患者安全
予防可能な患者への危害を無くし、医療に伴う不必要な危害のリスクを許容可能な最小限まで低減すること / ウィキペディア フリーな encyclopedia
患者安全(かんじゃあんぜん、英: patient safety)とは、世界保健機関(WHO)により、「予防可能な患者への危害を無くし、医療に伴う不必要な危害のリスクを許容可能な最小限まで低減すること」と定義されている[1]。患者の有害事象(英語版)につながるエラーやその他の不必要な危害の予防、削減、報告、分析を通じて、医療における安全を強調する学問分野である。患者が経験する回避可能な有害事象(しばしば患者安全インシデントとも呼ばれる)の頻度や規模は、1990年代に複数の国で医療のエラー(英語版)による患者の被害や死亡が多数報告されるまで、あまり知られていなかった[2]。医療におけるエラーは以下のいずれかと定義される[3][注釈 1]。
- 意図した行動計画を完了できなかったり、目的を達成するために誤った計画を実行したりすること。
- 意図しない行為、または意図した結果を達成できなかったもの。
- 危害をもたらす場合ももたらさない場合もある、ケアのプロセスからの逸脱。
- 手技を計画または実行する際に、意図しない結果に寄与する、または寄与する可能性のある不作為または委託行為。
世界保健機関(WHO)は、エラーが世界中の患者の10人に1人の割合で影響を及ぼしていることを認識し、患者安全を地域の懸念事項と呼んでいる[5]。実際、患者安全は、未熟ながらも発展途上の科学的枠組みに支えられた、独自の医療分野として浮上してきた。患者安全の科学を伝える理論的・研究的文献は学際的なものが多い[6]。患者安全の具体的な目標として、アメリカの医療施設認定合同機構(Joint Commision)は以下の提言を行っている[3]。
- 患者固有のリスクを認識する。
- 少なくとも2つの方法で患者を確認し、識別する。
- 検査結果を適切な担当者に迅速に知らせるなど、コミュニケーションを改善する。
- 手指衛生、周術期抗生物質投与、カテーテル交換、中心静脈カテーテルの適切な留置・管理などを行い、感染を予防する。
- 身体の正しい部分に正しい手術が行われていることを確認し、手術の間違いを防ぐ。手術前に手を止めて再確認を行う(タイムアウト)。
- 医療機器はアラームを使用し、アラームは聞こえるようにしておいて迅速に確認する。
- 注射器に入っているものも含めて、全ての薬にラベルをつける。これは薬を調整する場所で行われるべきである。
- 薬剤は正しく、安全に使用し、ラベルを再確認し、必要があればそれを扱う他の医療従事者に正しく手渡す。
- 抗凝固剤や化学療法剤を処方されている患者には、さらに時間をかける。
- 院内感染を予防するために、各患者を訪問する前後に手洗いを日常的に行う。