観測可能な宇宙
地球から観測可能な宇宙 ウィキペディアから
地球から観測可能な宇宙 ウィキペディアから
ビッグバン宇宙論でいう観測可能な宇宙(かんそくかのうなうちゅう、observable universe)とは、中心にいる観測者が領域内の物体を十分に観測できるほど小さい、つまり、ビッグバン以後のどの時点でその物体から放出された信号であっても、それが光速で進んで、現在の観測者のもとに届くまでに十分な時間があるような球状の空間領域である。宇宙のどの場所にもその場所にとっての観測可能な宇宙があり、それは地球を中心とするものと重なる部分も重ならない部分もある。
「観測可能」ということは、現代の技術でこの領域内の物体から放射されたエネルギーが検出できるかどうかとは無関係であり、その物体からの光やその他の放射エネルギーが地球上の観測者のもとに到達することが原理上可能だという意味である。実際に観察できるのは、宇宙が晴れ上がった「最終散乱面」にある物体までである。晴れ上がる前の宇宙は、光子に対して不透明であった。しかしながら、重力波(やはり光速で移動している)の検出によって、それ以前の情報を推定することもできないわけではない。重力波はインフレーション時代の遅くとも後期から発生しており、それによって数兆光年・あるいはそれ以上の遠方の宇宙を観測できる可能性がある(もちろんインフレーション時代の宇宙の姿の観測となる)。
科学者から観測された事実として頻繁に発表・公表される宇宙の具体的な観測値は、あくまで観測可能な宇宙に関するものに限られている。
だが現代宇宙論の構築、宇宙のインフレーションなどの信頼できる多くの理論の説明では、観測可能な宇宙の外側に広がる広大な宇宙を含む、より巨大な全宇宙に関する考察が必要になる。
全宇宙が観測可能な宇宙よりも「小さい」ということも、もちろん可能である。その場合、非常に遠くにあるように見える銀河が、実は近くにある銀河の光が宇宙を一周してくることによって生じた複製像だということもあり得る。この仮説を実験によってテストするのは、銀河の異なる像がその一生の異なる時代を指すこともあり、結果としてまったく違うということにもなりかねないため、困難である。2004年のある論文[8]では、全宇宙の直径は、24ギガパーセク(780億光年)が下限であると主張されており、その場合、観測可能な宇宙より少しだけ小さいということになる。この値はWMAPの観測をマッチング・サークル分析したものに基づいている。
仮に観測不可能な宇宙を含めた全宇宙が有限で閉じているとしても、観測可能な宇宙の範囲内では、曲率は無視できるほど小さいことから、宇宙全体の大きさは、光年単位を用いても「兆」などの日常的な数の尺度、あるいは命数法レベルの数の尺度ではなく、指数での表現が必要な大きさ、それもA×10Bといった単純な仮数指数表記ではなく、指数の上に指数を重ねた指数タワーでの表現が必要な大きさである。レオナルド・サスキンドは宇宙の直径をと推定している。この推定値はグーゴルプレックスプレックスより大きいが、この見積もりにおいて単位は一切考慮されていない。桁数が非常に大きいため、単位が「ヨタパーセク」でも「光年」でも「メートル」でも「プランク長」でも、もはや誤差以下の違いでしかないためである(巨大数の項目も参照)。具体的に説明すると、単位付与は値に対して定数倍の効果を持つが、1ヨタパーセクは1プランク長の1.9×1075倍であり、の値のオーダーの前には桁数が少なすぎて、議論の本質に影響を及ぼすことがないということである。
さまざまな予測は提唱されているものの、全宇宙の大きさがどれくらいなのかは2023年現在の観測技術を以てしても推定すら不可能であり、まったくの未解明となっている。これは全宇宙がどれほど巨大であろうが現代宇宙論と矛盾しないためである。インフレーション理論においては無限に近いスケールの膨張も許容されていて、理論上は大きさの上限がない。観測可能な宇宙の範囲内の曲率が測定限界を下回って限りなく0に近いことや、磁気単極子が発見されていないことなどの観測事実から、最低でも観測可能な宇宙より数十桁以上大きいと見られる程度である。全宇宙の広さは「ほぼ無限」と説明されることも多いが、これは決して大袈裟な表現ではない。なお、「ビッグバン直後の宇宙はバスケットボール程度の大きさだった」などの例え話は通常、観測可能な宇宙のみを指して使われる表現だが、誤解を招き易いので注意が必要である。
