![cover image](https://wikiwandv2-19431.kxcdn.com/_next/image?url=https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6d/EcDHFR_raytraced.png/640px-EcDHFR_raytraced.png&w=640&q=50)
酵素反応速度論
ウィキペディア フリーな encyclopedia
酵素反応速度論 (こうそはんのうそくどろん) とは酵素によって触媒される化学反応を反応速度の面から研究する学問。酵素の反応速度論を研究することで、酵素反応の機構、代謝における役割、活性調節の仕組み、薬物や毒が酵素をどう阻害するかといったことを明らかにできる。
なぜ拡散より速く動態を示す酵素があるのか?[1] | ![]() |
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6d/EcDHFR_raytraced.png/320px-EcDHFR_raytraced.png)
酵素は通常蛋白質分子であり、他の分子 (酵素の基質という) に作用する。基質は、酵素の活性部位に結合し、段階的に生成物へと変化を遂げる。この過程は、反応機構と呼ばれる。反応機構は、単一基質機構と、複数基質機構に分類できる。
一つの基質としか結合しない酵素、例えばトリオースリン酸イソメラーゼの研究では酵素が基質と結合する際の解離定数や回転率の測定を目指す。
酵素が複数の基質と結合する場合、例えばジヒドロ葉酸還元酵素 (右図) では、基質が結合し、生成物が解離する順序を明らかにすることもできる。1つの基質と結合し、複数の生成物を放出する酵素の例としてプロテアーゼ が挙げられる。この酵素は1つの基質蛋白質を切断して、2つのポリペプチドにする。2つの基質を1つに結合する酵素もある。DNAポリメラーゼはヌクレオチドをDNAに結合する。これらの酵素の反応機構は複雑で何段階にも及ぶことが多いが、通常律速段階があって、これが全体の反応速度を決定する。律速段階は化学反応であったり、(生成物が酵素から離れる際など) 酵素や基質のコンフォメーションの変化であったりする。
酵素の立体構造が分かると、速度論的な情報の解釈に有利である。例えば構造から触媒過程で基質や生成物がどのように結合しているか、反応中にどう変化するかが分かる。また、特定のアミノ酸残基が反応機構で果たす役割が分かることもある。酵素によっては反応中に構造が大きく変化するものがあるが、このような場合は酵素の構造を触媒を受けない基質類似体が結合した場合と、結合していない場合それぞれで決定しておくとよい。
生体で触媒として働くのは蛋白質でできた酵素だけではない。RNAによる触媒、つまりリボソームのようなリボザイムは、RNAスプライシングや翻訳といった多くの過程で不可欠である。リボザイムと酵素の主要な違いは、RNAのほうが触媒できる反応が限られているということだ。もっとも、RNAによる触媒の機構も、蛋白質酵素の場合と同じ方法で解析し、分類することができる。