古在メカニズム
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古在メカニズム[1] (こざいメカニズム、英: Kozai mechanism) は、連星の軌道に対して、特定の条件において遠方の3体目の天体からの摂動が加わることによって引き起こされる天体力学的現象である。この機構により、連星の軌道の近点引数が一定の値の周囲を振動する秤動が発生し、軌道離心率と軌道傾斜角の間に周期的な交換が発生する。この過程は軌道周期より遥かに長い時間スケールで発生する。この機構により、初めは離心率が小さいほぼ円形の軌道であったものが任意の大きな離心率を持った軌道に移行したり、初期のやや傾いた軌道と逆行軌道との間を「反転」するような変化が発生する。
この効果は、惑星の周囲を公転する不規則衛星や太陽系外縁天体、太陽系外惑星、多重星系の軌道を説明する上で重要な要素であることが知られてきた[2]。またブラックホール連星の合体にも関係していると考えられている[3]。この機構は1961年にソ連の天文学者 Mikhail Lidov によって、惑星の周りの自然衛星および人工衛星の軌道の解析において初めて記述された[4][5]。1962年に日本の天文学者古在由秀が、同じ結果を木星によって摂動を受ける小惑星の軌道に適用した論文を発表した[6]。古在とリドフによる初期の論文の引用数は21世紀になって急増している。2017年の時点で、この機構は最も盛んに研究された天体物理学的現象のひとつであるとみなされている[7]。
この機構の表記に関しては、日本語・英語ともに様々な種類が存在する。日本語では古在メカニズムの他に古在機構[8]の表記が多く見られる。また、近年の論文では発見者の古在とリドフ両名の名前を冠した Lidov–Kozai mechanism や Kozai–Lidov mechanism (古在・リドフ[9]) と表記されることがほとんどである。また、この現象の様々な側面に由来して、「古在効果」[10]、「古在振動」[11]、「古在サイクル」[12]、「古在共鳴」[8]と表記される場合もある[注 1]。同様に英語でも、「Kozai / Lidov–Kozai / Kozai–Lidov」 + 「mechanism / effect / oscillations / cycles / resonance」という表記が見られる。