豊饒の海
三島由紀夫の最後の長編小説 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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『豊饒の海』(ほうじょうのうみ)は、三島由紀夫の最後の長編小説。『浜松中納言物語』を典拠とした夢と転生の物語で[1]、『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の全4巻から成る。最後に三島が目指した「世界解釈の小説」「究極の小説」である[1][2]。予定より早い最終回で了となる最終巻の入稿日に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺した(三島事件)。
概要 豊饒の海, 訳題 ...
豊饒の海 | |
---|---|
訳題 | The Sea of Fertility |
作者 | 三島由紀夫 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 長編小説 |
発表形態 | 雑誌『新潮』連載 |
初出情報 | |
初出 |
「春の雪」-1965年9月号-1967年1月号 「奔馬」-1967年2月号-1968年8月号 「暁の寺」-1968年9月号-1970年4月号 「天人五衰」-1970年7月号-1971年1月号 |
刊本情報 | |
刊行 |
『春の雪 豊饒の海・第一巻』 『奔馬 豊饒の海・第二巻』 『暁の寺 豊饒の海・第三巻』 『天人五衰 豊饒の海・第四巻』 |
出版元 | 新潮社 |
出版年月日 |
1969年1月5日(『春の雪』) 1969年2月25日(『奔馬』) 1970年7月10日(『暁の寺』) 1971年2月25日(『天人五衰』) |
装幀 | 村上芳正(全巻共通) |
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第一巻は貴族の世界を舞台にした恋愛、第二巻は右翼的青年の行動、第三巻は唯識論を突き詰めようとする初老の男性とタイ王室の官能的美女との係わり、第四巻は認識に憑かれた少年と老人の対立が描かれている。構成は、20歳で死ぬ若者が、次の巻の主人公に輪廻転生してゆくという流れとなり、仏教の唯識思想、神道の一霊四魂説、能の「シテ」「ワキ」、春夏秋冬などの東洋の伝統を踏まえた作品世界となっている。また様々な「仄めかし」が散見され、読み方によって多様な解釈可能な、謎に満ちた作品でもある[3]。
「豊饒の海」とは、月の海の一つである「Mare Foecunditatis」(ラテン語名)の和訳で[注釈 1]、作中の「月修寺」のモデルとなった寺院は奈良市の「圓照寺」である。なお、最終巻の末尾と、三島の初刊行小説『花ざかりの森』の終り方との類似性がよく指摘されている[4][5]。
※以下、三島自身の言葉の引用部は〈 〉にしています(他の作家や評者の論文からの引用部との区別のため)。