蠅蛆症
ハエの幼虫が生きた哺乳類の体内に侵入することによって発生する感染症 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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蝿蛆症(ようそしょう[1]、英: myiasis, 独: Myiasis, 仏: myiase, 羅: myiasis)は、ハエの幼虫(蛆)が生きた哺乳類の体内に侵入したことによって発生する感染症(寄生虫性疾患)[2]である。つまり、何らかのハエの幼虫である蛆が寄生虫となった状態とも説明できる。蛆は宿主の生体組織を食べて成長する。ハエは開放創や尿、便に汚染された毛皮を好むが、一部の種(よく知られている蝿蛆症を引き起こす蝿、ヒツジバエ、クロバエ、ラセンウジバエなど)は傷のない皮膚であっても侵入することができ、蛆の媒介者として湿った土や蝿蛆症を引き起こさないハエ(イエバエなど)を利用することが知られている。ヒトに寄生したものを真性ハエ症(obligate myiasis)として区別することもある[3]。
蝿蛆症は、口語では「ハエウジ症、ハエ幼虫症(flystrike、blowflystrike)」などと呼ばれることがあり、患者またはその罹患組織は「うじがわいた(fly-blown)」と称される。このような状態を表す名称は古代ギリシャ語のμυῖα (myia、意味はハエ)に由来する。『南山堂医学大辞典』は「ハエ症」を主な見出し語に採用、「ハエ蛆症」を別名としている[3]。『ステッドマン医学大辞典』はmyiasisの訳語として「ハエウジ病・ハエ幼虫症」を挙げる[2]。『医科学大事典』は「ハエ幼虫症」を主な見出し語に採用、「ハエ症・ハエうじ症」を別名としている[4]。その他、「皮膚ハエ症」という用語を使用する文献もある[5]。
ヒト以外の動物(とくに家畜)はヒトほど上手く蝿蛆症の原因や症状に対処できないため、このような寄生は、畜産業において非常に重篤で長引く問題となる。すなわち、ヒトの行動によって緩和されない限り、重大な経済的損失をもたらす[6]。
典型的には動物においてより重大な問題となるものの、蝿蛆症を引き起こすハエが生息するような熱帯地域に住むヒトにとっても、蝿蛆症は比較的よくみられ、しばしば寄生した蛆を取り除くために外科的な処置を必要とする[7]。
蝿蛆症は様々な病態をとり、患者への作用もさまざまである。このような相違は、ハエの種類と蛆が寄生した部位によって生じる。一部のハエは開放創に産卵し、一部の蛆は健康な皮膚を侵襲する。鼻や耳を通じて体内に侵入することもある。さらに、唇の周囲に産卵された卵や、食べ物に付着した卵を飲み込むことが原因となる場合もある[7]。