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生物学における反射(はんしゃ、英: reflex or spinal reflex)とは、動物の生理作用のうち、特定の刺激に対する反応として意識される事なく起こるものを指す。普通、反射という言葉を使う対象は意識の存在が(曖昧にではあっても)確かめられる脊椎動物に限られる。たとえば昆虫が光に集まる、ゾウリムシが水面近くに集まるというような走性は反射と呼ばない。ヒトの反射でもっともよく知られたものに、膝蓋腱を叩くと下腿が跳ね上がる膝蓋腱反射、屈筋反射がある。条件反射は定義によっては反射に含まれるが、ここでは扱わない。
反射はその機能から、体性反射と内臓反射(自律神経反射)に大きく分けることができる。体性反射とは骨格筋を収縮させるものであって、腱反射(深部反射)、表在反射に代表される。内臓反射とは、自律神経系を介して、内臓筋を収縮させたりするもの。
腱反射とは、腱や骨の突端を叩くと、そこにつながっている骨格筋が収縮する反射を指す。医師が診察において患者の反射を見るときは、打腱器と呼ばれるハンマーを使って患者を叩く。患者とハンマーの間に医師の指を挟んで刺激を調整することもある。よく知られた腱反射には次のものがある。
表在反射とは、皮膚や粘膜に刺激を加えることで、その周りの筋が収縮する反射を指す。よく知られた表在反射には次のものがある。
上記の反射は日常生活の様々な場面で起こり、姿勢を保ったり、外傷に弱い臓器を守ったりする役に立っている。次に挙げるような病的反射は、定義から言うと腱反射または表在反射に分類できるが、上に挙げたようなものが「起こって正常」なのに対し、「起こると異常」であることから、臨床では別に扱われることが多い。
内臓反射は恒常性の維持、全身の活動性の調節に役立つ。内臓反射を司る自律神経系は交感神経系と副交感神経系に分けられるが、大まかに言って交感神経系が働くと盛んな活動に適した状態が導かれ、副交感神経系が働くと休息に適した状態が導かれる。内臓反射は常に起こっており生存に不可欠なものが多い。また、反射を起こす刺激、それによって起こる反応を独立して取り出すことが難しい。これらのことから、内臓反射は反射の文脈で語られることが少なく、自律神経系の活動として説明されることが多い。たとえば急に寒い場所に出ると、心拍数と呼吸数が増え、末梢の血管が収縮し、立毛筋が収縮する。これらは自律神経系が働いた結果だが、どこで受容された寒さ刺激がどの反応を起こすかは明瞭でないし、寒さ以外の様々な要因に影響されやすい。一方、次に挙げる動眼神経を介した反射は、自律神経が関わっているが刺激と反応にかなり明瞭な対応が見られる。
すべての反射は神経系を介して起こる。神経系を介さない反応、たとえばGFR低下によるレニン-アンジオテンシン系の活性化などは普通、反射と呼ばれない。反射が起こるためには、刺激が受容され、その刺激がなんらかの中枢(例:中枢神経)で処理され、筋や腺に伝えられるという経路が考えられる(この時、脳に一切信号は伝わらない)。この経路を反射弓と言う。刺激を受容する器官を受容器、反応が現れる器官を効果器と呼ぶ。たとえば対光反射では網膜が受容器で、効果器は瞳孔括約筋である。反射弓の特徴は、中枢が大脳皮質でなく、脊髄や脳神経核などにあることと言える。反射でない行動、たとえば道に硬貨が落ちているのを見て拾う動作は、目から入った情報が大脳皮質まで送られた後で四肢などに伝えられる。だから中枢は大脳皮質である。一方、反射を起こす刺激は大脳皮質まで送られるものの、反射の中枢はそれ以前にあるので、大脳皮質を通るよりも短い経路で反応が起こされることになり、より速く的確に反応する役に立っている。この迅速さから連想して「反射神経(が優れている、など)」「反射的」という使い方が生まれたが、これは敏捷な、あるいはとっさの動作を広く表すもので、必ずしも生物学的な意味での反射を指しているわけではない。
四肢の腱反射は亢進も消失も病的な意義をもつ。腱反射の亢進は反射弓より高位で皮質脊髄路(錐体路)が障害されていると考える。腱反射の消失は反射弓が障害されていることを意味し、求心路の感覚神経、遠心路の運動神経、反射弓の中枢である脊髄前角細胞の障害が考えられる。この場合、反射弓とは筋紡錘→感覚神経:Ⅰa群線維→後根→モノシナプス→前角細胞→前根→運動神経:α線維→筋肉の経路をさす。 皮質脊髄路は前角細胞に興奮性の刺激を送るが、不思議なことにこの経路が障害されると反射が亢進、つまり前角細胞の興奮性が増す。また、甲状腺機能亢進症などで反射は亢進する。腱反射の所見だけでは神経の病気であるかどうかは判断することは一般には不可能であり、高度なトレーニングを受けた専門医が病歴やその他の徴候などから総合的に診断を下す。最近では神経学的な診断をコンピュータによって行うという試みもされている。
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