群は3つの大きな系統群にまとまり、それぞれ主にアジア(Piper clade)、南太平洋(Macropiper clade)、アメリカ大陸(その他)に分布する種からなることが示されている[7]。ただし、アメリカ産系統群の単系統性は支持されないこともある[5][18][19]。コショウ属にアフリカ産の種は少ないが、Piper clade と Macropiper clade からアフリカへの進出が独立に起こったことが示唆されている[7]。
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4. コショウ属内の系統仮説の1例[7] |
表1. コショウ属の分類体系の1例[7][注 2][20]
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