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古典電子半径(こてんでんしはんけい、英: classical electron radius)とは、ローレンツの電子論(ローレンツのでんしろん、英: Lorentz's theory of electron)の中で論じられる古典的な電子の半径の事で、CODATAから発表される物理定数の1つである。その値は
と与えられる(2022 CODATA推奨値[1])。ここで e は電気素量、c は真空中の光速、me は電子の質量、ε0 は真空の誘電率である[2]。
現在では電子について空間的な広がりの無い点電荷と見なして種々の物理現象を論じるが[3]、1895年頃ヘンドリック・ローレンツによって提唱され、その後10年間以上にわたって論じられた古典的な電子論では、電子を表面上に一様に負の電荷を帯びた球体と見なして論じ、その時の球の半径を電子の半径としたので、現在ではこの値が古典電子半径と呼ばれている。
以上の様な歴史的背景の中で、ローレンツは1895年頃に自身の電子論について提唱し、今もローレンツの電子論としてその名を残している。
ローレンツの電子論では、物質を電子と正の荷電粒子(陽子に相当する)とからなる集合体と見なし、物質の熱的・光学的・電磁気的その他の諸性質を古典力学と古典電磁気学とを適用して論じていた。この理論の中で、電子は表面上に一様に荷電分布した帯電球と見なされ、その静止エネルギーと静電エネルギーとが等しいとして考察した際に、数式の中に出て来る球の半径が電子の半径として捉えられた。
電荷 q で半径 r の荷電粒子の静電エネルギーはクーロン定数を用いて
で与えられるので、電子の電荷を e、半径を re とおくと、電子の静電エネルギーは
となる。この静電エネルギーが静止エネルギー
と等しくなるので、電子の半径 re は
となる。
また、真空の誘電率 ε0 の代わりに真空の透磁率 μ0 を用いると、古典電子半径 re は
と表す事も出来る。
微細構造定数 α とリュードベリ定数 R∞ 及びボーア半径 a0 と電子のコンプトン波長 λe をそれぞれ
と定義すると、古典電子半径 re は
と簡略化して表記する事が可能となり、ボーア半径 a0 やコンプトン波長 λe(換算コンプトン波長 λe/2π )と言った長さの次元を持つ他の物理定数と、微細構造定数 α を介して密接な関連を持つ事になる。ここで h はプランク定数、ħ はディラック定数である。
更に、電子による古典的な電磁波(光)の弾性散乱であるトムソン散乱についての散乱断面積 σe が
と表される様に、古典論に限定した範囲では電子について古典電子半径 re を用いて考察しても支障はない。
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