地球から「可視」宇宙(宇宙光の地平面)の端までの共動距離は、あらゆる方向に約14ギガパーセク(465億光年)である[9]。これによって、観測可能な宇宙の共動半径の下限が明確になる。もっとも、導入部で述べたように、可視宇宙は観測可能な宇宙よりやや小さいと考えられる。これは、再結合(宇宙の晴れ上がり)以後に放射された宇宙背景放射からの光しか見えないためである。この宇宙背景放射によって、われわれには天体の「最終散乱面」が見えているということになる(重力波によって、あくまで理論上は、この球体の外部領域から、再結合期以前の事象が観察できる)。つまり、可視宇宙は直径約28ギガパーセク(約930億光年)の球体だということになる。宇宙空間はだいたいユークリッド平面であるから、この大きさはおよそ
すなわち3×1080立方メートルの共動体積に相当する。
上に引用した数字は、(宇宙時間でいう)「今」の距離であり、「光が放射された時点における」距離ではない。例えば、今この瞬間にみえる宇宙マイクロ波背景放射 (CMBR) は、137億年前に起こったビッグバンから379,000[10]年後の再結合の時に放射されたものである。この放射エネルギーは、その中間の時期に密集し、現在では銀河になっている物質から放出されたものである。これらの銀河は現在、われわれからおよそ460億光年の距離にあるとされている。光が放出された時点におけるその物質までの距離を推定するためには、「膨張の数学モデル」を選び、また、スケール因子a(t) をビッグバンからの任意の時刻t について計算しなければならない。観察に適したΛ-CDMモデルでは、WMAP衛星からのデータを用い、このような計算によって、およそ1292というスケール因子の変化が得られる。これが意味するのは、宇宙が、CMBR光子が放出されたときの大きさの1292倍に膨張しているということである。よって、現在観測できる最も遠くの物質(460億光年先)は、現在受け取っているマイクロ波が放出されたときには、いずれ地球となる物質からわずか3600「万」光年しか離れていなかったのである。つまり宇宙の膨張により137億光年より遠方の宇宙も「観測可能な宇宙」に含まれたことになり、重力波が最初に発生したインフレーション時期(雑誌ニュートン2012年7月号掲載)にはインフレーションによる急激な膨張により、重力波を発生した物理体が現在では非常に遠方に存在していることになる。
多くの二次資料がこれまでにさまざまな誤った可視宇宙の大きさを「報告」している。いくつかを例示する。
観測可能な宇宙には3×1022〜7×1022個(300垓〜700垓個)の星[20]があって800億以上の銀河にまとまり、それぞれがさらに銀河群や銀河団、超銀河団を形成している[21]。
2つの大まかな計算がそれぞれ、観測可能宇宙内の亜原子粒子を約1080としている。
観測可能な宇宙内の物質質量は密度と大きさから推定可能である[24]。
観測可能な宇宙を構成する可視物質の質量を計算する方法は、1つには、平均太陽質量を仮定し、これに観測可能宇宙内の星の総数をかけることである。宇宙の星の推定総数は、観測可能な宇宙の体積
と、ハッブル宇宙望遠鏡の観測値から計算した星の密度
から導かれ、観測可能な宇宙内の星の推定総数は9×1021(90垓)個となる。
太陽の質量(2×1030 kg)を平均太陽質量(矮星の多さと、太陽より質量の大きな星の数はつりあっているとする)とし、星の総数を1022個とすれば、観測可能な宇宙の星の総質量は3×1052 kgとなる[25]。しかしながら、「内容物質」の節で述べたように、WMAPのデータはΛ-CDMモデルで推定すると、観測可能な宇宙の総質量の5%未満が星などの可視的な物質で構成されており、残りは暗黒物質やダーク・エネルギーが占めていると予測される。
という式を用いて計算している。この式は、
と書くこともできる。
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