ミューオニウム
反ミューオンと電子の束縛状態 / ウィキペディア フリーな encyclopedia
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ミューオニウム (muonium) とは、正の電荷を持つ反ミューオン (μ+) と電子 (e−) の束縛状態(水素原子中の陽子を反ミューオンで置き換えたものに相当)を指し、ミュオニウムとも呼ばれる。エキゾチック原子の1つで、元素記号Muである[1]。1960年にVernon W.Hughesによって発見された[2]。半減期は2μ秒で、塩化ミューオニウムMuClとミューオニウム化ナトリウム MuNaが合成されている[3] 。スペクトルも通常の原子とは完全に異なる[4]、ミューオニウムはポジトロニウム同様、電子と反粒子からなるが、反ミュー粒子の質量は電子より大変大きいのでミューオニウムはポジトロニウムより水素原子に似ている。ミューオニウムのボーア半径とイオン化エネルギーは、プロチウム(軽水素)、重水素、トリチウムの0.5%以内である為、水素の同位体と見做す研究もある[5]。
これに対し、負の電荷を持つ(正粒子の)ミューオン (μ−) が(同じく荷電レプトン正粒子である電子の代わりに)他の原子核に束縛された状態はミュオニック原子と呼んで区別する。なお、ミュオニウムの構成粒子の電荷を入れ替えたもの(負の電荷を持つミューオンμ−と陽電子e+の束縛状態)はミュオニウムの反物質に相当し反ミュオニウムと呼ばれる(水素–反水素のアナロジー)。類似の状態として電子と陽電子の束縛状態であるポジトロニウム Ps (e+-e−) が知られ、ミュオニウムの名称はこれに倣ってつけられたが、××ニウム(オニウム)という呼称は同種の粒子と反粒子からなる束縛状態につけられるべきもの(例えばπ±よりなるパイオニウムPionium、陽子・反陽子よりなるプロトニウムProtoniumなど)で、ミュオニウムも本来なら正負ミュオンの束縛状態 (μ+-μ−) (ミューオニックミューオニウム[6]、ミューオノニウム、「真のミューオニウム」)を表す呼称のはずであったが、歴史的にミュオンと電子の束縛状態がこのように呼び習わされ、IUPACでもこのように命名されている[1](水素原子の別称が陽子ProtonからプロチウムProtiumであるように、本来ならミュイウムMuiumとすべきものである)。